竜滅の拳
ブックマーク10人突破! あ~りがとうございますっ!
今回は少し長めのフルバトルとなっています
10話
「これ、受けます」
「かしこまりました。契約料600ジュエルを
いただきます」
今までの相手と格が違うのか、契約料も
6~10倍程高い。
「はいよ」
それでも今までクエストをこなしてきたお陰で、
簡単に受注できる程の値段と言えるようになった。
「それでは…………最下級ドラゴン・リザードモドキの
討伐、健闘を祈ります!」
受付嬢とのやり取りを終わらせると、後ろで
待っていた2人が目をパチクリとさせていた。
「アレウス…………お前本当に単独でドラゴン系に
挑むのか…………??」
「私でもドラゴン相手じゃ最低、1人は
同伴させるぞ…………」
「そうですか。でも、これでいい。今までの相手は
正直弱すぎたんだ。ここらでそんな大物を倒して
おきたかったんです」
アレウスは燃えるような瞳で2人に訴えた。
「そうか。そんな訳の分からないことをするのは
団長位なものだと思っていたが…………」
「お前がその気なら、俺は止めないぜ」
「2人共ありがとう。万が一俺がドラゴンに
やられたりした時は、後処理もよろしくお願いします」
「「…………へ?」」
満面の笑みで、とんでもないことを頼まれた2人は、
同時に間の抜けた反応をした。
「じゃ、行こうか!」
~邪臭の洞窟~
「ヒャッホォー!! サイクルクロー!」
籠手を装備したアレウスは、舌を伸ばしてきた
ギガフロッグに対し、両腕を伸ばした状態で
きりもみ回転しながら突撃することで、周囲に
風の斬擊を巻き起こし、ギガフロッグを
バラバラ死体に変化させた。
「回収回収~♪。お、いっぱい来たなぁ」
血の匂いに引き付けられたのか、速吸血バッドの
群れが襲いかかってきた。
「やってやるぜ! うぅおりゃりゃりゃりゃ~~!!」
先程のサイクルクローと同じく、格闘家の技である
舞空連殺拳を繰り出し、全方位から襲いかかる
速吸血バッド達を一網打尽にした。
「いっちょ上がり!」
ジュエルやドロップアイテムを回収していると、
副長とクラフトが漸く追い付いた。
「やっと追い付いた…………アレウス、お前
幾らなんでも速すぎねぇか!?」
クラフトがあたかも息を切らしたかのような
反応をしている(SAFにはスタミナの概念が
無いので疲れない)。
「全く、こんなにモンスターの出てこない
フィールドは始めてだよ」
目につくモンスターはウォーミングアップとばかりに
倒してきたので、副長達はモンスターに遭遇しなかった
ようだ。
「よし、2人が追い付いたから、俺はぼちぼち
リザードモドキを倒しに行く。周囲の冒険者に
被害が行かないようにだけお願いしますね」
そういって、洞窟の最奥へ歩みだした。
「「…………」」
副長はやれやれといった反応をし、
クラフトは苦笑いをした。
~最奥の空間~
「…………そこか」
暗さに慣れたアレウスの目には、薄い灰色の
巨大トカゲのような生き物がじっとこちらを
見ていた。
「俺が美味そうか? 欲しけりゃくれてやる。
ただし、俺を倒せたらなぁ!!」
刹那、アレウスは全長5m程のトカゲに向かって
駆け出した。
「クギャルルッ!」
トカゲは残酷に敵を穿つ爪を容赦なく振るった。
「どこ狙って……やがるっ!!」
横へ移動しつつ、すぐにトカゲへ向かって爆進し、
脇の近くで止まりつつ2回転ほど回転し、その
勢いのまま、自身にも反動ダメージが襲いかかる程の
威力を持つ蹴りを、トカゲの脇腹におみまいする。
「クギュ……!!」
トカゲ的には、自らより小さな生物に自らの身体を
動かされたことには驚いたのだが、受けたダメージは
アレウス自身に返ってきた反動ダメージの2倍程度と、
頑丈さが見てとれる。
「ヘヘッ、そうこなくちゃな!」
追撃の尻尾に跳躍で飛び乗り、引き戻される前に
バック宙で背中の真上へ移動。全力の踏みつけ蹴りを
おみまいした。
「ギギッ!!」
背骨の位置を僅かにずらされたことに怒ったのか、
目付きが明らかに変わった。
「…………こいつは、気合い入れねぇとな」
「クギャアアアルルルルッッ!!!」
大暴れし、時に前宙や側転までし始めたトカゲの
背中には流石にしがみつけず、振り下ろされた。
「おっと」
尻尾の一撃を回避し、距離を詰めようとするも、
爪の攻撃速度が上昇しているため、隙がない。
「硬ぇ相手には発勁が有効なんだが、いかんせん接近が
出来ねぇよなぁ」
そうこうしていると、あろうことかトカゲから
両翼が生え揃い、ドラゴンへと変化した。
「いーや、ギャグじゃねーんだからよっ!」
そして火炎放射まで繰り出してくる始末。
当然全力で回避だ。
「クギャオオオルッ!!」
久々のエアライドが余程気持ちいいのか、
しばらく空を飛びながらアレウスを攻め続けた。
(くそっ、下手に跳躍したら焼かれたり裂かれたり
食われかねん。やっぱ遠距離攻撃が欲しいな…………
遠距離と言えば武器だ…………籠手を投げるか?)
