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筋肉VS凍結

豆知識が長いので、早く本編を読みたい人は

読み飛ばしてねー!


・SAF流 高速時の筋力アップ術

人間を初めとする動物の筋肉は、速く収縮すれば

する程発揮可能な最大筋力が低下する。特に短距離走の

最高速度を向上させたい場合等は、最高速度で走るのが

最も効率の良いトレーニングになるが、残念ながら真の

最高速度は3日に1度、7秒間しか発揮できない。

しかしSAFにはスタミナの概念が無いため、延々と

最高速度で走ることが可能である。したがって、単に

走るだけでも高速時の筋力を大幅に向上させることが

出来るのだ。

39話


「「「「おおっ!」」」」


アレウスが見事スノーアーマードラゴンを倒したことで、

残り4人のメンバーは感嘆の声を上げた。


「…………」


しかしアレウスから勝利の雄叫びが聞こえてこない。


「あっ! 凍りついてる!!」

「うわ本当だ!ヤベェ!!」


クラフトの言葉にレイルが反応する。


「えっ!? アレ君冷凍ビーム大丈ばないの!?」


想定外の自体にマリリンが面食らう。


「間に合わねぇ!」


ジェルマンのランチャーから捕獲網が放たれたが、

凍りづけのアレウスは収まらずに崖下へと落下して

いった。


「…………ひとまず雪のお陰で助かってはいそうだな」


遠視が得意なヒットマンのジェルマンとは少し違うが、

レイルはアサシンで培った視界の悪い場所でも見渡す

視力により、アレウスの無事を確認した。


「飛び降りても大丈夫だと思うが、念のため

パラシュートで降下しよう」


メカニック・クラフト特性のパラシュートを着用し、

4人は安全な下降を行った。途中、体重の軽い

マリリンが横風でどこかに飛ばされかけたが、

レイルが縄で引き留めたので、事なきを得た。


「もうちょっとましな助け方は無かったの?」

「じゃあジェルマンに捕獲してもらえば良かったか?」


マリリンの文句にレイルが提案をし、ジェルマンが

ランチャーをスチャリと鳴らした。


「まぁ、ああするしか無かったよね。一先ずありがと」

「はぁ、可愛げねーな」


素直じゃないマリリンの態度にレイルはやれやれと

いった反応をした。


「アレウス…………どうしてお前は無茶ばかりするんだ。

全然冷凍ビームの対処を出来てないじゃないか。

聞こえているなら、どうしてこうなったか後で…」


クラフトがやるせなさを吐いている時だった。


「ん? アレウス君…………微妙に動いてない?」


ジェルマンが氷の中でアレウスが動いていることに

気づいた。次の瞬間


「あー! 苦しかった!!」


氷が溶け、内部から湯気が拡散した。


「げほっ! げほっ!」

「あっつぇーなおい!?」

「いや、と言うかこの湯気何!?」

「そんなことよりも、こんな水滴ついたら」


そう、ここは極寒の氷河地帯。体表についた水滴は

一瞬で凍り…………


「「「「寒い!!!!!」」」」


体温をごっそりと奪っていくのだ。これが

現実世界なら、あっという間に凍死してしまう。


「あ、皆無事だったんですね。良かった~」


先程まで凍っていたアレウスは、何食わぬ顔で

メンバーの無事を喜んでいる。


「ちょっとアレ君。凍っていたのに何で五体満足なの?」


「ああ、それは筋肉を絶えず収縮させて、

体温を維持していたからですよ」


「それって…………寒いときに体が震えるシバリングの

ことかな?」


クラフトが人間の体温調節機能を挙げた。


「そう、それ! やっぱ筋肉様々(きんにくさまさま)だぜ!」


アレウスは相変わらず得意気に筋肉を

自慢しながら答えた。

大胸筋をピクピクさせながら。


「でも…………アレウス君は確かに凍っていた筈。

少なくとも、落下中は身動きが取れないほど

完全に凍っていたよね? だとしたらやっぱり

体の芯まで冷えていたと思うんだ」


ジェルマンが疑問を投げ掛ける。


「うーん、半分正解って感じですかね。確かに俺、

ドラゴンに凍らされたときは、身体中に氷が

どんどんついていくくらい、しっかりと

カチンコチンになったんです」


「大方運動エネルギーを増やして、ドラゴンに

大ダメージを与えたかったんだろ?」


クラフトがあきれ気味に答えた。


「流石クラフト。分かってるじゃねぇか。けど、

体の芯までは実は冷えてなかったんだよ」


「ああ? そりゃまたどう言うことだよ」


レイルが訳分かんないといった様子で聞いてきた。


「筋肉には表層筋と深層筋って考え方が

ありますよね? 古い考え方ですけど。

