二人の魔法使い
「本当、よく飽きない物だ。」
とある森の魔道具屋に、一人の魔法使いがいた。彼女の名前はインシャ・エーシア。黄色いローブに身を包み、黒い髪のせいか、黄色い瞳が一際目立つ。
インシャはあいも変わらず好物のクリームが大量にかかった糖分の暴力のようなドーナツを食べていた。
「だってそりゃあそうだろ?甘い物は魔力の基本だぜ?」
「だからと言っても、追いクリームをやり過ぎだ。店員さんがドン引きしていたよ。」
「好きな物を好きな様に食べて、何が悪いんだ?」
「それもそうだね。」
「それより、お前もそんな物よく飽きないな。」
インシャと話している白髪の男性はヒビキ・セアック。この魔道具屋の店主で、眼鏡をかけているが、これは副業である研究の影響である。
現代、ヒビキは発掘された魔法のメダルを専用の装置で解析し、どんな魔法か調べている。
「どんな魔法か調べるって言ったって、マジックメダルには柄があるだろ?」
「柄があるのは元々じゃないよ。古代の人は適当だからね。いちいちどれがどれか区別なんてしてないさ。それを区別して分かりやすくするために、マジックメダルを解析して柄を入れるのがこの職業。インシャもやってみる?結構な暇つぶしになるよ?」
「いや、私は職業じゃなくてその作ってるメダルが気になる。」
そんな話をしていると、装置に入れたメダルが光った。
「ヒャッホイ!どんな魔法だ?これは一体どんな魔法なんだい?」
人が変わったかのように喜ぶヒビキは、完成したメダルをスキャナーに入れた。
瞬間、メダルから突風が巻き起こり、散らばっていた本を全て本棚にしまった。
「部屋を片付けるメダルか!こいつは有難い!そうだな、クリーン……なんていいだろう。」
確認が終わったヒビキはメダルに掃除の柄を入れた。
「こういう瞬間にはワクワクするけど……過程が長くて退屈だな。」
「ならどこかに出かけて来るかい?この作業を後これくらいやらなきゃいけないから。」
ヒビキが棚を開けると、溜まっていた無柄のメダルが大量に出てきた。
「じゃあ、お言葉に甘えて。後、今度からその大量のメダル、クリーンに片付けて貰えよ!」
インシャはそう言うと、玄関にかかっていた箒と傘を合体させ、それに跨り空を飛んだ。
「いやー、簡単でしたね!本国に帰国するのが楽しみです!それにこの子を早く解き放ってあげたいですし。さっさと本国に行きましょう!」
そういう彼女はリーニン・フィアスター。
赤いローブに黒い髪を携えた、小柄な魔法使いである。先ほど、別国の遺跡で見つけた大量のメダルを本国に持ち帰っている途中である。
彼女が持つメダルには、牛の怪物の絵が掘られていた。
「それよりも、とっとと帰りましょう!」
リーニンが操縦するマシーンに取り付けられたスキャナーに、マジックメダルを入れた。
『ブースト!』
魔法陣が瞬く間に生み出され、マシーンのブースターが加速した。
「白いドーナツスクイーズ、完売となります!」
「よっしゃ!ラスト一個!これクリームドーナツに似てるから欲しかったけど、ストア限定は勘弁してくれよ………」
インシャがスクイーズを鞄に入れ、次の店へ向かった。
「おや?あそこなんて良いですね。」
同じ店の前に、リーニンも来ていた。
「ここは……立地よし、雰囲気よし、風景よし。まさに絶好の物件です!」
噴水が中央にある広場に決めたようだ。
リーニンはメダルを杖の先端のスキャナーに入れた。そこから複数の魔法陣が展開され、一際大きい陰が出てきた。
「偉大なる猛牛の武闘家よ!出てきてください!」
『ミノタウロス!』
魔法陣から巨大な魔獣が現れた!
