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ブールノイズの罪  作者: デグリーズノート
Chaptre Ⅱ Not Fairy tale
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第10節 窮鼠


「オレが応援を連れてきてやるよ」

そう言ってワルツライトはニヤリと笑った。


ー二日後ー

海沿いの湾港区画。辺りには人の背丈ほどもある船の積み荷用の木箱が、あちこち乱雑に転がっている。生臭い潮風に混じって木箱から漂うわずかな異臭。長居するには快適とはとても言えない環境であったが、アンデール商会の廃倉庫を遠目に眺めるその物陰にニールたちはいた。

「なあニール、アイツを信用してもホントに大丈夫なのか?」

バフがアイツと呼んだのはもちろんワルツライトのことであったが、その不安げな質問にたいしてニールは、内心そんな事を聞かれてもと苦笑いを浮かべて頭を振るしかない。しかし元より四人だけで乗り込むつもりだったのだ。応援が来なかったとしても当初の予定に戻っただけのことなので、損をしたことにはならないだろう。まあ騙された感はぬぐい切れないとしても。


昨日ワルツライトの使いを名乗る少年がニールの元にやってきた。

今日の夕暮れ時に、応援を連れてここアンデール商会の廃倉庫に行くから準備して待ってろとだけ告げて、その少年は去っていった。バフはもしも裏切られてエンプキスとワルツライトの連れてきた連中に囲まれたら終わりだと警戒していたが、その線を昨日会ったばかりのリンジーがなぜか強く否定したし、ニールも不思議とその可能性はないと感じていた。


「でもさあ、気持ちが悪いくらいに静かだね」

待ちくたびれたジマが思わずそう漏らすほど、周辺からは人の気配がまるで感じられなかった。ほんとうにこの廃倉庫のなかにエンプキスの連中が潜んでいるのか、いつもならいるのかもしれないが今は誰もいないのではないかと、皆のなかにいろいろな考えがよぎる。


「ちょっと中の様子を覗いてみるか?」

「やめとけよ、バフ。それが向こうの作戦で、囲まれちまったら引き返せないぞ!」

「だったら、いつまでこうして待ちぼうけするつもりだよ?俺はこうやって、じっとしてるのが苦手なんだよ」

バフもリンジーも我慢の限界が近づいている。しかし辺りは暗くなり始めているにもかかわらず、ここで待ってろと言ったワルツライトが現れる気配はまだないし、精神的にも張り詰めた状態がずっと続いているのでそれも仕方がないのかもしれない。


こうなったら暗がりに身を潜めて動いてみるかと、ニールが考え始めたころ不意に背後から声がした。

「お前らここで何をしている!」

とっさに振り返ると16、7歳くらいの二人組の男がすぐ近くに立っていた。周辺を警戒して見回りしている者がいたのか、もしくは別の場所からここへやってきたところを発見されてしまったのかは定かでないが、完全に不意を突かれて背後をとられてしまった。

「ヤバい逃げろ!」

ニールの掛け声で一斉に散らばるネーベルリンツのメンバーたち。


しかし背後の二人がそれぞれ咄嗟に口笛を吹くと、廃倉庫の中からゾロゾロと人が出てきた。それまで人の気配がまるでなかったというのに、どれだけ隠れていたんだというほどの数の人間が廃倉庫から現れてニールたちを追い詰めていく。そして散り散りに逃げたはずのネーベルリンツのメンバーたちが、それぞれが逃げ場を塞がれて追い詰められていった結果、全員が再び集結してしまう頃には完全に周囲を取り囲まれていた。

「しまった!」

「どうするニール?もう逃げられないよ・・・」

ジマの不安そうな問いかけに、ギリッと奥歯を嚙み締める音が響く。

ニヤリニヤリと胸糞の悪い薄笑いを浮かべて包囲網を狭めてくる男たち。これはマズイかもしれないとニールは背中に冷たいものが流れていくのを感じた。

「これでお前たちも終わりだぜ!」

スキンヘッドの太った男の放った言葉に同調するように、周囲からゲヘヘと品のない笑い声が聞こえてくるなか数の圧力で恐怖心が煽られる。


「そんな事、始まってもないお前らに言われたくねえよ!」

「なんだと!?誰だ!」

突如聞こえたその声にスキンヘッドが反応。するとニールたちを包囲する人の群れの外側に、ぽつりぽつりと人影が現れ始めた。敵の増援?それともワルツライトの連れてきた味方か?どう見てもその雰囲気は目の前の奴らとは違うように見えるが・・・。そしてその数はあっという間に廃倉庫から出てきた人数の三倍はあろうかというほどに膨れ上がっていく。


そのとき積み上げられた木箱の上に乗って、大きな声で語りかける人物がいた。

「お待たせっ、ニール。待った?」

悪びれるそぶりも見せず、そう語るワルツライトにニールは急激に力が抜けていくのを感じるのであった。




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