俺は凍らされた時、表面についている

表層筋は動かさなかったんですけど、

体の内側にある深層筋を高速で収縮

させたんです」


「あっ、もしかしてそれで体の芯だけ暖めてたの?」


「マリリンさん、その通りッス」


「そうすれば身体中に氷を纏いつつ、完全に

凍りつかずに済むもんね」


「そゆこと。そしてドラゴンを倒した後にでも

全身の体温を上げ、それからは表層筋も収縮させて

一気に解凍する。これが俺の言ってた冷凍ビームを

防ぐ術だぜ!」


今度は両腕の力こぶを隆起させる

ダブルバイセップスのポーズを決めながら、

どや顔で話した。


「はぁ~…………こんなことお前以外絶対思い付かねぇ

だろ。器用にインナーマッスルだけ動かすとか、

そこらのボディビルダーにも出来ねぇ芸当だろ」


「そうですね、具体的には大腰筋、ローテーターカフ、

小胸筋、小殿筋、円回内筋、大腿直筋……」


レイルの質問に、殆どの人が知らないであろう

筋肉を列挙し始めたので…………


「アレ君ストーーーップ!!」


マリリンが全力で制止させた。


「あっ、大腰筋はアウターマッスルの側面もあるk…」

「アレウス! そこまでだ!」


まだ言おうとしたのでクラフトが完全阻止させた。


「何にしても寒すぎる…………ここから徒歩で

帰りなのかい??」


ジェルマンが震えながら今後を憂いている。

ホットポーションを飲んで尚、寒いのだ。


「あっ…………アレくぅん。背中借りるネ!」


この様子を見て閃いたマリリンは、アレウスの背中に

()()()く飛び乗った。


「あったか~い! 天然の熱暖房だぁ!

筋肉って良いねアレ君!」


ほっぺをアレウスの背にすりすりと(さす)りながら、

全身を密着させている。


「あっ、マリリンてめー! 俺も(あった)めさせろ!」


レイルがマリリンの上から覆い被さるように、

アレウスの熱暖房を享受しようと試みた。


「ちょっとレイル! 急に発情しないでよ!」

「誰がてめーに発情するか! 熱暖房(アレウス)

暖まりてぇだけだ!」

「はぁ!? あたしに魅力が無いってぇ!?」

「そこまで言ってねぇ! てかお前は

何を言いてぇんだよ!?」


ガヤ3人の内、2人の年上が盛り上がっている様子を見て


「「俺(僕)も暖めさせてよ!!」」


普段は生産職な2人もアレウスの腕に

しがみつき、暖まった。


「こ、今度はむさ苦しい…………レイル、

退かなかったら火葬するわよ…………」

「むさ苦しいのは俺だけじゃねーだろ!」

「「あー、芯まで暖まる~~~」」


最早スノーアーマードラゴンのドロップアイテム

回収を忘れており、4人はアレウスで暖まる事

だけを楽しんでいる。


「…………あの~、いつまでこうしとれば

良いんですか…………? と言うか、そろそろ

ドロップアイテム回収しないと無くなっ

ちゃいますよ」


「「「「あっ!」」」」


その言葉で4人は我に帰り、全員で急いで

アイテムを集めきった。

そして…………


「帰りは楽チン、ペダル式小型飛行機だー!」


クラフトがポーチの半分を埋め尽くしていた

パーツを取りだし、古風な飛行機を組み立てた。


「えーっと…………どうやって動かすの?」

「モーターを充電して動かすよ。さぁ、

皆そこの自転車を漕いだ漕いだ~!」


5人が一斉に自転車を漕ぎ始めた。


「おおー、体も暖まってちょうど良い!」

「けどもう充電完了しそうだね。凄いね!」

「あれ? こんなに早く充電できたっけ…………って」


4人が1人の方向を向いた。


「アレ君が皆の倍以上速く漕いでるだけだね」

「いやぁ~、何かこの世界でもサイクリングしたく

なってきたぜ~。クラフト、チャリ作ってよ」

「分かったよ。アレウスは今回のクエストの

功労者だから、特別にタダで作るよ! さ、

充電できたしフライアウトだ!」


飛行機はグラス・コープの麓まで飛んでいき、

移動時間を大幅に短縮した。


「危なかった。アレウスが重いからか、想像以上に

バッテリーを消費したよ」


飛行機とは思えない手際で解体しながら話す。


「クラフトでも想定外の事態になるんだなぁ」

「いやいや、発明は常に想定外が付きまとうものだよ。

失敗を重ねて役に立つものが出来るのさ」

「そっか。じゃ、さっさと完了報告して、団長達に

合格発表しようぜ!」


こうしてB級昇格試験は合格となった。

ブクマ、星5つを着けてくださるとやる気が上がります。感想やレビューも引き続きお待ちしています!

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