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吸血鬼の夜  作者: 酢酸カーミスケ溶液
3/3

夜明け

感謝の心を忘れない。

ライナルトはクロードに教えられたような気がした。

ライナルトは馬にまたがって勢いよく走り出した。

セシルのことを何よりも思っていた。

そのためか、セシルのことを考えるたびに鞭を振るっていた。

腕のアザは徐々に広がっている。

ライナルトは怖かった。

自分が自分でなくなるかもしれない。

しかし、自分が立ち上がらないとセシルを助けることはできない。

そんな思いは胸の奥にしまった。

吸血鬼と共存することはできないだろうか?

人の血を吸う、それは命に関わることだ。

ライナルトの頭にある言葉が浮き上がった。

「人工血液」

ライナルトは決心した。

ヴァイロンをなんとか説得してセシルを助け出す!

険しい山道は徐々に寒さが増して雪が薄く積もりだしていた。

ライナルトは馬から降りた。

「君はガルナに帰って。この先は寒さが厳しい。」

馬は心配そうな目で帰っていった。

「この先は俺一人で行かなきゃ。」

霧の先に薄っすらと城の影が見え始めた。

そして巨大な扉が目の前に現れた。

扉は近づくと独りでに開いた。

「ヴァイロン!セシルを返してもらおうか!」

「ライナルトよ、答えを聞かせろ!返すのはそれからだ!」


「人間は、互いを犠牲にして生きているかもしれない。でも人間には感情がある。気持ちがある。だから助けられたときには感謝して、今度は自分が力になろうとする。そうやって犠牲になり合って生きている。」


ヴァイロンは笑いだした。

「フハハハハハ、感謝か。ならば我ら吸血鬼も感謝さえすれば血を吸おうが悪いことなどしないだろう!」

「それは違う!」

ライナルトの強い声が城に響き渡った。

「感謝という問題じゃない!命を失うようなことをして感謝では済まされない!」

「ほう、ならばどうしろと?」

ライナルトはすぐに答えた。

「俺にも人の血が必要なのは分かってる。俺の腕のアザはもう、吸血鬼と化している。ならば血液と同じ成分の物を作りだせばいい。」

「それはいつになる?本当に血と同じなのか?証明できるというのか?」

ライナルトはそこまでは考えてはいなかった。

そして時は流れた。

ライナルトは答えを導き出せなかった。


「今の話、全て聞かせてもらった。ライナルト、おまえは本当にバカだ!」

クロードが突然城の中に入ってきた。

「血液についての答えが出せない?だったら医療を利用するまでだ!献血と偽り、人から血液を貰い、吸血鬼に提供する!もちろんタダでとは言わないがな、それでいいだろ!」

「なるほど。払う物を払えば血を貰えるわけか。いいだろう、こいつは返してやる!」

セシルが戻ってきた。

その瞬間、クロードは銃をヴァイロンに向けて撃った!

「クロード!」

「ライナルト、許せ。俺の両親はこいつに血を全て吸い尽くされて死んだ!」

クロードの目には怒りと憎悪に燃えている!

「貴様・・・何をする。」

「貴様の今の苦しみなど、俺の両親が受けた苦しみに比べたら足元にも及ばない!」

ライナルトはなぜ自分を国から追放したのかようやく理解できた。

そしてこの腕のアザが何なのかも。

この腕のアザはアザではない。

体の一部が吸血鬼になっていたんだ。

だから俺は食べ物の味が感じなかったんだ。

食べ物の味を感じないでただ触感だけ感じられて喉を通っていくだけ。

だから吸血鬼は血を吸うのかもしれない。

それが一番楽な栄養の摂取の仕方でもある。

吸血鬼は死んだ人が生まれ変わる欲望が強い者だけがなれる。

そして欲のためなら手段を択ばない。

この世界に再び命を蘇らせるには当然何かの代償があるはずだ。

吸血鬼の代償は味覚だったのかもしれない。

そして生きる欲望に満ちた吸血鬼は自分達で支配しようとしていた。

そして今、俺は吸血鬼になるかもしれない。

「クロード!ヴァイロンは俺が押さえる。俺ごと殺してくれ!」

ライナルトは死ぬ覚悟ができていた。

吸血鬼になって人を脅かすくらいなら死んだ方がいいと思った。

「ライナルト、本気で言ってるの?」

セシルの声。

「ああ、本気だ!」

ライナルトはヴァイロンの腕を押さえつけた。

「今だ!クロード!放て!」

「やめて!」

二人の声は同時に響いた。

クロードは何発も銃を撃った。

そして勢いが治まって息を切らしていた。

「そんな・・・嘘よ!」

クロードは膝をついて地面に拳を叩きつけている。

「あいつは・・吸血鬼になりかけてるくせに、なんで人間に協力した?」

「セシルが教えてくれたからさ。」

クロードは顔を上げた。

ライナルトの腕のアザは消えていた。

「クロード、ありがとう。おまえのお陰で人間に戻れたよ。」

セシルは走ってライナルトを抱きしめた。

「本当に、心配したんだから!」

「セシル、人間を助けたの間違いじゃなかった。」

セシルは涙を流していた。

そして二人は朝日に照らされた。

「吸血鬼の夜は明けたんだ。」

読んでいただき誠にありがとうございました。

吸血鬼の夜はこれにて完結いたしました。

他の短編などもチェックして頂ければ幸いです。

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