待状08 - ガーデンノット09 (エピローグ)
## 後日談
---
### 程晉陽
彼が目を覚ました時、窓の外の空はまだ灰色だった。
ベッドの上に横たわったまま、急いで起き上がることも、己の身体の状態を確認することもしなかった。彼はただ一つのことについて考えていた——あの氷の棺は、まだ存在しているのだろうか。あの光景は目覚めとともに消え去ることはなく、むしろ記憶に刻まれた紋様のように、いっそう鮮明さを増していた。彼女はそこに横たわり、身動きもできず、かすかに唇を開いて何かを叫んでいるかのようだった。
彼は起き上がり、明かりを点けなかった。門の中で自ら口にした言葉が脳裏に蘇る。「分かっている、自分にはそれができる」と。その確信の源泉を疑うことはなかったが、彼はただ考え始めていた——自分が真に何かを成し遂げられるようになるまで、あとどれほどの時間が残されているのだろうか、と。すでに訓練は重ねているし、距離も縮まりつつある。だが彼は計算し始めていた。もし彼女がもう一度倒れた時、自分はそれを受け止めることができるのだろうか。答えは出なかった。だが、自分が決して退かないということだけは、すでに確かめていた。
夜がゆっくりと明けていく。彼は立ち上がり、浴室へ向かった。洗面台に叩きつけられる冷水の音が規則正しいリズムを刻み、あの光景をあるべき場所へと収めていく。蛇口を締め、顔を上げると、鏡の中に昨日と変わらぬ己の姿があった。しかし、彼は知っていた。あの光景はこれから先も長く記憶に留まり、時の経過によって褪せることは決してないのだと。
---
### 宋知行
目が覚めた時、彼はノートの上に突っ伏しており、顔が押しつけられていた紙面の端には乾いた筆跡が一筋残されていた。ゆっくりと身体を起こし、見下ろしたページには一行の文字が記されていた。「彼女は、私がその手で解き放つことを必要としている」。
彼はその言葉を長い間見つめていた。己が書き残したものなのか、それとも夢が残していった痕跡なのか、確かめる術はなかった。
幻影の中に見た光景が脳裏を掠める。バラ、絹のシーツ、白布で縛られた双眸。あの時、もし自分自身が彼女を囚い続ける原因の一つなのだとしたら、どうすればいいのだろうと考えた。その疑問は目覚めても消え去ることはなく、むしろ答えをまだ決めかねている問いのように、紙面の上で静かに横たわり、再びページを開く時を待っていた。
彼は立ち上がり、窓辺へと歩み寄った。朝光が明るさを増し、街道には歩行者や車が行き交い始めていた。門の中で抱いた最後の念頭が蘇る——「私が彼女のために解き放つ」。何をすべきかは分からない。だが、「自分もまた問題の一部なのではないか」という恐れに囚われて立ち止まることだけは、二度としてはならないのだと分かっていた。
書斎の机に戻り、ノートを新しいページへとめくると、彼は一言だけ書き記した。
「問題になることを恐れて、その場に立ち止まるな」
それ以上は何も書き込まず、ペンを置くと、厨房へ向かって一杯の水を注いだ。
---
### 顧長安
顧長安は目が覚めても、身動き一つしなかった。横たわったまま天井に視線を投げかけると、あの亀裂は相変わらずそこにあった——幾度となく目にしてきたものだったが、今回は自分が思っていたよりも微かに長く伸びていることに気づいた。まるでどこで止まるべきかを決めかねたまま、ゆっくりと延伸を続ける一筋の線のようだった。
幻影の中の光景が脳裏を交錯する。紅い糸の絞鎖、氷の棺、そして彼女の首元に巻きついた、最も密で最も鮮烈なあのひと叢。あの時、彼の胸を満たしていたのは、「強くなり、この手で障壁を叩き破る」という想いだった。その念は目覚めたからといって消えることはなく、むしろ以前にも増して具体的な輪郭を持ち始めていた。曖昧な光源から、確固たる座標へと結実していくかのように。
彼は起き上がったが、すぐには立ち上がらなかった。一つのことを確認しようとしていた——もし彼女を蝕む呪いが紅い糸の残留物なのだとしたら、その糸の起源の一部は、自分たち自身にあるのではないか、と。彼が確かめるべきは「彼女がどうなったか」ではなく、「自分たちが何をしたのか」なのだ。
立ち上がり、窓辺へ歩み寄って窓を開けた。湿気と土の匂いを孕んだ朝風が吹き込んでくる。彼は窓を閉めることなく、ただそこに佇んでいた。その風が、まだ形を成し切れずにいる答えを自分の元へと運んでくるのを待つかのように。
---
