前編
昔々のお話です。
おじいさんが、かぶのたねをまきました。
「あまい、あまい、かぶになれ。大きな大きなかぶになれ」
やがて、あまいあまい、大きな、大きな…大きな、大きな……。
大きい…ちょっ、えっ。どういうこと?
どこまで育つの? いやいや、流石にそれは…。これを現実って受け止めるにはちょっと大きすぎる……。
おじいさんの家くらい大きな大きな、かぶが育ちました。
おじいさんは腰を抜かしました。これまでも、かぶや他の野菜も育てたことがありますが、自分の身長をゆうに超える野菜は見たことがありません。ましてや、家を超えるなんて。
おじいさんは、かぶを抜こうとしました。葉の部分なんて持てっこありませんので、正直、どこを持てばいいか分かりません。とりあえず、地面から出ている白い部分を掴みました。
「うんとこしょ、どっこいしょ」
もちろん、かぶは抜けません。
おじいさんは、おばあさんと孫娘と犬と猫とねずみを呼んできました。一人ずつ呼んではらちがあきません。
おじいさんがかぶを引っ張って、おばあさんがおじいさんを引っ張って、孫娘がおばあさんを引っ張って、犬が孫娘を引っ張って、猫が犬を引っ張って、ねずみが犬を引っ張って。
「うんとこしょ、どっこいしょ」
けれども、かぶは抜けません。
おじいさんは、村の力自慢達を連れてきました。巨大にそびえ立つかぶを見た力自慢達は「これだけあれば、村の食料は底知らずだ」と言って、躍起になりました。
力自慢達がおじいさん達を引っ張って。
「うんとこしょ、どっこいしょ」
なかなか、かぶは抜けません。
力自慢達は村の教会にいる司祭達を呼んできました。司祭達は不動のかぶを見て「なんと神々しいかぶであるか」と畏敬の念をかぶに捧げました。
力自慢達はおじいさん達を引っ張って、司祭達は力自慢達を引っ張って、
「うんとこしょ、どっこいしょ」
やっぱり、かぶは抜けません。
司祭達は村の若者達を呼んできました。若者達は突然現れた大きすぎるかぶを見て「こんなかぶは見たことがない! もっと色んな野菜を見てみたい気がするよ」と物ふけっていました。
力自慢達がおじいさん達を引っ張って、司祭達が力自慢達を引っ張って、若者達が司祭達を引っ張って。
よもや、その列は百人以上になりました。
「うんとこしょ、どっこいしょ」
とうとう、かぶは、抜けませんでした。
続きます。次の章も書き終わりましたら、投稿します。その時も読んでいただけると幸いです。




