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Chaos〈カオス〉 〜こんなバグった世界だが、俺は意地でも平穏に暮らしたい〜  作者: 身勝手な鶏
3章:堅牢なる次元の境界は薄れ、混乱は尚も加速する
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バイオハザード編Ⅵ 信用0の友人と悪魔的対価

時間軸本編に戻ります。

『ピーンポーン!』


刻を撒いてから数分後、俺は隊員(ハンター)から避難するために(こん)のマンションに来ていた。

どんな見返りを求められるか分からないが、背に腹は変えられない。


『はーい。…麻?どうしたのそれ?』

インターホンを介して俺の顔を見たのだろう。

(こん)は驚くでも憐れむでもなく、面白いものを見るような声でそう言った。


「お、よく分かったな。こんななりだがお前の腐れ縁の麻義さんだよ。ちょっと追われててさ、匿ってくんね?」

「へぇ、また面白…厄介…面白いこといことになってるね。まぁいいよ。入りな」

少しは遠慮するか迷ったようだが、結局しないほうを選んだようだ。

「ちょっとは本音を隠す努力をしろよな」

そう文句を言いつつ、俺はマンションに入って行った。




「いらっしゃい。狭いけど適当にくつろいでいいよ」

こんは毎度そう言うが、こいつのマンションは4LDKの結構いいとこだ。

皮肉か?金持ちの皮肉なのか?


「…まぁそうさせてもらうわ。てか、よく今の俺をすんなり入れたな。普通もっと警戒するもんだと思うんだけど」

そう言いながら俺は勝手に冷蔵庫から缶ジュースを取り出し、ソファーに腰掛けた。

「それ1本150円ね。じゃあ僕は麻を見た時に騒いだり叫んだりすればよかったのかい?」

俺を見てこんもジュースを取ってきて、俺の向かいの地べたにあぐらをかいた。

「お客様に金とんなよ。お前が騒いだりするキャラじゃないってのは知ってるけどさ、人間として少しは動揺しろよ」

しかし、こいつとはそれなりに長い付き合いになるが、今まで騒いだりしているところを見たことがない。

というか、こいつが自分のペースを崩されたことが未だかつてあっただろうか。


「まぁ麻がどうなっていようと、多分僕はノーダメで済むからね。それで?今日はまたなんでそんな面白い姿になっているんだい?まぁある程度察しは着くけどさ」

とうとう本音を隠そうともしなくなった外道は、そう言ってジュースを口に流した。


「こっちは全然面白くねぇよ。まぁ話せばそこそこ長くなるんだが…」

そこから俺は事の顛末を話し初めた。


〜A few minutes later〜


「へぇー。また平穏とは程遠い生活を送ってるね」

相変わらずこの外道は、人も不幸話をケタケタ笑いながら聞いている。

いやまぁ分かっていたことだけれども。


「…ということで、今日から3日泊めてくれ!」

俺は今に向かい、土下座で頼み込んだ。

プライド?

そんなもんで衣食住が手に入るかよ。


「いや、そんな土下座までしなくても」

「中途半端に下手に出たら焦らされそうだからな。いっそ最高に仕立てに出ればいいって言う作戦だ」

「僕をなんだと思ってるの」

ボランティア精神とか優しさとか情とかをどっかに置いてきた、人間のクズだと思ってる。

というのは、このタイミングでで言えるわけない。


「まぁいいよ別に。といっても、対価次第だけどね」

俺あってたじゃん。

ないじゃんボランティア精神。

知ってたよ畜生め。


「チッ。この外道が。んで何が欲しい」

ここで文句言っても俺は路頭に迷うし、大人しく従おう。


「うーん。お金は今困ってないし、欲しい物とかもないからなー」

「喧嘩売ってんのか?」

そうですか。職業不定のくせに欲しいもんは揃ってますか。

皮肉だろほんと。これだから理不尽な天才は。


「…じゃあさ、今度ご飯作ってよ。麻は料理やたら上手いから、十分な対価だと思うよ。それで満足かい?」

俺の言葉は完全に無視して、今が言った。

まぁ欲しいもんが揃ってるならそうなるわな。


「飯ね。何を?」

まぁあねきに鍛えられたので料理は結構得意な方だ。

それが対価になるなら安いもんだ。


「アスピドケロンの天ぷら」


安いもん…だ。


「あ、材料からとってきてね?」


安…い…

………。


こんは迷わずにそう言った。

ちょっと何言ってるか分からない。


「…は?お前とうとうイカれたか?アスピドケロンって、魚だからランクは低いものの、馬鹿みたいにデカくて防御力が高くてかつ超レアな魔物じゃねぇか」

「そうだよ?一般販売はされてないけど、年間1~2匹くらいは討伐されてるから、多分麻もいけるよ。白身魚らしいし、多分美味しいと思うんだよね」

海辺の街の討伐者が10数人単位で狩ってる奴をソロで狩れってか?

