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Disturbance High School  作者: 林 奎
第壱章 金碧姫の決闘 
20/21

エピローグ 4月25日 7:18 美笠高校 校門前

 さあやってまいりました!!!

 1年続いた(5ヶ月間休載)この作品もエピローグへ!!

 それではどうぞ!!

 人生で最も感動し、困惑し、恐怖し、疲労した決闘の翌朝。


「「はあ~っ………。」」


 直原君と播磨屋君が僕の隣で溜息を吐いていた。


「あのねえ?気持ちは分かるけど気持を切り替えた方がいいよ。」

「でもなあ……分かるかアキやん!5万がパアになってんで。」

「くそう……あれさえなければ……あのクソ共め……!」

「最悪の気分やな!!」

「………君達なんかまだマシだよ……。」


 こっちは1万円も投資させられ、目の前で人が倒れ、おっかない人達に囲まれ、ナイフで斬られた僕の方が最悪な気分だ。

 まあ、左手は帰宅した時母さんによってやりすぎなくらいな治療をされたおかげで、痛みは完全に引いている。


 ちなみに鼎君は結構重傷だったらしく何針か縫ってしまったらしい。しかしそれでもこの場にいないのは休みだからではなく家が反対方向だからだ。

 多分今日も平然と出席でしょう。


 それに対し無傷にも関わらず平然としていない2人は。


「くそー!覚えてろよー!」

「ああ、そうやな……。」


 ここで一度ためてから、


「「今度会ったらボコボコにしてやる……ッ!!!」」

 

 思いっきり怒り心頭と言ったご様子だ。

 ちなみに、寳野さんから送られてきたメールによると(何故かこっちのメールアドレスを把握していた)、彼らはしばらく『夢の世界』に旅立っていったとのこと。

 夢の世界というのがどういう世界かは知らなかったが、あの文面を見て思うに、もう彼等に会う事はないと思った。


「はあ……仕方ないこうなったら当分はヴィーナスと俺がいちゃいちゃデートをしている所を妄想……いったー!!!!!!!」

「鳥肌が立つようなことを抜かすなっ!!おぞましい!!」


 そう言って直原君を殴ったのは案の定寳野さんだ。

 彼女にしてみれば大事な友人が嫌な奴の妄想に使われる気分のいい話じゃないに決まっている。

 でもフルスイングはさすがにやりすぎじゃないだろうかと思う。


「あ。寳野さん。おはようございます。」

「ええおはよう……って、なんで私の名前を知っているのよ!」


 突然訳の分からないことを言う寳野さん。


「え?昨日自己紹介を………。」

「え?あ。そ、そう。」


 意外な反応だと言わんばかりだが、何故か彼女の顏が若干赤い。風邪でも引いたのだろうか?


「で、なんだー『レンレン様の付き人』痛っ!!!」

「寳野よ。覚えておいてよね。………気持ちは分かるけど。」


 まあ、人から名前を憶えられていないというのはいい気分ではないのだろう。


「な、なんや?もしかしてヴィーナスが。」

「僕達と付き合ってくれるって言ったの?」

「「そんなわけないよ(でしょ)。」」

「「即答かよ!!!」」


 何しろ昨日の第一印象が最悪だった。何より初対面に人に慣れていない節がある。


「そこのアンタに話があるのよ。」

「僕ですか?」


 突然の御指名に驚きを隠せない僕。


「そう。ちょっと聞きたいことがあるから……。『屋上』で待ってるわ。」

「え?ああ、分かった。」


 そう言って彼女は足早に昇降口へと向かった。


「??一体なんだったんだろう?」


 そして視線を昇降口から外し、2人の友人の方に向けると。


「アキやーん!!!!!」

「裏切り者ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「え、ええええええええええ!!なんで!」


 直後、僕は怒りの形相を隠さない2人に襲われた。




「告白するって……知り合ってすぐに付き合う人には見えないから違うと思うんだけどね」


 10分後、鞄を3階の教室に置いて、ついでに来ていたクラスメイトのみんなに2人の足止めを頼むと、僕はすぐに『屋上』へと向かった。

 南館の渡り廊下を西に向かいながら寳野さんの要件について考えを巡らせていた。


「それにしても『屋上』か……。」


学校の屋上と言っても、普通に屋上じゃない。そもそもそういう所はしっかりと施錠されており簡単に入ることなどできない。

例え変人が集う事で有名な高校でもその点は同じだ。

 しかし、美笠高校は特殊な構造をしており、4階の北館と3階の南館・東館・西館の4つがまとまって1つの校舎として存在し、そのうち北館と南館は東館・西館に比べ半階分髙く校舎の北東・北西・南東・南西に階段がある。

