91.兄が見ている世界 —期末試験①—
兄は悩んだ後、閃いたような顔をした。
『後は……
あ、そんな事より俺の記憶でも見る?』
誤魔化したー。
わたしはそう思ったが、教えて貰えないならそれでいいやという気持ちになり、
『それじゃ、お願いします。』
と頷いた。
わたしの意識は、兄の中に入っていく。
わたしは兄へ、
『ねー、流石にあっくんの中に入った時の、わたしの状態どうにかならない?
乙女として終わってるんですけど。』
と抗議した。
相変わらず、わたしの本体は焦点の合っていない目で、うわ言を言っている。
『誰にも見られてないんだから良くない?』
と兄は軽く返すが、わたしは納得できない。
『まきの例があるだろ!
気持ちよく寝てただけで、ああなるんだぞ。
しかも、わたしはまきより年上のレディなの!』
兄は驚いたような声で、
『アーユーレディー?』
と問い返してきた。
『どういう意味!?』
わたしは兄へ食って掛かる。
兄は、
『ごめんね。偏差値低いから、難しい事わかんないんだよ』
と、全く反省の色を見せずに謝った。
わたしはため息をつき、
『わかんないなら使うな!』
とツッコむ。
すると唐突に兄が、
『さっきの質問の続きだけど、デメリットは守ってもらってるけど、ずっと見張られてる事。
もし不適切な行動をすると、明らかに評価が下がる。
評価が下がるとお願い事を聞いて貰えなくなる。
最悪、危害を加えられる。
こいつは不適格だから別のを据えろと言わんばかりに攻撃されるんだ。』
と説明した。
『え?』
思わず声が漏れる。
兄は構わず話を続けた。
『当主になると、人数も増えるし、評価も厳しくなる。』
『どちらの場合もだけど、言動すべてに注意して、困っている人がいたら手を貸す。
嫌がらせなんてもってのほか。
こちらに悪意のある者以外の悪口とかダメだからね。
相手の裏をかくのはいいけど、すぐバレるような嘘もダメだから。』
わたしは混乱した。
『え?……え?』
そして、以前から引っ掛かっていた事を口にする。
『前に同級生の川田に何かやってたじゃん。』
兄は肩を竦めた。
『俺からは何もしてない。
そうなるために、自分の意思で向かってきただけだろ。』
『夏休みで気が滅入ってた俺を、スッキリさせるために頑張ってくれてるバカだから。』
その言葉を聞いて、わたしはようやく理解した。
だからあの場で川田の悪口を言わなかったのか。
そして、ありさやまきだけじゃない。
兄は、誰に対しても同じように接していた。
ようやく、その理由が少しだけわかった気がした。
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