### 陳硯之
目が覚めた時、彼は自分がまだペンを握りしめていることに気づいた。手元を見下ろすと、ノートには人影が描かれていた。五官はなく、ただ佇む姿だけが描かれた、満たされるのを待っている輪郭のような絵だった。
門の中で口にした言葉が胸に去来する。「もう少し強く、頼もしくなりたい。他人に頼るばかりではなく」。今思えば、あの言葉は自分自身に向けたもののようでもあり、まだ出会わぬ誰かに向けたもののようでもあった。彼はその違いをあえて切り分けることはせず、そのままにしておいた。
ペンを置き、椅子の背もたれに身体を預けた。もし次にまた副本へ入る機会があるのなら、まず誰が助けを必要としているのか、誰が無理をして言葉を発せずにいるのか、誰が底へと沈み込みながらも助けを求められずにいるのかを見極めようと思った。いつからそんなことを考えるようになったのかは分からない。だが、そう思い始めたことを後悔してはいなかった。
彼はノートを閉じ、再び開くことはなかった。
---
### 劉張三
彼はベッドの端に腰掛け、すぐには立ち上がらなかった。あの紅い糸はすでに消え去っていたが、手触りだけは今も鮮明に覚えていた——自分が投げたものではなく、阿傑が代わりに投げてくれた糸。あの糸がまだどこかに存在しているのか、どこかへ繋がっているのかは分からない。ただ、自分に代わって糸を投げてくれる者がいるのなら、自分はまだもう少しだけ歩み続けられるのではないか、そう感じていた。
古珞鸒や他の者たちのことについて、深く考えることはしなかった。ただ一つ思いを巡らせていた——もし次にまた彼女たちに会えるのなら、彼女たちが今も歩み続けていることを確かめたい、と。彼女たちに留まってほしいからではない。ただ、自分以外の誰かもまた前に向かって歩んでいるのだと、知っておきたかったのだ。
立ち上がり、厨房へ向かって一杯の水を注いだ。窓の外の空が白んでいく。彼はそれ以上立ち止まることなく、水を飲み干すと、グラスを元あった場所へと静かに戻した。
---
### 湯志傑(タン・ジージエ/傑哥)
目が覚めると、彼はまず手首の紅い糸がまだ残っているかを確認した——すでに消えていた。悔しさも、安堵もなかった。ただ、糸の消滅が自身の予測とちょうど合致していたことに、「どうせ遅かれ早かれ切れる」と納得するだけだった。
起き上がり、門の中で目にした光景を思い返した——そこに映っていたのはどこかの女の顔ではなく、自分と老劉が共に歩んできた道のりだった。自分が投げたあの三本の糸は、言ってみれば、かつての兄弟たちへと投げかけたものだったのだ。
立ち上がり、明かりを点けずに窓辺へと歩んだ。もし次も糸を投げる機会があるのなら、自分はやはり投げるのだろうと思った——誰かがやらねばならないことだからだ。新しく副本へ入ってきた者たちに、その手の中に糸を持ち得るのだと知らせるために。それらの糸が切れるか否かは分からない。だが、誰も投げなければ、糸は最初から存在し得ないのだから。
---
### 江懷安(ジアン・懷安)
目が覚めた時も、彼の脳裏にはあの光景が焼き付いていた——鄭愷苑が虫眼鏡を掲げ、躊躇なく男を打擲する鮮やかな手際。一度目を閉じ、再び開けても、その映像が消えていないことを確かめてから、ゆっくりと身体を起こした。「あの紅い糸が何を意味するのかは分からないが、後悔はしない」と自ら語った言葉が蘇る。目覚めた今も、その想いに変わりはなかった。
「彼女がこの糸を受け取ってくれるか否か」について、深く考えることはなかった。受け取らせるために投げたわけではない。自分があの光景のためにどれほどの時間を費やせるのか、それを確かめたかっただけなのだ。すでに確かめ終えた以上、心に遺憾はなかった。彼は立ち上がり、厨房へ向かうと、静かに一杯の水を注いだ。
---
### 汪閱文
目が覚めた時、彼は自分がまだあの光景を記憶していることに気づいた——潘穎嫆がプラスチックの執筆板を掲げ、魔物を叩きのめす姿。彼女自身は、自分が誰かの記憶に刻まれたことなど知りもしないのだろう。
門の中で呟いた言葉を思い返す。「名前も知らない、この先どこへ向かうかも分からない。だが、糸を投げて良かったと思っている」。醒めた今も、その気持ちは変わらなかった。再び彼女に相見えることがあるかは分からない。だが、もし出会うことができたなら、自分は必ず彼女だと気づくはずだ。
---
