ライナルトの定め
短編第2弾
短編の方が長編より伸びる気がするのは俺だけだろうか
吸血鬼。
それは人間の血を吸い、世界を支配しようと企む悪魔として人々から虐げられてきた。
「これより、人間の世界を支配し、人間どもを家畜同然にする!」
「ヴァイロン様!あの時の少年はどうすれば?」
「放っておけ!とにかく有力者を殺し、王の座に就くのが我らの目的だ!」
そして、人々の命は脅かされていた。
深紅の月が昇り、人間界は吸血鬼に対する警戒をしていた。
大鍋に唐辛子やニンニクを放り込み、刺激臭を充満させる家。
国を守るために戦争の準備をする兵。
人間界はどこも混沌を極めていた。
そんな中、腕に大きなアザを持つ少年がいた。
その少年は昔、吸血鬼に噛まれ、体の一部が吸血鬼となっていた。
少年の名はライナルト。
吸血鬼と化した血の力を開放することによって強力な魔力を解き放つことができるようになる。
しかし、その能力に人々は恐れをなして国から追放されて、今はどこにも行くアテもなくさまよっていた。
「もうあれから7年か。俺が国を追放されてこんな生活したのも。」
ライナルトは一人でそう言いながら焼き魚に食らいつく。
「前より味が少し薄いような・・・まあそんなこと言ってられないや。」
空には満月が深紅の光を放っている。
「おまえがあのときの少年か。」
一人の吸血鬼が地に降り立った。
「何者だ?」
「俺は吸血鬼、だがおまえを殺そうとは思っていない。おまえが人間を殺すんだ!」
ライナルトは迷った。
人間は自分を追放し、人生を狂わされた。
だが、兵士が何人もいる国を相手にどうすればいいのか。
「もしかして力の解放のやり方がわからないのか?ならば人間に対する怒りを募れ!」
ライナルトは憎しみの記憶を心に強く映し出した。
「う、なんだ・・これ?うおおおおおおおおおお!」
ライナルトの体は翼が生え、牙が起ち、そして自我を失った。
そして国へと向かった。
今のライナルトには心が無い。
ただ人間への憎しみを抱き、復讐しようとするのみだった。
ガルナの国が見えて来た。
かつてライナルトを追放した、忌まわしき国だ。
大砲の音がライナルトの耳を突き抜けた。
しかし、何も反応しない。
ガルナの国の兵士を次々と殺す!
「こいつ!これでもくらえ!」
ライナルトは清めた水を少しかけられた。
だが一瞬で死の水とされる汚れた水へと変わった。
そして、国の建物を片っ端から崩し始めた。
兵士がすかさず銃を撃つ!
ライナルトが振り返り、目を紅く光らせた。
その紅い光を見てから瞬きする間もなくその前には血の池があった。
「この腐れきった国を全て破壊しつくす!それまで我の怒りは静まらん!」
ライナルトは脚を前に踏み出し、歩き出そうとした。
「もうやめて!」
その声を聴いてライナルトは自我を少し取り戻した。
「貴様・・死にたいのか?・・・。」
それと同時にかすかな声が聞こえてきた。
「助けて・・・セシル!」
セシルは確信した。
「ライナルト、あなたなんでしょ?」
「セシル!すまない!」
そのとき、周りに銃声が鳴り響いた!
ライナルトは倒れた。
「なんてことするの?」
「例え銀の弾丸でもこれほどの憎しみを持った者は一発では死なないだろう!」
「クロード・・・貴様!・・。」
セシルはライナルトをかばった。
そのことで兵士からは目を付けられていた。
「ライナルト、大丈夫?」
「ああ、セシルのお陰でなんとかな。」
銀の弾丸は魔除けであり、人間の状態では体に影響を及ぼすことはあまりない。
「ライナルトのために料理作ったんだ。」
机の上にたくさんの料理が運ばれてきた。
「え?俺のために?うん、ありがとう。」
ライナルトは料理を口にした。
しかし、ライナルトは首を傾げ、眉間にしわを寄せる。
「どうしたの?おいしくないの?」
ライナルトは慌てて首を横に振った。
「セシル、これすごくおいしいよ!料理上手なんだね!」
ライナルトは戸惑っていた。
セシルとは幼馴染でたまに料理を作ってライナルトに渡していた。
その料理はもちろんおいしかった。
だが今食べた料理はいつもと違った。
味が薄い、いや、薄いどころではない。
その味はないに等しかった。
ライナルトは食べ終わったらすぐに家を出てった。
「待って!」
セシルの声を聴いてライナルトは立ち止った。
「用事を思い出したんだ。ごめん。」
ライナルトはガルナの国を出ていった。
そしてまた前のような生活に戻った。
「セシル、俺はおまえを守る。」
そう決意を固めた。
そしてセシルの料理はなぜ味がなくなってしまったのか気になって魚を焼き始めた。
ライナルトは焼き魚を食べる。
「なんか味がない?なんだろう?やわらかい石を食べてるみたいだな。」
ライナルトは原因が自分にあると分かった。
だがなぜ味覚が感じなくなったのかはわからない。
そういえば7年前よりも感じなくはなっていた。
7年前、俺は吸血鬼に噛まれた。
本来は吸血鬼に噛まれた者は吸血鬼となる。
だが俺は吸血鬼にはなりたくなかった。
セシルと離れるのは嫌だった。
その強い意志が完全な吸血鬼にはしなかった。
そして腕には大きなアザができた。
だがその代わりに怒り、憎しみに震えるとき、ライナルトは吸血鬼へと姿を変えられるようになった。
当然危険な力だった。
そしてライナルトはもう一つ思い出したことがあった。
クロードだ。
クロードはかつて、少年だったライナルトを追放するという意見を出した人だった。
ライナルトはクロードを許すはずがない。
だがセシルは命に代えてでも守ろうという気持ちになった。
黒いとばりに包まれた空には深紅の月が昇っていた。
その月光を遮るように一瞬だけ黒い何かがガルナの国の方角へと飛んでいった。
今回も3話くらいになるかな?
一気に更新はしませんが・・・