第26話 仮面の魔導師 ― 修繕士との対峙
村の広場に立つ黒衣の影。
仮面をつけた女魔導師が、ゆっくりと杖を掲げた。
「修繕士リオン……ようやく会えたな」
冷たい声が、空気を震わせる。
村人たちが息を呑み、怯えて後ずさる。
「お前が……この村を狙ったのか」
僕は歯を食いしばり、彼女を睨みつけた。
「狙ったのは村ではない。“お前”だ。力を持たぬ者を守ろうとする愚かしさ……その甘さこそが、私にとって最高の餌となる」
仮面の奥から覗く紅い瞳が、妖しく輝いた。
「アークレア!」
僕の声に応じ、機神兵が巨体を揺らして前に出る。
だが魔導師は、ひるむどころか不敵に笑った。
「古代機神を従えるか……。だが忘れるな。千年前、我らの祖が機神を滅ぼしたことを」
彼女が杖を振ると、地面から黒い鎖のような魔力が立ち上がり、アークレアの腕に絡みついた。
「ぐ……!」
巨体がきしみ、動きが鈍る。
「主、抑制……作動」
機械音のような声が響き、アークレアの光が揺らいだ。
「やめろ! アークレアは僕の仲間だ!」
僕は咄嗟に叫び、両手を鎖に向ける。
「〈修繕〉!」
光が走り、黒い鎖がひび割れ、次々と砕け散っていく。
アークレアが再び立ち上がり、低く唸った。
「主の命令を」
「村を守れ! この魔導師を近づけさせるな!」
轟音とともに巨腕が振り下ろされ、女魔導師との衝突が始まった。
しかし彼女は素早く身を翻し、黒い炎を生み出す。
その炎は木々や家屋を焼くだけでなく、触れたものの“命”そのものを蝕んでいくようだった。
「直せるか? 修繕士よ」
挑発的な声が広場に響く。
僕は咄嗟に駆け寄り、炎に包まれた木の家に手をかざした。
「〈修繕〉!」
炎は霧散し、家屋が元の姿を取り戻す。
村人たちが歓声を上げた。
「やっぱり……お前の狙いは僕の力を試すことか」
「ふふ……そうだ。試し、削り、やがて奪う。お前が守ろうとするほどに、その力は私のものとなる」
ロイが剣を抜き、僕の隣に立った。
「リオン、一人で背負うな。俺も戦う!」
「ありがとう、ロイさん……でも気をつけて。相手はただの魔導師じゃない」
黒い仮面が、不気味に月明かりを反射する。
村を舞台にした戦いは、ついに“宿敵との対峙”へと変わろうとしていた。




