二日目-1
朝陽が射し込む。
静かな朝。
カーテンを閉めずに寝たのが原因だったのか、その陽射しで僕は目覚めた。
時刻はほぼ七時ジャスト。
目覚ましも付け忘れていたけど問題なし。
自力で目覚めるなんて自分でも珍しいと思ったけど、寝るのが早かったからある意味寝過ぎと言ったほうがいいかもしれない。
「普通の朝だ…」
昨日と起きたときとなんら変わらない。
物音は自分が立てたものしか耳に届かず。
全てが夢落ちというのは幻想だったようだ。
制服のまま寝てしまったからシャツが皺だらけになっている。
どうせ学校にも行く必要もないし、僕は私服に着替える事にした。
台所へ降りて食べ物を探してみたけどまともなものが置いてなかった。
まだ時間もあるようなので、僕は自転車を走らせ昨日雑誌を持ってきたコンビニに走った。
適当に食べ物を見繕い、そのまま食べれば良かったけど結局家に戻ってくる。
自転車があるおかげで先輩と待ち合わせている時間にもまだまだ余裕があった。
五分前に出たとしても間に合うことだろう。
僕は惣菜パンとコーヒー牛乳を朝食にして、その後身支度を済ませる。
怠惰な自分だけれど、身だしなみくらいはそれなりに気は使ってるんだ。
一応高校生だしね。
待ち合わせに近い時間がやってくると、僕は誰も居ない自宅を後にした。
コンビニに到着するとすでに先輩が待機していた。
同じ考えに至ったのか先輩も私服姿だ。
「おはよう浩人」
「おはようございます」
「昨日はちゃんと眠れたか?」
「はい。不安とかあったから眠れるか心配でしたけど、疲れてたのかグッスリ眠れました」
「そうか、なんだかんだと昨日は慌ただしかったし、疲れないほうがおかしいもんな」
僕らは他愛無い挨拶と会話をして、予定話にへと移った。
「隣町まではこの自転車を使ったとしても一時間は平気でかかるな。バッテリーは大丈夫か?」
「はい、まだまだ平気だと思います」
「まあでも一応のこと考えて予備持ってきておいた。ほら」
先輩はバッテリーを投げて渡してくれる。
「ありがとうございます。備えあればなんとやら…ですね」
「だな。まあなくても動くから問題はないが、万が一があるからな」
「それでどこから向かう予定なんです?やっぱりあの橋を渡る気なんですかね?」
「そうだな…それが一番手っ取り早いし、わざわざ入り組んだ道使って行くこともないだろう」
「じゃあそれで行きましょう。けど先輩は隣町って詳しいんですか?」
「俺は部活絡みで他校を少し知ってるくらいだな。近場に居ながらあそこはほとんど行く必要ないし、そこまで詳しくないよ。ぶっちゃけ田舎だしなあっちは」
「先輩もですか。確かにあの町には出向くことないですもんね。買い物や遊びに行くのにも電車で都心に行きますし」
この町よりも過疎というイメージのある隣町。
子供の頃から長い事この町に住んでいるけど、本当に数度しか訪れた記憶がない。
わざわざそんな人の少ない町に行って確かめるより都心に行けという話だけど、ぶっちゃけ電車が使えない状態じゃそれしか選択肢はなかった。
「浩人はこの町にずっと住んでるのか?」
「はい。子供の頃からずっと」
「そうか、俺は他所から来ているからな。正直この町のこともあんま詳しくない」
「そうだったんですか!?先輩もてっきり僕と同じでこの町暮らしだと思ってました」
「ははっ。そんな風に見えるか?俺は中学二年のときにこっちに越してきたんだよ」
「へぇ…それは意外でした」
「親の仕事の都合でな。一軒家からマンション。それで今は俺だけアパートの一人暮らしさ」
先輩は東北の出身らしい。
足に自信があるというのも寒い土地柄だったせいか、子供の頃からよく走り回っていたからなんじゃないかと笑っていた。
「さて、方針も決まったことだし、後は話しながら行くとするか」
「そうですね。早く行けばそれだけ人も捜せますし」
「それじゃ発進!」
先輩は勢いよく自転車に乗ると、快速を飛ばして走っていった。
「ちょ…先輩待ってくださいよ!」
幾ら電動とはいえ、本気を出した先輩に体力で敵うはずがない。
僕はすぐさまその背中を追った。




