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ブールノイズの罪  作者: デグリーズノート
Chaptre Ⅰ 汚れた目の子供たち
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第7節 疑問


ブールノイズの港湾に近い下流と違って、北区域あたりのアルカラン・プール川沿いには広い河川敷が続いていた。川を下ってきた水と海水が混じり合うこの場所は、魚たちにとって上質な餌場となっているらしく、昼間は海から遡上してきた魚を狙った人々の姿も見られる。しかし夜ともなれば、さすがに静まり返って人気もない。特にこの季節は冷たい潮風が海のほうから吹き付けてくるため尚更だ。


「どこだ、どこに居るんだ?」

そんな月明りのみで照らされた暗い河川敷を、いくつかの人影が足早に動いていた。


「こっちだ。こっちで間違いない!」

「ホントかよ?ウソだったら、タダじゃおかねぇぞリンジー」

「だったら来なきゃいいだろう?エッツオ、俺はオマエを呼んでない」

「うっせぇ、コロスぞ!」

暗闇で顔の表情までは見えないが、その言葉にリンジーは眉をひそめる。

「おいエッツオ、お前その口癖やめろ」

「オレの自由だろ、口出ししてんじゃねえよバフ」


ここまで来て険悪なムードが漂うなか、静寂を破ったのはジマの一言だった。

「いた!あれじゃない?」

皆がジマの指示した方向を見ると、水際をフラフラと定まらない動きで徘徊する影が見えた。

それと同時にアーとかウーとかいった声が遠くから聞こえてくる。


「近づいてみよう」

ニールの提案で、周囲に気を配りながら物陰から距離を詰めていくと、次第にその輪郭がはっきりと見えてきた。焦点の定まらない瞳で、どこに向かっているのかも分からない足どりの男。

しかしその姿を見た全員がすぐに落胆した。

「ダメだ・・・」

男は薄着というよりも下着姿で、持ち物を略奪された後だった。

「これじゃもう奪えるものは、何も残っちゃいないな」

「ケッ、くたびれ儲けじゃねえか」

各々が悔しさを滲ませて、感情が言葉になって漏れてくる。


期待が大きかった分、目論見通りに事が運ばなかった時の落ち込みも大きい。皆がその気持ちを引きずったまま、その場を立ち去ろうとしていたとき、ニールはジマが男を観察したまま動こうとしていないことに気づいた。

「どうしたんだ、ジマ?」

「ああいう風になっちゃったら寒さも感じないのかな?って気になっちゃって」

「どうなんだろうな」

たしかに日が暮れて気温も下がってきているのだろう、さっきから吐く息が白くなっている。


「それと飛んじゃったエスペランザ兵はいつか消えていなくなるって言うけど、いったいどこに行くんだろう?」

「こうやって足でも滑らせて、川に流されていくんじゃないのか?」

「でも港の方で死体があがったっていう噂は聞かないよね?」

「まあそうだけど、誰もエスペランザ兵の事なんか気にも留めてないんだろ?」

「でもさ、こうやっていつも持ち物を取られているんだよ?だったらこれがエスペランザの人間だって誰にも分からないんじゃないかな?」

ジマの疑問はもっともだが、正直なところニールは別にどうでもいいというのが本音だった。指輪の力でブールノイズの民を苦しめているエスペランザ兵がどうなっても、天罰が下っていい気味だくらいにしか思っていなかったからだ。


ちょうどその時、リンジーがニールたちを呼ぶ声が聞こえてくる。

「おい、ニール!何してるんだよ、誰かがこっちに来たぞ!」

「皆、隠れろ!」

その掛け声で少年たちは暗がりに身をひそめた。

子供にとって未知のものは、命に係わる恐怖に他ならない。死は遠い世界のできごとなどではなく、常に暗闇からこちらを窺っていて、隙あらばその手に絡めとろうとしているのだということを、彼らは十分に理解していた・・・。


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