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◯ワ◯ラ会議・前編

総合ポイント900超え、ブクマ240人達成ありがとう

ございますっ! タイトルの由来は次回分かるでしょう。

47話 


 社長が入室してきたことで、その場にいる全員が

1点を注目した。姿としては白の上下スーツに

これまた白いシルクハット、紺色のローファーで

足元を固めた二十代の青年といった所だ。


「はいっ! 両膝を着き、両手を添え、頭を下げて

我がありがたき指令を聞くのd…」

「なんかの名言は後で聞いてあげるのでさっさと

会議を取り仕切ってください」

「DEE…!!! っちょっとちょっと! 最後まで

言わせてよ~!」


 社長が何らかの名言を言おうとしたのだが、副社長に

速攻で制止され、抗議の声を叫んだ。


「あれ何の名言だっけー?」

「何十年も昔に大ブレイクした漫画のキャラだった

ような…………パワハラ大好きなさ~~」

「もう1つ似たようなのもあったよね」

「地に座して泥水啜(どろみずすす)れ。だったっけ? どっちにしろ

パワハラには変わりないな」


 しかし、場の空気は一変して和んだようだ。


(何としても今回は決めなければ…………)


 約1名を除いて。


「え~…………本当に言っちゃ」

「ダメです。パワハラで訴えますよ」


 副社長の言葉を聞いた社長は


「分かったよ、真面目にやります。さて、ここに

責任者5名と副社長を集めた理由は、他でもない

SAFの運営状況を報告してもらうためだ。ゲーム

難易度担当の鬼塚部長から報告をお願いします」


「はい、これまでと変わらず、現時点で魔王の

幹部格に達しておる者はおりません。付け加えて、

SSS級冒険者の増加も今月は無しと、依然

ユーザーの難関として立ち塞がっております」


 メガネをかけたごく普通のサラリーマン風の男性が

口を開いた。全身からインテリオーラが溢れている。


「うんうん、実は未だに魔王が完成していないとは

口が裂けてm…」

「「「「言っちゃダメです!!」」」」

「ねー。ま、9割9分は完成してるんだけどね。

だからこそ、今はまだユーザー達を燻らせなきゃ

ダメなんだよね。じゃあ次はAI担当の相川部長の

報告を聞きましょうか」


「はい、雑魚敵の切り替え型AI、ボスキャラの

経験学習型AI共に異常はありません。しかし、

クエスト自動配備のAIが時々誤差動を起こして

おり、今回はB級に配備される筈のクエストを

A級に配備したケースが2件。SS級に配備

される筈のクエストをS級に配備されたケースが

1件ありました」


 今度は焦げ茶色の髪色の真面目そうな雰囲気の

男性が口を開いた。


「うん、どのような過ちも1つの過ちとして見る

必要があるが、S級とSS級の配備ミスは痛いね。

不運な受注ユーザーへのフォローは出来ましたか?」


「はい、SS級ユーザー向けに救助クエストを

緊急配備したのですが、不運なS級ユーザーが、

助っ人参戦の部下と共に自力で攻略してしまい

ました」


「おお、凄い! もしや最近グレートシティで

名を馳せているレオナルドさんかな?」


 社長は楽しげに予想人物を挙げた。


「その通りです。同時に彼の部下も

侮れなさそうです」


「うんうん、面白くなってきたねぇ…………

じゃあ次はイラスト、デザイン担当の雲母(きらら)部長の

報告を聞こうかな?」


「はいは~い☆、あーしとあーしの部下達が手掛けた

デザインパーツ、モンスター達のデザインは概ね

好評を頂いてまーす!今月来た苦情的なのは、

キャラクリにアメリカンなゴリマッチョパーツが

無いって奴だけでしたよー☆☆。ジャパーンで

マッチョ愛好家なゲーマーが居たのは盲点でした~☆!

以上でキララからの報告を終わりま~す☆」


 金髪ツインロールテールにケバケバのゴスロリ化粧

を施した女性が口を開いた。スーツにしても地味に

ゴスロリ風に改造してあり、抜かりがない。


「ありがとう。その様子だと、苦情についても

自己投影システムで解消したのかな?」


「もっちろん☆☆! AIの報告ではあーし考案の

ミラーメイクシステムで大満足って来てたよ!

ナルシーな方だったのかな? そう言うわけで

バッチシです☆」


「流石雲母部長ですね。話し方や合いの手さえ

無ければ言うこと無しだよ。次は広報担当の

ロビンス部長の報告を聞きます」


「はーい、今月の売上はー、前月比で17%増し

でしたー」


 ヨーロッパやアメリカ出身と思われるブロンドの

ロングヘアー美女が口を開いた。


「極めて順調ですね。知名度が広まりきりつつある

これからが勝負どころだ」


 嬉しそうかつ引き締まった表情で答えた。


「but、星1つの口コミにはとこんな声が

書き込まれてましたー」


 ロビンス部長は自動音声にレビューを読み込ませた。


『何でユーザー同士で殺し合えるんだ! 星1つ!


