第6話
お久しぶりです
2年以上放置していたのですが、急に「作品がランクインしました」の通知があって驚きました。
なので、書いてあった分を投稿します。
レイモンドにあてがわれた部屋は、私の部屋からそう遠くない場所にあったわ。
王族と他国からの客人の部屋が近いなど普通はあり得ないのだが、メルリアーネもレイモンドも疎まれている存在で、部屋は区画の端の方にある。
そうすると、必然的に近く感じるのでしょうね。
扉を3回ノックする。
コン、ココン、コン
…つい昔の癖で節をつけてしまったわ。
勢い余って4回に聞こえなくも無いし…。
まあ、いいでしょう。
気を取り直して、中にいる人物に声をかけた。
「メルリアーネ・エラ・サーファリアスですわ。レイモンド様にお話があって参りました。お取次をお願いします。」
私がそういうと静かに扉が開いて、その奥にはレイモンドが立っていたわ。
そして無言で私を室内へ促したわ。
何で少しムスッとしているのかしら?
とりあえず、促されるままに部屋に入り、ソファーに座らせてもらう。
レイモンドは無言のままにお茶を用意して私の前に置くと、対面の席に座った。
「…何故いきなり先触れもなしに王女がやってくるのですか。」
開口一番にそう言うと、お茶を啜る。
撫然とした口調なところを見ると、それが表情の理由でもあるようね。
「わたくしにはそうした事に心を砕いてくれる侍女がいないのですわ。先触れを出さずに失礼。」
マナーも何もあったものではないし、王女としては失格だろうけれど、開き直ることにしたわ。
転生者であるという認識があるなら、多少は多めに見てもらえないたろうか。
そんな希望的観測もある。
私の態度を見たレイモンドは諦めたようで、ため息を吐くと事情を聞いてきたわ。
「貴女様がそう言うなら、僕は何も言えません。それで、こちらに訪ねて来られたのは何の御用ですか。取引についての返答にはまだ猶予をいただいていると思いますが。」
私は周囲を見回し、レイモンド以外に人が居ないか気配を探る。
転生者についての話は迂闊に聞かれるわけにはいかない。
『周囲に其方たちの言動を認識できる者はおらぬぞ。』
朱雀が私の中からそう言った。
契約者の心を読めるというのは、人間に不利かと思ったけれど、こういう時には便利ね。
私は朱雀に心の中でお礼を言うと、レイモンドに向かって話を始めたわ。
「レイモンド様がおっしゃっていた、“転生者”というものについてお聞きしたいのです。それに朱雀についても。」
「“何故わかったのか”という事ですか?」
レイモンドは私が聞きたかった事を正確に指摘した。
まあ、あの流れからして当然でしょうね。
私は素直が頷くと、レイモンドは少し考え込む様な仕草をみせた。
「そうですね。まず朱雀については、玄武が教えてくれました。というよりは、“玄武の同類がいる”と気配でわかったと言うべきですね。」
「つまり、玄武様と同じ四神がいるとわかったと。けれど、それだけで朱雀がいるとまで断定はできませんよね。」
「ええ、そうですね。なので朱雀という事は玄武が教えてくれました。」
そうレイモンドは答えたけれど、一瞬目が彷徨っていたわ。私は見逃さない。
「本当に、そうなのですか。」
眼に圧を込めて言葉を発する。
しばらく睨み合いを続けると、レイモンドが先に目を逸らした。
勝ったわね。
「…一応、貴女様が朱雀と契約している可能性を事前に考慮していたのです。」
「何故?」
「それは、もう一つの方の答えにも繋がります。」
それは、転生者についてという事かしら。
…もしかして、レイモンドも『セイキオ』を知っている転生者なのかもしれないわね。
でも、ゲーム内での朱雀の契約者は主人公でメルリアーネではないわ。
何があるというの?
「貴女様が転生者である事は、すぐにわかりました。僕のことを見ても、玄武が現れても驚かずに笑みを浮かべていましたから。
それに、僕の一方的な話に反論もしています。
気位の高い姫としての振舞い、貴族的な駆け引きなども習得されている証拠です。
“落ちこぼれ姫”と渾名され、捨て置かれている少女にはできない事ですよ。」
「わたくしは捨て置かれていても王女です。それくらいの教育は受けていますわ。」
馬鹿にするのもいい加減にしてほしい。
その意味も込めて高飛車に言い放ってあげたわ。
レイモンドは一瞬ビクッとして、済まなさそうな表情をした。
「いえ、貴女様を侮るつもりではなかったのです。ただあまりにも動揺していなかったですし、かといって無気力な訳でもない。精神が成熟しているとしか思えなかったのです。
それに…。」
そこでレイモンドは言い淀んだ。
私の目に再び力が込もる。
「それに?」
「その、貴女は『セイキオ』を知っているのではないかと思ったのです。」