無茶言うな?


「じゃあお前が狩ってこいよ。そっちの方が確実だろ」

「え、いやだよ面倒くさい。何日かかると思ってんの」

こいつ…。


「あ、もちろん期限は指定しないから、いつか食べさせてくれればいいよ」

「…いやだと言ったら?」

「貸しを返してもらうまで利子が増えていくことになるね」

「バカたれ」

貸し借りがどうとか気にするボランティア精神のないクズはたまにいるが、そこに利子まで入れてくるクズはこいつくらいだろう。


もちろんそんなものは払いたくはないが、それかアスピドケロンの二択か。

悪い意味で究極の二択だな。


「さぁ、どうする?」

俺がなんと答えるのか、(こん)は分かっているのだろう。

このクズはニヤニヤしながらこちらを見ている。

「…あぁクッソしゃあねぇ!いいよもう、アスピドケロンで!その代わり寝食は保障しろよ⁈」

「もちろん。それじゃあ毎度ありー」


こいつ、鯖かなんかに当たって食中毒で悶え苦しめばいい。




「それじゃ、いつまでも話すことも別にないし、MY(マイ)-CRA(クラ)でもやるかい?」

ここまでの理不尽な商談が無かったかのように、(こん)はコントローラーを取ってきて俺に差し出した。

調子いいなこいつほんと。

「全く、切り替え早ぇよ」


しかし俺も今も積極的に会話する方でもないので、暇つぶしにと俺はコントローラーを受け取った。



「お、初期リスアカシアはいいんじゃね?んじゃ俺は木こりして仮拠点建てとくから、お前は食料狩り行け。プルファは石集めな」

「分かった。畑用に種も集めとくね」

「キュイ!」


最近このゲームはあまりプレイしていなかったが、定石は覚えている。

普通にプレイするならまぁ余裕だろう。


「縛りとかある?」

無心で木を切りながら今に尋ねた。

「いや?でもmod入れたからそれなりにきついと思うよ」

modか。

こいつが選び抜いたやつならさぞ鬼畜なやつなんだろうな。

「なら余裕とはいかないか。目標は?」

「4大ボス討伐」

「キツすぎんだろ」

「そう?3日もあるんだし、余裕じゃないかな」

人間卒業してる廃人ゲーマーはそう言った。

俺みたいな一般ピープルをお前と一緒にすんなよ。


「というか、当たり前みたいにやらせてるけど、プルちゃんもゲームできるんだね」

牛や豚を確殺しながら今が言った。

「キュイ!」

それに対してプルファは尻尾を挙げて返事する。

目線こそ今に向けているが、体は両前足を器用に使って画面を操作し続けている。


「こいつ知能は高いからな。両前足使えば親指のスマホゲーは割とできるんだよ。psもなかなかに高ぇんだぞ?」

「それは見ていればわかるよ。さっきから洞窟で鉱石掘ってるけど、まだノーデスじゃないか」

「それな。俺もう2デスしてんのに」

と言ってる最中に、俺は崖から落ちて三度目の死を遂げた。

「麻は死にすぎだと思う」

「いいだろ別に。アイテムは命より重いんだよ」

「そうそう。ゲーム内って倫理観終わるんだよねー」


と、そんな感じで他愛のないことを話しながら、俺たちは着々とゲームを進めていった。


つか、俺はともかく、周りはゾンビまみれなのに普通にゲームできるこいつはマジでイカれていると思う。

いや、この男は完全に常軌を逸しているというべきか。


「そういえば、今日麻たちどうやって来たんだい?電車とかは止まってるし、ほうきは壊れてるんだろう?歩き?あ、村発見」

そう言いながら今は流れるようにチェストを物色していった。

「村ナイスー。外あんななのに歩きは無理だろ。ほうきは今朝治ったらしくて、真凛が持ってきたんだよ」

「へー。その様子だと普通に治ったみたいだね。良かったじゃん、すごいスピードに魔改造されてたりしなくて」

「マジそれな」

正直それが一番怖かったのだが、今のところ俺のほうきは問題なく動いている。