「何だあれ?魔法か?」
広場に現れた巨大な魔獣のもとへ、インシャが駆け出した。
「さぁ、暴れなさい!ミノタウロス!貴方にはその権利があります!」
「お前が黒幕か!ちっちゃいの!」
ちっちゃいのと呼ばれ、リーニンの堪忍袋の緒が切れた。
「誰がちっちゃいんですか!誰が!私にはリーニン・フィアスターと言う名前があるんですよ!おや、貴方も魔法使いですか。」
「魔法使いだ!私の名前はインシャ・エーシア!覚えておけ!」
「丁度いいですね!なら私のミノタウロスの実験に付き合ってください!」
ミノタウロスが両手の大剣を勢いよく振った。
「危ねぇ!」
『ガード!』
インシャは手持ちのメダルを使い、大剣を現れた盾で防御した。
「魔法使い同士のバトルは楽しいですよ!次から次に新しい発見ができて!」
「なら、こんなのも見せてやる!」
インシャはメダルをスキャナーに入れ、スキャナーを傘に接続した。
「喰らえ!スパーク!」
傘の先端から、激しい電撃が放たれ、ミノタウロスはたまらずバランスを崩し、右の剣が倒れた拍子にミノタウロスの左腕を奪った。
「何ですとー!?私のミノタウロスの片腕を!こうもあっさり!!??何てやってる場合じゃないですね。」
リーニンが「ヒール」のメダルを使い、ミノタウロスを起こす。
「さぁ、やっちゃってください!」
「おいおい、コレ以上やると、お前の大事なミノタウロスが綺麗に焼き肉になっちゃうぜ?」
「焼き肉にされる前にひき肉にするだけですよ!」
インシャはその返事を聞くと、傘の持ちての部分を外し、その棒に箒を差し込んだ。
「よく覚えておきな、リー何とか!これが私の代名詞にしてアイデンティティ!必殺『シャイニングレーザー』!!!!」
先端から放たれた巨大な閃光が、ミノタウロスの腹部を貫き、ミノタウロスの巨体が地面に屈した。
貫通したレーザーは、リーニンに直撃して吹っ飛ばした。
「えー?なんですかあの極太レーザー。まぁ、今回は惜しかったですけど、また今度がありますよ!ミノタウロスも頑張りま………」
ミノタウロスが死んだことで、メダルがリーニンの目の前で割れた。
「畜生!よくも私のミノタウロスをやってくれましたね!おのれインシャ!いつかボコボコにしばき倒してやりますよ!!!」
そう吐き捨てると、リーニンは空の彼方まで吹っ飛んで行った。
「よっすー、解析は終わったかー?ってなんじゃこりゃ!?」
さっきまでの大量のメダルが、大体2倍ぐらいに増えていた。
「や……やぁ、インシャか。丁度いい所に。実は2個目に解析したのがよりにもよってコピーで。試したらこの大量のメダルを2倍にしたんだ!頼むよ!どっかにあるクリーンを探してくれ!クリームドーナツでも何でもあげるから!」
「今日は厄日か?」
二人はクリーンのメダルを探すのに3時間かかった。
「ミノタウロスが消えた?」
一人の怪物が3人の怪物に報告した。
「どうするの?エラァー?僕たちに今更敵対する人?」
緑の怪物が赤い怪物に問う。
「落ち着け、ミノタウロスは誰かに使役されてたんだ。そいつを殺して、全員解放すれば良いだけだ。」
赤い怪物が気軽に言う。
「私たちの仲間を使役するなんて……あんな魔力量のくせによくそんな事ができるわね。」
青い怪物が口を挟んだ。
「とりあえず、暫くは泳がせて置くか。あいつが暴れてくれば俺達の復権も近いからな!」
怪物たちの不敵な笑いが共鳴した。
何か仮面ライダーの1話みたいになった……。
ともかく、そんな感じのお話です。
インシャとリーニン……色々ありそうなこの二人ですが、どうぞ応援よろしくお願いします!
リーニンちゃんの命が不味いぞ!?