避けながら考え続ける。今のアレウスの身体能力を
支える筋肉だって、深く考えたからこそ得られたのだ。
ならば、考える事の他に解決策は無い。
「ギャルルゥア!!」
岩盤ごと切り裂く爪を、紙一重で避ける。
「くそっ、飛散する岩すら殺傷力が…………はっ」
~30分前~
「石の力を舐めるなよっ!」
「第四次世界対戦の武器候補だしねぇ~」
~現在~
「これだっ!」
アレウスは攻撃を避けつつ、平たい岩を手にとって、
走りながら岩盤に押し付けた。
「アレウスは何をしている?」
遠方から戦いを見ていた副長が不思議そうに呟く。
「おそらく……岩を投げやすい形に整えているのかと
思います」
頭脳に優れるクラフトは、岩が物理的に投げやすい
形…………円盤状に変わっていく様からこう考えた。
「おとといきやがれ、トカゲ野郎!」
ドラゴンをトカゲ呼ばわりすることで、攻撃を誘う。
…………最も、ドラゴン自身がバカにされている事を
理解しているのかは定かではないが。
「クギャアアッ!!!」
全速力の爪攻撃、アレウスはそれを確実に避ける。
ドラゴンは攻撃パターンを切り替えるため、空を飛ぶ。
「今だっ!」
アレウスはドラゴンと正反対の方向へ走りだし、
最高速度状態で壁へ跳躍。登る。登る。登る!
「クギャアア……アッ??」
アレウスが地面に居ると思っていたドラゴンは、
地面を見て居ないことに気づき、隙を作ってしまった。
「こっちだコウモリ野郎!!」
対面の壁、更に高所から、アレウスは叫びながら
全速力の円盤投げを繰り出した。
「クギャアッ!?」
円盤はドラゴンの頭上で大きく下へ曲がり、
ドラゴンの右翼を切断した。
「もう一撃!」
アレウスは壁からいち早く地面へ降り立ち、
ドラゴンの落下に合わせて左翼を籠手で
切断した。
「クギャアアッ!!!」
空中で身動きが取れないアレウスに対し、
火炎放射を繰り出す。
「うおおおっ!!」
アレウスは空中で身を捩ることにより、
サイクルクローを繰り出すことで、
炎を両籠手に纏わせた。
「お返しだ!」
ドラゴンの鼻先に着地すると同時に両目に燃える爪を
突き刺すことで、ドラゴンに大ダメージを与えた。
「隙だらけだぜっ!」
この大きな隙を逃さずに、発勁を連続でおみまいする。
「おっとぉ」
5連発も食らわせれば、ドラゴンのHPは虫の息であり、
大体どんな攻撃をしても倒せる。そのため、爪攻撃を
回避しつつ、距離を取った。
「さぁて、フィニッシュだ!」
「クオオオオッ!!」
命の危機感から、最大火力の火炎放射を放ったが、
アレウスは超瞬発力を駆使して火線はおろか、
ドラゴンの視界からも失せた。
「食らいやがれえええっ!!!」
最高速度状態からの、最大加速の右ストレート。
これ以上無い一撃をドラゴンの左頬に叩き込んだのだ。
「…………」
首が捻れ、半回転したドラゴンの脈を計る。
「た、倒したぞーーーー!!」
アレウスはとうとう身一つでドラゴンを倒したのだった。
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