リアルフィジクスモードだけは要らんわ


リアルフィジクスモードの奴ら足手まとい過ぎて草草ww


リアルフィジクスモードで無双している奴が居る?

あれ嘘だからwwwww


実際俺はリアルフィジクスモードで遊んでる無能を

100人はPKしてるしwwwww


PKする奴ら全員BANしろ!!


◯ね! ◯ね! ◯ね!



5万円を返せーーーーーー!!!!!!』


「と、こんな次第でございまーす」


「『あ』って何ー?☆」

「んなもん分かんないって、でもたまに見かけるよね~」


 時々見かける謎コメントについて、一部で

ひそひそ話が起こった。


「そうですねぇ…………リアルフィジクスモードの

問題点も含めて、物理エンジン担当の(ロン)部長の

報告を聞きましょうか」


「はい、始めにSAF世界の物理法則、武器・モンスターの

当たり判定に関わる報告を行います。結論から述べて、

変更すべき要素は無いでしょう」


 図抜けた長身に無精髭、逆立てた短髪と非常に

近寄りがたい姿の男が口を開いた。名前的に中国

出身なのだろうか。


「詳しくどうぞ~」


「重力加速度を地上の平均重力と同等に設定することで、

プレイヤーが現実では行えない動作を行えていると認識

させると同時に、現実ではまず討伐不可能なモンスター

達と互角以上に張り合えている臨場感が生まれています」


「うんうん、これぞVRの醍醐味ですよね~。龍部長が

居なければ、SAFはここまで発展しなかったと断言

出来ますね。しかし、先月から撤廃意見も出ている

リアルフィジクスモードについて、考案者の龍部長

から継続の意思を聞かせて頂きます」


「はい、結論から申し上げますと、リアルフィジクス

モードは継続するべきだと考えています」


「What!?」

「うっそ☆!?」

「この期に及んで継続だと…………??」


 各方面から驚きと疑問の声が上がった。


『パン! パン!』

「はい、せぇぇーしゅくにっ! 龍部長は継続したいと

お考えですね? 私個人としてもその意見には賛成して

います。が、それにはこの場の皆様を納得させうる根拠が

必要ですっ! と言うわけで、根拠の提示をお願いします」


「はい、まずはこの動画をご覧ください」


 スクリーンに某ルーチューバーのライブ配信が写された。


「これは……」

「ピカリンだ☆」


 そして動画は始まる。


「さーてさてさて、何もない場所に突如発生した

謎のひび割れ、その正体を暴くためなら何だって

するぞ~!」


 ピカリンがハイテンションで話している。


「あっと、突如赤髪の戦闘民族的な人が現れました!

早速インタビューを…………」


「…………よぉし、モンスターを見かけたら倒していくかぁ!」


 赤髪のプレイヤーは突発的に駆け出した。


「あっ! 待ってくれ~! うん! 追い付けません!!」


 その後、そのプレイヤーはポツポツ配置されている

モンスターを千切っては投げることを繰り返し、時に

ゴブリンの群れをぶちかましで薙ぎ倒し、時に50もの

人喰いマウスを一網打尽にし、時にアーマーオークを

蹴り1発で仕留めていた。


「…………(まさ)に圧巻です! 今度こそインタビューをを

をおおOH……NOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!!!!!!!! あの

絶壁をユキヒョウの如く登られては、手も足も

出せないっ!…………無念なり~~~~!!」


 再びスクリーン画面が元に戻る。


「このように、リアルフィジクスモードを

楽しんでいるユーザーも居られます。今すぐ

廃止するのは時期尚早では無いでしょうか?」


「あのユーザー、例のミラーメイクシステムで

喜んでくれた人だ☆。そうだね、あーし龍ちゃんに

賛成票送る~☆!」


 1人賛成意見が出た。しかし…………


「その後彼が継続しているとは限らない」


 鬼塚部長が言い放った。


「そうだねー、彼には悪いですけどー、これ以上

ユーザー同士のトラブルを回避するためにも、リアル

フィジクスモードは撤廃すべきだと思いまーす」


 ロビンス部長も現実的な観点から否定意見を出している。


「私もリアルフィジクスモードの継続には反対意見です。

このモードの存在によって、SAFを離れていくユーザーは

多い。動画の彼のように、特段身体能力の高いゲーマーも

数少ない。やはり人間の身体能力でモンスターに勝とうと

する事が無茶なのです。以上の意見に如何答えますか?」


 副社長まで否定的な物言いで問い詰めてきた。


「リアルフィジクスモードユーザーの継続、トラブルの

撤廃、そして彼らの対モンスター能力を示せば良いの

ですね? それでは今から2本の動画をお見せするので、

ご覧ください」


 またまたスクリーンが切り替わり……


『グッグッナインルーチューヴ。どうも!、

ピカリンでぇす! ほーんじつはなんとッ、

火山地帯は灼熱。灼熱山地にやってきました!』


 相変わらずのハイテンションで実況を始めている。


『さてさて、今回の目的はなんとッ! 裏ダンジョン

という秘境を発見することですッ!! ここをまっすぐ

進んだ先の突き当たりに、入り口が…………おっとぉ!

