第27話 守る力、奪う力 ― 修繕士の限界
黒衣の女魔導師が振るう黒炎が、次々と村を飲み込んでいく。
井戸、畑、木の家……人々の暮らしそのものが蝕まれていくのを、僕は見過ごせなかった。
「〈修繕〉――!」
手をかざすたびに光が走り、崩れた家は元通りに、燃え尽きた畑は青々と芽吹きを取り戻す。
しかしその代償に、体の奥から力が抜け落ちていくのを感じた。
「ほう……際限なく修繕を繰り返すか。だがその身は保たぬだろう」
女魔導師が仮面の奥で笑う。
「修繕とは“代償”。壊れたものを直すたび、主の命を削っているのだ」
「なっ……!」
ロイが息を呑む。
「リオン、お前……そんな無茶を!」
僕の呼吸は荒く、額には汗が滲んでいた。
それでも――。
「構いません……! この村を守れるなら……!」
アークレアが敵の炎を拳で払い、村人を守る。
だがその装甲も焦げ、ひびが入っていく。
「損傷率、上昇……」
巨人の声が淡々と響く。
「アークレア……!」
僕は駆け寄り、そのひびに手をかざす。
「〈修繕〉!」
光が走り、装甲が再生する。
だが同時に、胸を締めつけるような痛みが走った。
視界がかすみ、足元がふらつく。
「見ろ! 守れば守るほど、その身は削られる!」
女魔導師が高らかに叫んだ。
「修繕士よ、お前の力は“守る力”ではなく、“奪う力”だ。己の命を差し出し、誰かを救う――愚かで愛おしい力だ!」
嘲笑が村に響く。
村人たちが怯え、涙ぐみながら僕を見ていた。
「リオンさん……もうやめて……」
「あなたがいなくなったら、私たちは……」
その声が胸に刺さる。
(僕は……守るために力を使ってきた。でも、そのせいで自分が消えてしまうなら……?)
一瞬、心が揺らいだ。
その隙を狙い、女魔導師が黒い槍を放つ。
「死ぬがいい、修繕士!」
ロイが叫んだ。
「リオン、避けろ!」
だが僕は、一歩も退かなかった。
代わりに両手を広げ、迫り来る黒槍に手をかざす。
「……〈修繕〉!」
閃光が弾け、黒槍が砕け散る。
だが同時に、僕の膝が崩れ落ちた。
「リオン!」
ロイが駆け寄り、肩を支える。
女魔導師が冷たく嗤った。
「限界は近い。だが良い……その命を削り尽くすまで、私は見届けてやろう」
村を覆う黒い炎の中、僕は荒い呼吸を繰り返しながら、まだ諦めていなかった。
(僕は……倒れない。この村を、みんなを……守り抜くんだ!)




