90.わたしの入院生活⑩
兄の影響だろうか。
最近、自分でも嫌になるくらい捻くれた考え方をするようになってきた。
兄が、
『それじゃ、俺が知ってる話をしようかねー。』
と、やれやれという気持ちを隠すことなく言った。
わたしが頷いたことを確認すると、兄は話し始める。
『次期当主は、その名の通り、今の当主が亡くなった後に継ぐ者なので、それに相応しい行動が求められる。
まず、すべき事は、あいちゃんも知っての通り、
分家の方々に対して、朝夕のお務め、すれ違った際の挨拶、不満に思われている事や問題があった際の解決に努めること。
そして、離れの箱の維持だね。
メリットとしては、
2名付き添ってくれる分家の方々が付く。
その方々が、ある程度は自分自身に降りかかる災いや問題を取り除いてくれる。
それと、自分自身に何か異変や問題が起こりそうな時は、鳥とか虫とか、何かを利用して連絡が来る。
デメリットとしては……』
兄が言葉を止めた。
『ないよ。』
なんだ?
兄が言葉を濁した。
間違えてても、一切責任を負わないって言ってたのはこれ?
わたしはそう思った。
兄は気にせず話を続ける。
『次は当主。
じいちゃんが亡くなり次第、あいちゃんが繰り上がるポジションだね。
基本的には次期当主と同じ。
ただし、それ以上に相応しい行動が求められる。
維持する箱も、離れじゃなくて母屋の箱になる。
メリットとしては、
最低でも4名付き添ってくれる分家の方々が付く。
分家の方々に指示を出す事が出来る。
その方々が、ある程度は自分自身に降りかかる災いや問題を取り除いてくれる。
それと、自身が望む人物に何か異変や問題が起こりそうな時は、事前に鳥とか虫とか、何かを利用して連絡が来る。
少し先の未来が分かる……くらいかな。』
兄はため息をついた。
そして、
『デメリットは、ないよ。』
と言った。
その瞬間、兄はわずかに視線を逸らした。
これ絶対、デメリットあるじゃん!
あっくん、こんな分かりやすかったっけ?
あるけど言えない?
だから、わたしに気付かせようとしてる?
どうやったら教えてもらえるの?
わたしは、ふとした疑問を口にした。
『もし、その箱を盗まれたりしたらどうなるの?』
兄は一瞬だけ遠くを見るような目をした。
『盗んでくれたら、どんなに……』
そう言いかけて、口を閉じる。
そして、何事もなかったように、
『盗まれないように分家の方々もいるから、なんの問題もないと思ってるよ。』
と答えた。
わたしは、
『今まで大丈夫だったから、これからも大丈夫ってこと?』
と聞いた。
兄は困ったように笑い、
『そういうことにしててくれないかな?』
と答えた。
続けて、
『以上だけど、何かあるかな?』
と聞かれる。
わたしは少し考えてから、
『追加の情報は、どこなら聞けるの?』
と尋ねた。
すると兄は、
『内容次第だけど、俺の部屋かな?』
と答えた。
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