猿と大蛇
むかしむかし、ある山に猿と大蛇が住んでおった。
猿と大蛇はそれぞれ村の美人を女房にもらって、二匹とも女房を大事にしておったそうな。
ある時、猿の妻も大蛇の妻も同じ頃に腹に子供を宿したんだと。
もう少しでどちらの子も産まれるといった頃、猿は「おい大蛇、おまえの女房よりもうちの女房の方がずっと綺麗だ。だからうちの女房が産む子供のほうが美形に違いない。」と大蛇に言った。
それを聞いた大蛇は「どんなにおまえの女房が美しくとも、おまえの血が入っているのだからきっとおまえにそっくりの小猿が産まれることだろう。」と言い返したそうだ。
しばらくすると猿の女房が先に子供を産んだ。
猿の子はそれはそれは猿にそっくりで毛深い小猿だった。大蛇は猿に「ほれ、見たことか。」と言ったが猿は「おまえの子供もきっとおまえに似たミミズのような見た目に違いない。」と言い返した。
それから少し経って今度は大蛇の女房が子を産んだ。
大蛇の子は女房に似た美形の赤子だった。
それを見た猿は大層悔しがり、大蛇に「おまえの子じゃないんだろう。その証拠にまったくおまえに似ていないじゃないか。」と意地悪を言った。
大蛇は「負け惜しみを言って、なんて情けない。」と勝ち誇ったが自分に似ていない赤子を見るたびに不安になって女房を疑うようになり、大蛇はある日ついに女房を喰い殺したそうな。
大蛇は赤子も喰らおうと這い寄ると赤子の首筋に自分によく似た鱗模様を見つけた。
大蛇は赤子に優しく巻き付くと「すまない、すまない、私はおまえの母ちゃんを、勘違いで殺してしまった。」と泣いて謝り、村の子供がいない夫婦に赤子を託して山の洞窟で死ぬまで己の過ちを悔いて泣いたそうな。
その大蛇の涙が今も川や海を潤しているという。