 なので北西階段の3~4階の踊り場の窓をよじ登ると、西館の屋上に出てしまう。

 美笠の生徒の間ではそこを『屋上』と呼んでおり、秘密の話などをするときにこっそり使われているらしい(当然学校側は立ち入りを禁止しているが)。

 一応先生方から見て優等生として見られている僕としては高校3年間近づく予定がなかった場所だが、まさか入学後1ヶ月以内にそこへ呼び出されるとは思いもよらなかった。


「さてこんな所に呼び出してっ!何の用かなっ、っと!!」


 そして北西階段の階段の踊り場。そこの2mの高さにある開いた窓をよじ登ると寳野さんがそこで座り込んでいた。


「遅かったわね。」

「うん。ごめん。ちょっと立て込んでてさ。」


 『屋上』に到達すると、すぐに寳野さんが声をかけてきた。


「そうだ。漣さんは大丈夫。」

「ええ。今日は1日大事を取って休むけど明日になれば来れるわ。」

「そうなんですか。良かった。」


 漣さんが大したことがない事に安心していると、次は寳野さんの方から聞いてきた。


「アンタ達こそ怪我の方……大丈夫。」

「ああ……大丈夫ですよ。鼎く……さんも大したことがないらしいですよ。」


 危ない危ない。もう少しでかなえさんの性別をばらすところだった。


「アンタは?」

「え?」

「アンタよアンタ。左手斬られたでしょ?」

「僕の方もそんなに深くは斬られてないので、もう痛みはありませんから。」

「そう。良かった。」


 寳野さんも同じように安堵して、


「じゃあ遠慮なくやれそう。」

「え?」


 その言い方を不審に思いどういう意味かを口を開いた瞬間。

 僕は寳野さんに思いっきりぶん殴られた。


「~~っ!!」


 恥ずかしい事に女の子のパンチでよろめくどころかぶっ飛んで尻餅をついてしまった。さっき直原君にした物よりも威力が高いかもしれない。

 傷を労わっておきながらその人に対しぶんなぐるという行動が全く理解できない。

 喋るのも痛むので視線でどういう事かを説明する。


「何でか分かる?」


 彼女はその視線に対して、ただそう言っただけだった。

 彼女にしては言葉足らずな物だったが殴られた理由を指している理由を指していることは一目瞭然だった。

 なので僕は殴られた頬をさすりながらその理由を考えた。

 殴られるような理由は……実際の所ある。

 なので心当たりを言ってみた。


「胸に顔が当たったことですか?」

「なっ!!!」


 それを聞いて寳野さんの顔が真っ赤になる。


「違う!!……いや、それはもちろん怒ってるけど……あ~もう!!あるでしょそれ以外に!!」

「????」


 正直それが正解だと確信していただけにそれが外れ見当が全くつかなかった。


「あーっ!もー!!!聯の事よ!!」


 それを聞いて思い出したのは、漣さんの救出方法について。


「……やり方がまずかったんですよね?」

「正解よ。」


 寳野さんはそれしか言わなかったが、その口調と態度でようやく分かったかと主張していた。

 僕達は……いや、僕は漣さんを助けるために彼女を感電させた。

 当然漣さんの友人である彼女なら怒っても仕方がない。無茶な作戦だと思ったんだろう。


「いえ。聯を助けるためにああするのが手っ取り早かったことも、一応は理解できるわ。と言うより聯は怒るどころか感謝してたわ。助けてくれてありがとうってね。馬鹿じゃないのって言ってやったわ。」