何やら岩盤が崩れたあぁとがありますよ!? 早速

見ていきましょう!』


 ピカリンは走りだし、映像が大きく揺さぶられる。


『皆さん…………ご覧ください! 何かが穴を掘った

形跡があぁりますよっ!!』


直径70cm程の穴を指差し、驚きの表情 (テンプレ)を

見せた。


『恐らく、この穴を掘った何かが岩盤も破壊したの

でしょう。痕跡からして、これはつい最近起きた

出来事でぇす!』


『あっと、あそこに4人組のパーティーが!

インタビューをしてみましょう。こんばんはー!』


 4人組パーティーの中に、先程の大男が居た。


『今、私は裏ダンジョンを探しているのですが、

あなた方の何方どなたか、何か情報をお持ちでは

ありませんか??』


『ああ、裏ダンジョンなら、俺が掘り当てました。

丁度この穴の先が裏ダンジョンに繋がってます』


 大男が返した。


『なんとッ! 裏ダンジョンを掘り当てたのは、

昨日始まりの平原で大暴れしていたこの方だそう

です! よろしければ、是非お名前と特技を

披露して下さい!』


 大男にマイクが渡された。


『ごほん、俺の名はアレウス。速攻で有名なギルド、

アグロフラッシュの新入りです』


『ビッグニュース! アレウス氏はかの有名な

アグロフラッシュに所属したようです!』


『リアルでボディビルダーをしているフィジカルを

活かし、リアルフィジクスモードで最強最速になる

べく精進しています』


『またまたビッグ・ニュー~~~スッ!! アレウス氏

の新人ならざる身体能力は、御本人様の肉体からなるもの

であったそうです! では最後に何か特技をお見せいただけ

ますか?』


『それでは…………先程編み出した絶技、関節外しを

用いたタコ踊りをお見せしましょう!』


アレウスは四肢の関節を全て外し、タコみたいに

ウネウネ動き始めた。


『『『だっはははははは!!!』』』


『す、凄まじい絶技でした。残り3名のお名前も

お聞きしましょう』


ジャンヌ、ジェルマン、クラフトが順に名乗った。

そして、アレウスはこの先にも裏ダンジョンと繋がる

ルートがある(を抉じ開けた)ことを伝えた。


『貴重なお時間をあーりがとうございましたッ!!

お聞きした情報を忘れぬよう、この命に変えても

裏ダンジョンを探検します!!』


 ここで龍氏によって一時停止された。


「少なくとも彼は、レオナルド氏のギルドに入団し、

大活躍している模様です」


「っおいおい、灼熱山地で力ずくで裏ダンジョンを

抉じ開けた奴ってコイツだったのか!?」


 相川部長が驚愕の表情を浮かべた。この動画の日、彼

は裏ダンジョンの門が開いていないのに、裏ダンジョン

に誰か居たことで、AIの誤作動を疑われて問題解決に

奔走した。しかし、結局未解決事件となったのだ。


「先程、相川部長が報告したレオナルド隊長が受注した

クエストにも、彼が居たのだろうな。ここまで通じうる

人材が居るのであれば、私もリアルフィジクスモード

継続に一票を入れます」


 鬼畜難易度精製マニアと(うた)われる鬼塚部長も賛成に

回った。


「わ、私も賛成に変える! AIは……正常だった。異常

なのは彼の強さだ!」


 アレウスの強さを見込み、相川部長も賛成派になった。


「…………私はまだ反対でーす。確かに彼は強いでーす

けど、それは彼だから無し得る事でーす。他の方々は、

こう上手くいかないと思いまーす」


 ロビンス部長が自身の意見を貫く。


「私もロビンスと同じ意見よ。物理なら身体能力が

高ければ良いのかもしれない。ですが魔法に特別な

強化方法はあるのですか? SAFは物理ゲームでは

ありません。魔法だってあるのですよ」


 部長はリアルフィジクスモードのゲームバランスを

引き合いに反対意見を述べた。


「そうですよねー。これは多数決では決めてはいけない

問題でもあります。龍部長、お2人を納得させられる

根拠があれば、提示していただきたいです!」


 社長は少数派となった反対意見の2人に寄り添いつつ、

龍部長の返答に期待の表情を浮かべていた。


「はい、これについてもピカリン氏の動画になりますが、

リアルフィジクスモードを取り巻く闇…………この部分も

含めて皆様を納得させられるものになっているでしょう」


そう言って、本日3本目の動画を流し始めた。

ブクマ、星5つを着けてくださると、やる気が上がります。感想やレビューも、お待ちしています!

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