第46話 未来を繋ぐ糸 ― 絶望の中の光
王都の夜空を完全に覆い尽くす黒炎の翼。
人々の悲鳴が遠くから響き、街の灯火はひとつ、またひとつと消えていく。
まるで未来そのものが呑み込まれていくようだった。
「見よ、これが終焉だ!」
女魔導師の叫びとともに、闇の奔流が城下へと押し寄せた。
兵士たちは必死に防ぐが、絶望の色が広がっていく。
「くっ……これ以上は……!」
ロイの盾が砕け、兵たちが後退する。
「まだだ!」
ルシアが前に出て、全身で剣を振るった。
「この街を、誰一人として渡しはしない!」
だが黒炎の波は止まらない。
セリーヌの防壁もひび割れ、アークレアの巨体さえ揺らいでいた。
「リオン!」
アレンが僕を振り返る。
「もう限界だ……でも、君ならできるはずだ! 繋ぐ力で、この絶望を跳ね返せる!」
胸が痛む。
命を削る痛みが、今までで一番激しく襲いかかっていた。
視界が霞み、膝が震える。
(本当に……僕にできるのか?)
頭をよぎるのは、これまで繋いできた無数の命。
村の子どもたちの笑顔。
兵士たちの叫び。
仲間たちの背中。
「……僕は……一人じゃない」
拳を握りしめる。
全身を駆け巡る痛みよりも、胸に宿った熱の方が強かった。
「〈修繕〉――未来を繋げ!」
光の糸が爆発するように広がり、街全体を覆った。
崩れかけた建物を繋ぎ、倒れた兵を立ち上がらせ、絶望に沈みかけた人々の心を結び直す。
「なっ……!」
女魔導師の瞳がわずかに揺れる。
「人の心ごと繋ぐだと……そんな修繕はありえぬ!」
「ありえるさ!」
僕は叫んだ。
「命も心も、壊れるたびに繋ぎ直せる! それが……僕たちの未来だ!」
光が王都の空を照らし、闇と真正面からぶつかり合う。
光と闇がせめぎ合い、夜空が裂けるように震えた。
「……見せてみろ、修繕士リオン!」
女魔導師が翼を広げ、全力の闇を放つ。
「行くぞ、みんな!」
僕は仲間たちに叫ぶ。
剣と盾と魔法と修繕――全ての力が重なり、未来を繋ぐ糸となる。
絶望の中に差し込んだ光は、確かに闇を押し返していた。