「寳野さん………。」

「でもね。あんな状態の聯に感電させる神経に怒ってるわ。聯が無事なのも結局は結果論だしね。」


 きっぱりと言い切った。確かに苦しんでいる漣さんをさらに苦しませてしまって、寳野さんには大分つらい思いをさせたかもしれない。


「分かっていました。でも」

「仕方がなかった。なんてほざくつもりならもう一発行くわよ?」

「………………。」

「アンタあの時あいつ等に言ったわよね。『もう少しで人を殺すところだった。』って…………。ふざけないでよね。その時の言葉をアンタに言いたい、いえ、今言うわ。」


 そうまくし立てたあと2~3秒呼吸を整えた後、はっきりと言った。


「『あなた達は人を……漣さんを殺すところだったんですよ!!』」

「!!!!!!」


 そう言われて僕は何も言えなくなってしまった。

 実際、人は大したことのない事でも死んでしまうことだってある。

 そのリスクをかけてしまったことが怒っているのだろう。


「…………………ごめん。」

「謝って済む問題じゃないわよ……。」


 だから僕は素直に謝罪した。


「でも……聯を助けてくれたことに関しては……礼を言ってあげるわ。一応ね。そしてもうこの話は蒸し返さない。分かった!?」

「はい。どういたしまして。」


 一応、寳野さんには赦してもらえたらしい。良かった良かった。


「それじゃあ用件も終わったみたいだしこの辺で。」

「ま、待ちなさい!!!」

「え?用は終わりじゃないんですか?」

「いえ用事は……ある……んだけど……。」

「???」


 先程と打って変って、言葉に勢いがなくなり、濁ってしまっている。

 貧乏くじを引いたような顔をしている彼女はとてもじゃないが、恋する乙女にはとても見えないので告白ではないだろうと推測する。


「えっと……何の用ですか?大したことがないなら後で……。」

「だから待ちなさい!こっちが本題でさっきのはついでなのよ」

「……。」


 ついでで僕は殴られたのかと言いたかったが、賢い僕はもちろんそんなことはやらない。

 そうこうしている間に寳野さんは『用件』を言う決心したのか、「よし。」と言いながら手をぐっと握って少し大きな声で早口で言った。


「かなえさんの事よ!」

「は、はあ?」


 鼎君?彼がどうしたのだろうか?あの強さにひかれてメイドさんがスカウトしたいんだろうか?


「そ、その……あの子と連絡はつかないの?」

「ま、まあ……一応つくけど……。」

「そ、そう……。」

「……。」

「……。」


 そして流れる沈黙。


「え?……それだけ?」

「そうだけど……。何?文句あるの?」


 文句と言うよりあれほど逡巡してまで言いづらかった用件の内容が普通で拍子抜けと言うのが実際のところなのだが。


「それだけならあの2人でも良かったんじゃ……。」

「ダ・メ・よ!!」


 口調も戻って即答。まさに一瞬だった。


「ダメ。とにかくあいつらはダメ。貸しを作ったら聯がどうなるかなんて分かったもんじゃない。」

「納得です!!」


まあ予想はつく。代わりにデートをさせろというのが容易に――本当に容易に――予想ができてしまう。


「けど……あの人に何の用事なの」


 ここであえて『彼に』という代名詞は使わなかった。自業自得ではあったが女装癖という変な噂を立てられるのを食い止めなければならなかったからだ。


「ねえ……。ここだけの話にして欲しいんだけど……。」

「う、うん。分かった……。」

「で、言っても引かないで欲しいんだけど……。」

「え?それってどういう……。」

「いいから!どうなの?」


 これ以上待っていられないと言わんばかりに業を煮やした寳野さんは目を凄ませて問い詰める。

 寳野さんは結構可愛いはずなのに修羅と話している気分になる。


「え~分かった。うん。善処するよ。」

「聞いたわ。聞いたからね。だから引かないでね。」

「い、いったいどんな話を………。」


 ここまで心を無にして何事にも動じない心を以って聞こうと構えたのだが。


「聯がかなえさんに一目惚れしたのよ。だから恋愛成就に協力して。」

「………え?」


 善処すると言っておきながら……その時僕は完全に引いてしまっていた。



 そして、僕の高校生活がますます波瀾に満ちていくことになる。




   Fin.




   Next episode 『Mixis』

 この作品D.H(Disturbance Highschool)もとうとう完結!!

 ご愛読ありがとう……と言いたいところですが。

 こんな終わり方では作者も少々消化不良なので続編を作ります!!

 全話のあとがきにも書きましたがここまでの流れを『金碧姫編』として次回以降を新章として掲載いたします。

 とはいえ大まかな流れしか決まっていないので、公開はまだまだかかります。


 そして、D.H以外にも書きたい作品が山ほどあるのでそちらも先に書きたいです。




 それでは、この続きは次回『MIXIS編』でお楽しみに!!

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