第49話旅立ちの時
兄貴と一緒に台所に立つ。
しかも、ケーキに、サンタをデコるため。
子どもかよ……。
「ちゃんと、サンタ書けよ。苺は俺が乗せるから」
「……ったく」
兄貴が苺を載せる。
俺がチョコペンで顔を書く。
仕上げに、ホイップクリームで、髭を作れば完成だ。
「なかなか、サマになってるじゃない」
ともねえが、俺たちの手元を覗き込む。
「そりゃあ、よかった」
失敗したと思ったけど、意外と、なんとかなるもんだな。
「あれ? 春川さんは?」
兄貴がダイニングテーブルの方を見る。
そういえば、姿が見えないな。
「ソファでむにゃむにゃしてるわよ」
ともねえの視線の先を見る。
ソファで寝ている優乃さん、発見!
スパークリングワイン、飲み過ぎだろ……。
「大丈夫かな……」
すやあ……って、気持ちよさそうに寝てるけど。なんだか、起こすのが忍びないな。
「ケーキは、お持ち帰りにするか」
「そうするか」
人数分の保冷バッグを出し、分けて入れる。
クリスマス感は隠れたけど、大目に見てもらおう。
「そうそう。篝のスマホに、駅前のイルミネーションのマップ、送っといたから」
ともねえが、急に話題を変えた。
そうだ。ここからが勝負だった。
慌てて、スマホを開けてみる。
「へえ~……」
最近は、大小色々なタイプのイルミネーションがあるみたいだ。
想いを伝えるなら、どこがいいかな……と思いをめぐらせる。
「こういうのは、雰囲気も大事なんだからね」
「ありがとう。ともねえ」
今日は、そのどや顔が頼もしい。
今度こそ、頑張るぞ。
「じゃ、優乃を起こすわね」
起こすのか……。
いや……まあ……そうだよな……。
ここで寝るのは、色々とまずそうだし。
「優乃~!」
「なあに? 朋美……」
ともねえが、全力で叫んでるのに、起きない。強いなあ……。
「篝が送ってくれるって~!」
優乃さんが、飛び起きた。
そこで、反応されると、緊張する。
再び、心臓の鼓動が速くなってきた。
「え? そ、そうなの……?」
辺りを見渡す優乃さんに、近づく。
保護者を探す、迷子みたいになってる。
俺は、ここにいるよ。
「歩けますか? 駅まで」
「多分……大丈夫……」
ゆっくり優乃さんが、起き上がった。
いつも以上に、ゆっくりでキュンとする。
「ケーキ、家で食べてくださいね」
どさくさに紛れて、ケーキの入った保冷バッグも渡す。俺と兄貴の自信作だ。
「……ありがとう」
ケーキを受け取って、にこにこ笑う。
よし。ついに、旅立ちの時が来た。
「じゃ、行ってくる!」
兄貴とともねえに、意気揚々と言うと、
「気をつけてね~」
「まったね~」
いつもと同じ、穏やかな言葉が帰ってきた。
待っててくれ。
必ず、いい報告、するからな。




