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66.兄が見ている世界 —料理対決⑦—

次の日の放課後、兄が校門前で待っていると、まきがやってきた。

『先輩。お待たせしました。』

軽く息を切らしている。


兄は、

『慌てる必要は無いから、ゆっくりで大丈夫だよ。』

と答えた後、

『昨日は協力してくれてありがとう。結果的に負担をかけてしまったね。配慮が足りなかったと思う。』

と言った。


まきは、

『私の方こそ、失礼しました。』

と答えた。


『今から行って大丈夫なのかな?』

と兄が聞くと、


『はい。』

と、まきは笑顔で答えた。


まきの家に入ると、みきも居た。

まきは少し眉間にしわを寄せる。


みきが、

『あー、おにーさん来たー。』

『姉ちゃんが昨日は凄かったみたいだねー。』

とニヤリと笑う。

そして、

『鼻からパスタ……』

と呟き、クスッと笑った。


まきを見ると、怒りと羞恥で顔が真っ赤だ。


すると兄が少し困った顔をして、

『昨日は俺が悪かったんだよ。』

と、みきへ言った。


すると、まき母が、

『昨日は、まきがごめんね。』

と言う。


兄は首を横に振った。

『いえ。まきさんは頑張り屋さんですから。』

『無理をしてしまう事を知っていたのに、俺の確認が足りませんでした。』

『次からは、しっかり確認を取って無理をさせないようにします。』


まき母は、

特に言う事は無い。

そんな顔をした。

『これからも、まきをお願いね。』

そう言うと退室していった。


兄は真面目な表情になる。

『さあ、勉強を始めよう。』

まき・みき姉妹は、兄の声のトーンが変わった事にゾクッとした。


兄は笑顔で言う。

『大丈夫!』

『筆記試験の勉強は、無理しても直接の原因で死ぬ事は無いって聞いたから。』

『死ぬほど勉強しても死なないなら安心だね。』


まき・みき姉妹は震えている。

姉妹に兄が勉強を教え始める。


まきは危険物試験。

みきは高校受験の勉強だ。


兄は、まきへ言う。

『まきちゃん、ここ今回も間違えてる。』

『この問題は、何を聞かれているか理解して答えてるかな?』

『どういう捉え方で回答したのか教えてほしい。』


まきが説明すると、


兄は頷いた。

『なるほど。この捉え方だと、その回答になっちゃうね。』

『今回この問題は――』

兄は丁寧に解説を始めた。

説明が終わると、


『まきちゃんは必要な知識はちゃんと身についている。』

『だから自信を持って、落ち着いて答えれば満点で合格できるよ。』

と言った。


次に、みきへ向き直る。

『みきちゃん。』

『ここから、ここまで全部間違ってる。』


みきの顔が固まった。


『まずは基礎からだね。』

『中学英語は、決まった文法に決まった状態の単語を入れるだけ。』

『明日また来るから、ここからここまでの単語を覚えておいて。』

『文法は――』


みきは泣きそうな目で、まきへ助けを求める。


しかし、まきは自分の勉強で必死だ。


『大丈夫。』

『みきちゃんも、確実にこなせば次の試験ではクラスでもトップレベルになれるから。』

兄は当然のように言った。


兄の本気の教育……本当に怖い……

兄は合格ラインギリギリや平均点ではなく、

満点合格やトップレベルを要求している。

そして兄は明言している。


この姉妹が逃げ出さない限り、その状態まで仕上げると。

こんな教育が木曜日まで続いた。


そして月曜日までの宿題が、みきの机の上に積み上がっていく。


みきは、まきへ顔を向ける。


しかし、まきは目を合わせたくないのか、思いっきり顔を逸らした。


そして金曜日の放課後。


まきは兄と共に、お泊まりの準備を取りに自宅へ戻った。


家を出ようとした時、

まきの母が、綺麗にラッピングされた包みをまきへ手渡す。


そして二人は家を後にした。

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