93.兄が見ている世界 —期末試験③—
わたしは、
『それで、どんな匂いがした?』
と聞いてみた。
兄が真面目な顔で、
『メインはファ〇リーズ、その中に石鹸、奥底に……』
と答え始めたので、わたしは慌てて、
『ごめん! やっぱその質問なし!』
と言った。
兄は少し残念そうな顔をした後、
『記憶の続き、いい?』
と聞いてきた。
わたしは、
『どーぞ、どーぞ。』
と答えた。
ありさが、
『あっ、バス来たよ!
早く、まりちゃん離れて。』
と言った。
すると、まり姉が呆れたように、
『ありちゃん、私に離れてって言うのおかしくない?
言うなら、あっくんにだよね?』
と言う。
ありさは、
『あ、ごめんね!
まだ起きてすぐだから、ボーっとしてて言い間違えただけ!』
と慌てて弁解した。
まり姉はクスッと笑う。
『ありちゃんは、あっくんと違って、ちゃーんとテスト勉強してるからねー。』
すると、ありさが不満そうに口を尖らせた。
『あー、まりちゃん酷い。
私がこの中で一番成績悪いからって〜。』
兄も負けじと反論する。
『俺も今回はかなり頑張ったしー。
家庭科だけだけど……。』
まり姉は二人の反論に対し、
『あーはいはい。
あっくんも、ありちゃんも、よく頑張りましたー。』
と、子供を褒めるような口調で言った。
わー、まり姉。
朝から大変だねー。
と、わたしは思った。
3人はバスへ乗り込む。
すると、ありさが、
『次は私!』
と言って、兄に向かって自分の太ももを優しく叩いた。
さらに兄の腕を軽く引っ張り、自分の太ももの上へ頭を乗せる。
ありさは満足そうに微笑んでいた。
まり姉は、
しょうがないなー。
そんな顔をしている。
やっぱり、まり姉は大人だなー。
そう思っていた。
だが、わたしは見てしまった。
兄の手を握ってる……
しかも、恋人繋ぎ……
そして、その状態は他の乗客が乗って来るまで続いた。
当然、手は繋いだままだ。
学校に到着し、朝のHRで担任が話し始める。
『内定が出てる奴は、この試験が終わったら自動車学校へ行っていいからなー。
赤点なんて取らずに、さっさと終わらせろよー。』
兄は真剣だ。
なぜなら、まり姉に負けたくないから。
そして、期末試験1日目が終わった。
帰りのHR。
担任がプリントを片手に言う。
『家庭科の調理実習、どの日がいいか適当に決めといたから、それぞれ受けるように!
最初のグループは、今日の11時半スタートだ。
家庭科の先生が、毎年同じ内容は飽きたから、その日の気分で決めるそうだ!』
そして、まり姉、ありさ、兄の方を見て、
『仲良し3人組は、最初のグループに纏めておいたから。』
と言い残し、職員室へ戻って行った。
兄の顔から血の気が引く。
あれ?
なんで、そんな顔してるの?
わたしは首を傾げた。
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