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プロローグ

 科学技術の発展が進み、一昔前までは空想の産物であったヴァーチャルリアリティを利用したオンラインゲームが初めて発表された。

 ゲームの歴史を大きく変えるそれを開発したのはロンバルディア・コーポレーションという無名の企業であった。


 会見で会長であるポール・ゴードン氏はこう語る。

「我々が目指したものは現実と同じ、いやそれ以上のものである。プレイヤーの皆様には大いに楽しんでいただきたい」


 デモ画面には現実世界と見紛うほどの映像が流れてはいるが、グラフィックだけなら他のゲームも大して変わらない。

 だが、そこには自然の息吹や鼓動、温度や匂いなど、もう一つの世界に入り込んだようだったと体験した業界関係者が語ったことにより多くの人間が期待に胸を膨らませた。


 そして月日は経ち、一部のプレイヤーを対象にしたテストが行われる日がやってくる。

 国別にサーバーが立ち上げられ、日本でも1500人規模のプレイヤー募集が行われた。

 数十倍とも数百倍とも言われた競争に見事勝利したプレイヤーたちの中に、17歳になったばかりの少年が入っていた。



 


 日本で一番幸運な高校生は誰か、という問われれば、ある分野に興味がある人ならば多々良圭介と答えるだろう。

 

 中肉中背、得意なスポーツは無し、苦手なスポーツも無し。容姿は3日見なければ輪郭からぼやけてしまうほどの平凡の神に愛された少年。

 学業も高校内では真ん中から少し下といった、目立たず、数人の気が合う友人とだけ会話をする少々内気な少年である。


 そんな彼が世界初のVRMMORPG「Another World」のテストプレイヤーに選ばれたことがマスコミで取り上げられた。

 放送の次の日から知らない生徒から声をかけられたり、プレイを替わるよう軽めの脅迫をされたりと彼の環境は急変した。

 その辺りもロンバルディアは考えていたようで、テスト機が届いたらすぐ個人認証を行うように、と電話で伝えてきてあった為に問題になることはなかった。


 

 また、夏季休暇に入ったこともあって、多々良はなんとか学校生活からの脱出に成功したのである。


 


 

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