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ヤンデレ乙女ゲームのモブ令嬢は、最推し王子の誘惑を全力で拒否したい。  作者: 清澄 セイ


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久し振りの再会。

 とはいえ、彼はヤンデレに堕ちそうだった自分を必死に押さえ込んでいたのだと教えてくれたから、喜んでばかりもいられない。こうして改めて説明されると、私がいかにエドガーの気持ちを考えられていなかったのかということを、まざまざと思い知らされた。

「もうしないから、嫌いになっちゃ嫌です」

 うるうると瞳に涙を溜めながら言うと、彼はうっ!と小さな呻き声を上げる。

「マーガレットに本気を出されたら、もうお手上げだよ。僕は喜んで愛の奴隷になろう」

「ふふっ、なんですかその台詞は」

 小さく笑うと彼も同じように微笑んで、こつんと額同士を合わせる。息遣いの一つすら共有しているようで、心臓が痛いほどに高鳴って収まりがつかない。

「僕は君に関することで無理をしていると感じることはないけれど、君を悲しませたくはないから。これからは、なんでも半分こにしよう。幸せも悼みも、すべて」

「チョコレートも?」

「それは少しだけ、マーガレットに多くあげる」

 体を離さないまま、私達は幸せに包まれる。些細なことで笑い合って、相手を想いやって、辛い時には支え合って。これから先、シナリオというレールの引かれていない二人の人生は、エドガーと共に少しずつ作り上げていける。

「愛してる、マーガレット」

「私も、エドガー様を愛しています」

「お願い、さっきみたいに呼んで?」

 甘い声で囁かれると、腰から砕けてしまいそうになる。それも許さないと言いたげに、彼はそこにしっかりと腕を回していた。

「愛してるわ、エドガー」

「ああ、幸せだ!」

 噛み締めるように喉奥から大声を出したエドガーは、そのままの勢いでひょいと私を持ち上げると、くるくると回る。まるで古い海外映画のようなワンシーンに思わず胸キュンしてしまったけれど、二十回転を過ぎた辺りで危うく初恋相手の肩口に粗相をしてしまいそうになった為に、さすがに降ろせと叫び声を上げたのだった。


 長いようで短いようでやっぱり長い冬季休暇を終え、私は弟のライオネルと共に勇足で学園への第一歩を踏み出した……、はいいものの、すかさず誰かに足を引っ掛けられて思いっきり前につんのめった。

「ちょ、ちょっと危ないじゃない!」

 咄嗟にライオネルが受け止めてくれたからいいものの、そうでなければ顔面ダイブは免れなかった。ただのモブ(最近は悪目立ちしているけれど)である私にこんな真似をするのは、たった一人しかいない。

「何するのよリリアンナ!」

「ふん、ちょっとした挨拶よ。大げさね」

 相変わらず、リリアンナの周囲を取り巻く微粒子の粒さえ光り輝いている。冬というスパイスがさらに彼女を可愛く見せており、少し大きめのコートがあざとさを演出していた。

「やだ、マーガレット。なんだか太った?」

「う、うううそ!ライオネル私太った⁉︎」

「そんなことないよ姉さん」

「だって!ほら大丈夫!」

 意地悪なリリアンナの言うことよりも、大好きな弟の方がよほど信用出来る。よって私は、断じて太ってなどいない。

「よう、マーガレット!」

 ベーっと舌を突き出す私と、いーっと歯をむき出しにするリリアンナ。そんな私達の間に割って入ったのは、朝から声の大きなシャルロだった。

「ちょっとシャルロ。貴方からも言ってやりなさいよ」

「うん?何をだ?」

「この休暇中、マーガレットがチョコレートの食べ過ぎで太ったって」

 ライオネルにいくら尋ねても私の味方しかしないからと、今度はシャルロに同意を求め始めた。けれど彼は首を傾げながら、まじまじと私を見つめるだけ。

「元を忘れたから、比較は無理だな!」

「もう、シャルロの馬鹿!」

「えっ、俺何かしたか⁉︎」

「知らないわよ!」

 ぷん!と臍を曲げてしまった彼女の周りを、シャルロが慌てたようにぐるぐると回っている。まるで粗相をした大型犬が主人に許しを乞うているような仕草で、つい笑ってしまった。

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