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Chaos〈カオス〉 〜こんなバグった世界だが、俺は意地でも平穏に暮らしたい〜  作者: 身勝手な鶏
2章:井の外の海は広く、個性は遥か地平線まで渋滞する
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入隊編Ⅰ 割と最近の既視感と勤務先という名の魔窟

新章、入隊編の第1話です。

(行きたくない行きたくない行きたくない行きたくない行きたくない行きたくない行きたくない行きたくない行きたくない行きたくない行きたくない行きたくない行きたくない行きたくない行きたくない行きたくない行きたくない行きたくない行きたくない行きたくない行きたくない行きたくない行きたくない行きたくない)(2回目)

あの試験から刹那のような2週間が経ち今日、入隊の日が訪れた。

1週間程前、俺たちを担当してくれたお姉さんから電話があり、その話によると俺は一応合格とのことだった。

しかし筆記試験は前半のほぼ勘で解いた選択問題がだいたいハズレ、後半は考え方こそあっていたものの節々でバカみたいなミスをしまくって減点フェスティバルだったらしい。その上、あの魔動機兵ゴーレムは本来使うはずのものとは違うやつだったらしく正確な測定結果が取れず、結果かなりギリギリの合格だったらしい。

危うく俺はご近所で噂の攻めた女装コスプレイヤーになるところだった。

いや、別にそういったことをする人に否定的な偏見があるわけでもないし、むしろ女装美青年とか男装美少女とかは割と萌え枠なことが多いので決して嫌いではない。

だが自分が強制的にそれやって街中に放り出されるのは流石に恥ずか死ぬ。

まぁそうならない為に試験も受けたし今日から労働しようという訳だが、恥ずか死ぬよしマシなだけで結局労働も嫌だ。働きたくない。てか無理、マジ無理、絶対無理。

しかし、まじでとてもすごく非常に本当に誠に遺憾ながら、あのよく知らん魔窟みたいなところで働かなくてはならない。 本当に働きたくないが。

(よし、週2出勤&半日労働の交渉をしよう。)

色々無駄に思考を巡らせた末、俺は多少の希望を持って重い玄関のドアをこじ開けた。


自宅からホウキで飛ぶこと十数分、俺はこの前とはまた別のコンビニに訪れていた。真凜が分隊の拠点の場所の説明がめんどいから朝待ち合わせしてそのまま一緒に行こうと言ったからだ。

また盛大に遅刻してくるかと思っていたが、集合時間ちょうどの現在、あいつは既にそこ来ていた。やはりこのあいだ埋めたのは相当なトラウマになっているらしい。

「あ、麻義、スラマッパギー」

だがしかし、それでも今日もパクリは絶好調だった。

「ん、おはよ。今日はちゃんと時間前に来たな。」

「はっ、いくら私だってしっかり学習するのよ!あんたは知らないかもしれないけど、冬場コンクリに埋められるのってかなりきついのよ?体は冷えるし足は痺れるし体は痒くてもかけないし!おまけに首元氷で冷やされたりなんてされたらトラウマにもなるわよ!」

真凜がその時のことを思い出したのか、腹を抱いて小刻みに震えた。

「いや、知ってるぞ?とてもよく。俺が一体何回姉貴に埋められたと思ってんだ。去年真冬の夜に埋められて3時間放置された時はまじで死ぬかと思った。」

「……え?あ、そう。それは、まぁ、気の毒だったわね…。…てかそれ、何やらかしたらそんなことされんの?」

経験済みなことが意外だったのか、真凜が歯切れの悪い返事をした後に質問した。

「姉貴のクレパスのプリン食ったら埋められた。」

「子供なの?ねぇ、萌樹さんは子供なの?」

それは俺もそう思う。が、こいつに子供呼ばわりされるとは。姉貴も落ちたものだな。


「そういや俺今日から具体的に何すんのかあんまよく知らないんだけど。仕事って何があんの?」

分隊の拠点までの道…というか深い森の上空の途中、真凜に聞いた。俺はほうきで、真凜はこの前乗ってた電動スケボーみたいなやつに座って飛んでいる。

「呆れた、あんたそれ知らずに今まで試験とかしてたの?まぁいいわ、この私が哀れなニートに教えてあげましょう。」

真凜が上からやたら目線に言った。ここまでセリフがいちいちムカつく奴も珍しい。

「ゴホンッ、えー、私たち探索者サーチャー分隊スクワッドの業務内容は主に、

異界門ゲートへの対処と閉門

・とり逃した魔物やモンスターの討伐

・魔物化した生物、野生化した魔物の討伐

迷宮ダンジョンの攻略

・被害者の救助

・報告書

・情報収集

異界門ゲートに対する道具アイテム術式スキルの作成

・労災とか経費とかの申請

・壊したものの反省文とか

・能力向上の訓練

・能力を悪用した犯罪者や反社の制圧

・その他能力者や戦力が必要な時の場合の加勢

etc…

とまあこんな感じね。まあ専門係の皆がやるやつとかもあるからそんなに仕事は多くないはずなんだけど、この辺りはやたらと山ばっかのド田舎だからその辺で異界門ゲートから出て野生化した魔物とかが結構いるのよ。だから私が残業に苦しむようになったってわけ。」

