31.
イ・シン王国、ナサ砦の攻略が完了した。
保護した多種族から話を聞いたところ、イ・シン王国内の奴隷は、対魔族戦のために全てナサ砦に集められていたらしい。
イ・シン王国は、ナサ砦に相当の期待をかけていたのだろう。
その割には、大した兵力ではなかったが。
ナサ砦を攻略した後は、情報が回る前に王都の一歩手前、ドナ伯爵領を攻略する事になった。
ドナ伯爵領は王都の隣の領と言うだけで、特徴も戦力もない領との事。
それならば、早々に全部隊で攻略してしまおうと言う話になった。
ちなみに私は、留守番を言い渡された。
王都攻略のために、休憩して欲しいかららしい。
特に疲れてはいないのだが、せっかくの好意なので、受け取る事にした。
なので今は、砦で留守番中。
奴隷がおらず、戦力も低いなら、しんぱいはいらないだろう。
念の為、想定外があった時のために、通信機を渡してある。
何かあれば、それで私に連絡が来るはずだ。
留守の間が暇になったので、保護した多種族と話をしながら、お茶をした。
皆、話しやすい良い子たちばかりだった。
すごく癒された。
と、それは置いておいて。
一つ気になる話が出た。
彼らがあちらの砦にいた頃、ある噂が回っていたそう。
聖騎士第十三席が、王都にやってくる。
そんな噂を聞いたとのこと。
何人もその噂を耳にしていると言うことから、おそらく本当なのだろう。
故意に流した噂でなければ、だが。
聖騎士第十三席。
名前は、ランチェスター・ロン。
特殊能力は雷。
雷は別名、神の怒り。
人間に雷を扱えるものはいない。
扱えるものは、神か神に連なる者だけ。
だから、確かに特殊能力なのだろう。
だが、私からしてみると、正直「それが何?」と言う気持ち。
地上の生物からしたら凄いものでも、私たちからすると、なんと言うかショボい。
その程度で威張らないでほしいと思う。
後は、騎士というからには、剣術や魔法が得意なのだろう。
その実力は、どの程度なのかって言うところか。
まあ、流石に聖騎士を魔族に相手にさせるのはリスクが高い。
なので久しぶりに、私が直接相手をしよう。
今までは裏方の作業が多かったから、少し楽しみでもある。
私の相手になるほど、強いと良いのだけど。
出来れば、楽しませてほしいところだ。




