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18.トラウト(前編)


 私にとっての恋愛は、見て(読んで)聞いて楽しむもの。自分には程遠い別の次元の話。


 小説や漫画で見るような、それこそ友人たちのお喋りで聞く経験談が知識として入ってくるだけで、自分を当事者として当てはめることも当てはめたいとも思わない。


 相談されても不満があるならその不満を本人に話してみたら?としか言えないし、愚痴ばかり聞かされていれば別れたら?としか言えない。

 そんな返答しかできないから恋愛相談なんてされる事はそれ以降なくなった。思うに、同調して欲しかったんだろうな。だからと言って経験も興味もない以上、私には同調することの方が難しい。


「で?律はその先輩のこと好きなの?あ、もちろん、恋愛的な意味で」

 だから花菜にそう聞かれても答えはいつもと変わらないのだけど。


「良い先輩だよ。私には勿体無いくらいの。恵やナギもそうだけど、こんな普通じゃない状況なのにびっくりするくらい恵まれてるなーってつくづく思うよ、ホント。……普通だったら好きになってもおかしくないんだろうね?」


 自分が一般的な恋愛観からズレているという事は日々の生活の中で気付くことはできた。友人たちの輪に混じってキャーキャーと恋バナに花を咲かせることができなかったから。自然、そう言った話の時は離れるか、聞き役に徹していた。


 知識としては恋愛がどのようなものなのか、どのような感情なのか知っているつもりだし、人の恋路は応援したくなるけど目線はいつも第三者で。見聞きした同じシュチュエーションに陥っても羞恥は覚えど残念ながら恋と思えるような感情は抱けなかった。


「…………そうね、普通だったらピンチの時に迎えに来てくれてそれ以降一緒に登下校してくれたり体調を心配してわざわざ弁当を作ってくれたりなんてされたら間違いなく惚れるし男からの手作り弁当ってなにそれ見てみたいんだけどちょっと写真ないの絶対写真撮ってきなさいよ次のネタはこれね!」

「ネタの使用料取るよ」

「冗談よ、半分」

 残り半分は本気なのか。……まぁいいけど。なんなら食べかけの写真はあるけど。そう言ったら無言の圧で写真を要求された。


「まぁ男子校に通ってる時点でネタだしね。私に害がないなら別にいいよ、ネタとして使ってくれて。……ついでに相談なんだけど、BL的に、何とも思ってない相手からの好意ってどうすればへし折れるかな?」

「は?なにそれもっとkwsk」

 あ、変なスイッチ入ってしまった。


 例の前川くんについて、第三者目線で花菜に意見を求めた。けれど、絶対的に経験も知識も乏しい私たちには異性の考えがわかるはずもなく。


「とりあえず放置しようって事になったの。告白されて返事求められたわけでもないし。物珍しかったんじゃないかな?先輩含めて恵やナギたちの中で私って浮いた存在に見えるらしいし。きっかけもそんな感じだったから、慣れれば興味無くすかもしれないかなって」

「もし告白されたら?」

「今の関係以上の興味は持てないしこの先も持つことはないかな」

 今の関係、イコール同級生であり部活仲間。

 そのカテゴリの中であれば友人と呼べる間柄だと思う。司馬くんや佐武くんと同じ。


「………じゃぁさ、仮に先輩に告白されたら?」

「無いでしょ?」

「仮に、よ。前川って子よりは仲良いんだし、ほぼ毎日会ってるわけでしょ。そんな先輩から、もし、告白されたら律はなんて返事返すの?」

「………そりゃもちろん、ことわるけど」

「断ったら、今までの関係が崩れても問題ない?」

「………」

 関係が崩れる?なんで?……そんなこと、考えた事ない。


 恋愛は、見て(読んで)聞いて楽しむもの。自分には程遠い別の次元の話。

 そもそも理人先輩が私を対象として見ることなんて無いだろうし。でも。

 理人先輩に告白されたら?………断るだろう。

 断ったら、今までの関係は続く?………続かなくなるの?

 仲のいい先輩。頼りになる先輩。それ以上でも以下でもない。

 月曜になれば当たり前のように一緒に登校できる存在。放課後部活で会って、一緒に帰る存在。

「………続かなくなるの?」

「………もしもの話だしね、もしそうなった時は直ぐに答えを出さずにあたしに相談しなさいよ。関係が崩れるのが困るくらいには先輩のこと大事なんでしょ?」

「………うん」


(前川くんと対応が違う事に気づいてるのかしら)

 前川くんにはキッパリ断ると断言してその後の関係性も気にしていないのに。

 そもそもその時点で先輩が特別な存在に位置付けられている事に、果たして律は気付いているのか。


「難儀な性格よね、律は……」

 知り合う以前の律の過去を、花菜は知っている。

 自他共に好意などにはすごく鈍感なのに、負の感情に対しては鋭いのだ。鋭いというより敏感なのだろう。

 その敏感さを少しでも前者に回せれば先輩に対する自分の感情に気付けるだろうに、そうできないのはトラウマのせいだろう。


「気付いた時にはこうだったから、私は別にそうは思わないけど」

「自分がかなり鈍感だってことは知っておいた方がいいわよ。そしてこれからは逐一あたしに相談しなさい。あんたよりはマシな判断ができると思うから。それからネタの提供もね。あ、ネタと言えばあたし前に痴漢に遭ったことがあるんだけど。あればマジでヤバいわね。気持ち悪かったわ」

「……は?」

 初耳なんですけど?


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