でもあの真っ二つになってたやつ1週間もかからずに治すって、結構すごいな。

ひと段落ついたらちゃんとお礼しよう。


「キュウイ」

と、そんなことを考えていると、プルファが物言いたげに鳴いた。

その前足で指す先はインベントリのウィンドウで、中には大量の石の他、石炭や鉄、そして少量だがダイヤが入っていた。

「あ、プルちゃんダイヤゲットしてるじゃん。ナイスだよ」


そう言って(こん)はプルファに親指を立てた。

さっきも言ってたけどプルちゃんて。

こいつが隊の女子どもしか使わない呼び方使うの違和感がすごいな。


…ん?


「なぁ、そういや俺ほうき壊れたって言ったっけ?」

ほうきが壊れて5日程だが、その間はこいつとは会っていなかった。

ゲームで通信したりはしたが、その時も通話はしていなかったはず。

そもそも言うタイミングもない気がするのだが…。


「…やだなぁ、麻ボケてるのかい?一応今ゾンビ化してるんだし、影響出てるんじゃない?」

「…そう…かぁ?」

「そうそう」

そう言いながら今は振り返り、時計をチラ見した。


「どうした時間なんか気にして。別にお前用事なんてないだろ」

「あー、今日はちょっと大事なイベントがあるから、その時間が気になるんだよ」

「なるほどな。なんのゲームだ?」

「いや、多分麻は知らないと思うよ」

「…へぇ…」


まぁ、廃人のこいつは俺が知らないゲームの10や20プレイしているだろう。


…だが、こいつがこうやってぼかすのは珍しいな。


「…それで、そのほうき隊の研究職の連中に直してもらったんだよ。5日も経ってないのにすげぇよなぁ」

「ね。その子達ほんと、まさに天才だよねー」


その()()ね。

アウトだな。


不落獄鎖(イモータルバインド)

俺は即座に立ち上がり、不意打ちで今に束縛スキルを打ち込んだ。

「うわっ」

そしてそれは普通に当たったが、今は当たり前のようにそれを解除した。


「何するんだよ急に。本当にゾンビに精神を侵食されちゃったのかい?」

(こん)はその場に立ち上がり、俺に対峙した。

驚いたようなそぶりは見せているが、冷や汗ひとつかいていない。

「ほざけ。お前、隊の誰かと知り合いなんだろ。まぁ、人脈が異様に広いお前のことだ。別に驚きってほどでもないけどな」


「ひどい!友達を疑うなんて!人として最低だ!」

今は、口元をにやつかせながらそう言った。

「そう言うならその顔を抑えろ白々しい!それに、お前わざと俺が気づくように話しただろおっ⁈」


俺がそう言ってる中、ニヤつきを堪えるようにしながら俺に何かを投げた。

そして、今が格納術式(アイテムボックス)から出したそれを、俺は反射的にキャッチした。


「…鍵?」

今が俺に渡したのは何かの鍵だった。

それは普通に現代の鍵の形だが、どことなく高級感がある。


「そう。ただの鍵だよ。ここから10kmくらい行ったところにうちの別荘がある。そこの鍵」

今は淡々と話しているが、話の意図が読めない。


てっきり俺が裏切りを指摘したら今は逃げるなり戦うなりするかと思ったが、その様子すらない。


「なんだ?なんでそれを今俺に渡した?」

俺がそう言うと今は視線を時計に向けて、その後すぐに再び俺の方を向いた。


「僕は約束は守る方なんだ。寝食は保証してあげるから、あとは頑張ってね」

「は?お前さっきからずっと何言って…」


『ガジャーーン‼︎』

俺がそう言いかけた時リビングの窓がけたたましい音と共に砕け散り、何かが飛び込んできた。

そして、ピンク色のそれは華麗に着地し、まっすぐ俺の方を見る。


「探したぞ麻義!それじゃあ、少しは楽しませるのだ!」


飛び込んできたそれは(うち)のマスコットその2。

野生系バカこと獅子王咲楽だった。

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