なるほど。多くても週1くらいのはずの異界門ゲートの対処でどうして残業が発生するのかと思っていたが、割と他にも仕事があるのか。

「へぇ、意外と仕事あるんだな。これはやっぱり週2&半日出勤を交渉しないとな。」

「そうでしょう、私たちだってなにも異界門ゲートが出た時以外のんびり日向ぼっこしてる訳じゃないのよ!…ちょっと待って、あなた今後半なんて言った?」

「お、拠点ってあれじゃないか?」

俺は真凜の言葉を無視して、見えてきた明らかにカタギの建物じゃなさそうな施設を指さした。

そこは見た感じ3階建ての割とモダンっぽい建物だがその周りが本当に森しかなく、某ポツンと一軒建っている家に行く番組に出てきそうな立地だった。

「そうよ、ご紹介しましょう。ここが我々、探索者サーチャー分隊スクワッドの拠点よ!」

真凜は電動スケボーをこちらに向けて後ろ向きに飛びながら、両手を広げた。

そして盛大にバランスを崩していた。


「はー、マジで死ぬかと思った。いやあれはもう私じゃなかったら死んでたわね。」

俺たちは分隊の拠点の入口前に降りていた。

あの後、真凜はもう落ちる寸前くらいまでいったがギリギリでスケボーに縋り付き、かろうじて生き延びていた。

「いやなんか聞き覚えのあるセリフ使ってるが、多分お前じゃなかったらあんなことにはならんだろ。」

「いいじゃないそんなこと、細かいことは気にしないの。さて、それじゃあ拠点の中を案内するわね!」

そう言って真凜がドアを開け……

完全緊縛フルバインド!」

「にぎゃっ?!!!」

ドアが開いた瞬間、真凜が緑色っぽい髪の青年にスキルで全身を縛られ、逆さに吊るし上げられた。真凜は体をうねらせて抜け出そうとしているが、少しも出られそうな気配は無い。

「ちょっと千歳!久しぶりなのに突然なんなのこの仕打ちは!早く下ろしなさいよ!」

「すみません、どの口が言っているんですか?貴女2週間もいったいどこ行ってたんですか?その間の仕事を一体誰が片付けたと思っているんですか?…もう一度言います、どの口が言っているんですか?」

千歳と呼ばれた青年はとても裏がありそうなどす黒い笑顔で言った。

2週間どこ行ってたのか?…って何サボってんだこのアホは。

時期的には俺の試験があった頃からだが、それ以降こいつに頼るようなことなんてなかったはず。

まぁ大方、俺が入れば残業が無くなると思ったら残業してまで働く気力が無くなった、とかだろうが。

「だって、萌樹さんお墨付きの麻義が入った後に仕事を押し付ければ私が2週間くらいいなくたってなんとかなるとか思ったんだもの!大丈夫、そいつが5倍速で働いてくれれば0.7倍速くらいの私の2週間分の仕事量なんですぐ終わるから!」

凄い、予想以上のクズだ。

「何を言っているんですか?貴女は。たとえ後から仕事が進むようになっても、その間にも仕事は溜まるんですよ?…まぁ、一応弁明の機会を与えましょう。ここ2週間、あなた一体どこで何をしていましたか?」

千歳がため息混じりに言った。

「何って、麻義の入隊手続きとかをこの私直々に手伝ってあげていたのよ。」

否、試験以降俺は今朝までこいつに会ってすらいなかった。

「正直にどうぞ?」

「漫喫行ったりゲーセン行ったり映画見に行ったりぃぃぃぃ!!!!!!」

千歳は質問を返した真凜の言葉を遮り、首元を触ってスキルを使った。

見た感じ強い不快感を与えるスキルだろう。


なんか既視感デジャヴだな。

そう思いつつ俺は何も言わずドアを閉め…

「ちょっ、待ってください!あなた小鳥遊萌樹さんの弟さんの麻義さんですよね!入りにくいのはとてもよく分かりますが帰らないでください!」

中にいたそこそこいい歳っぽい、白髪混じりの茶髪の男性が出てきて引き留めた。男性は顔立ちは整っているが、少しやつれているような顔をしている。

「すみません、なんか取り込み中なようなので俺はこれで…」

「いえ、大丈夫です!こんなの日常茶飯事なので何も問題ありません!だからそのドアを閉めようとする手を離してください!」

男性は俺が閉めようとするドアのふちを掴み、ドアを閉めるのに必死に抵抗している。

というか、これが日常茶飯事ってこの隊は本当に魔窟かなんかなのだろうか。

そう思いつつ俺はドアから手を離し、渋々拠点の中に入った。

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