### 唐衍之
目が覚めた時、彼は何も考えていなかった。静かに腰掛け、胸の中にある光景をゆっくりとあるべき場所へと収めていた。門の中での己の直感を思い出す。「彼女は多くを語る必要のない人間だ——隣に腰掛け、静かに寄り添っていれば、気まずさを感じることもない。ただそれだけで、十分に満たされる」と。目覚めた今も、その思いに変わりはなかった。
それ以上を望むことはなかった。多くを語らずとも静かに寄り添える誰かと出会えた、ただそれだけで十分だったのだ。彼は立ち上がり、明かりも点けずに厨房へと歩んだ。ただ窓辺に佇み、朝光がどこに落ちるかを、その自然の光に委ねながら。
---
### 鄭愷苑
目が覚めると、彼女はまず自分の手首を見下ろした——紅い糸はすでに消えていた。手首に糸が巻きついていた感覚は今も覚えている。不快ではなかったが、それがどこへ繋がっているのか分からない不確かさがあった。紅い糸が真に何をもたらすのかは良く分からなかったが、情縁とは限らないと聞きつつも、不確実なものに対する彼女の直感は常に一つだった——危険があるのなら、最初からいらない。
庭園に入る前、彼女は期待を極限まで下げ、「どうせ私に糸を投げる者などいない」という諦念を胸に足を踏み入れていた。だからこそ、実際に糸が手元に落ちてきた時は驚きを禁じ得なかった。だが、それをつとめて表には出さなかった。容易に心を見透かされるのは本意ではないし、それらの視線に応える価値があるのかもまだ分からなかったからだ。
男たちが低声で交わしていた議論を見て、彼女は胸中で察していた——また何かを分け合っているのだろう、誰が誰を手繰り寄せ、誰を介して誰に近づくのか、と。見知らぬ男の一人は、意図が明白すぎるほどだった。自分を利用して古珞鸒と良縁を結ぼうとしているのだ。最初は無視し決め込もうとしたが、古珞鸒が特に拒む様子も見せなかったため、そのままにしておいた。
修業の途上において、利益至上の取引や、資源のため、生き残るため、死を恐れるがゆえに守るべき一線を捨て去る者を、彼女は腐るほど見てきた。それらを見てきたからこそ、何が真実であるかをより鮮明に見分けることができた。男たちから伸びていた幾本かの糸には、確かに心を動かされるものがあった。彼らが何か大層なことを成し遂げたからではない。少なくともそれらの糸の源泉の一部が、誠実さから生じていたからだ。
紅い糸の色彩が彼女を安らわせた。濃淡の問題ではない。彼らが自分を「戦友」として——目標ではなく、共に歩む同伴者として見てくれていると感じられたからだ。最後の二本の糸がどこから来たのかは分からず、何の予期もしていなかったが、突き詰めようとは思わなかった。ただその念を胸の片隅に置き、自然の推移に委ねることにした。
いずれにせよ、兵が来れば将を迎え、水が来れば土で覆うまでのこと。これまでもそう生きてきたし、今回も例外ではないのだから。
---
### 潘穎嫆
目が覚めてもすぐには起き上がらず、彼女はただ静かに座っていた。あの幾本かの紅い糸が完全に消え去ったことを確かめるように。かつて手に纏っていた糸の感覚も、それが投げかけられた時の視線も覚えている——それらの視線がどこから来たのかはまだ定かではないが、それらが無に帰すわけではないことを彼女は知っていた。
庭園にいた間、彼女は終始観察を続けていた。糸を投げてきた者たちを信じていないからではない。相手がどのような人物であるかを見極めてからでなければ、どのような距離感で応じるべきか決められないからだ。彼女が恐れていたのは、糸を結んだ後に生じる予期せぬ摩擦だった。あのクールな少女が、結んだ後に返礼が得られなかったことで冷ややかな視線を投げかけていたように。そのような結果を背負い込むことは望んでいなかった。
紅い糸が予期せぬ影響をもたらすことも危惧していたが、深く考え抜いた末、彼女は結論を下した——「まずは経過を見守ろう」と。彼女は真っ先に飛び込んでから策を講じるタイプではない。常に縁に立ち、水の流れを見極め、流されないことを確かめてから足を踏み入れる。それは臆病さではなく、自分に対する誠実で責任ある態度なのだ。
繋がりを拒んでいるわけではない。ただ、全貌が見えないうちに安易に近づき、後から悔いるよりは、一定の距離を保つ方が遥かに賢明だと考えているのだ。それらの糸が持つ意味を急いで決めることはしなかったが、完全に捨て去ることもなかった。いつでも手繰り寄せられる場所へと静かに置き——より多くの情報が集まった時に、次の一歩を決めればいいのだから。
---
### 于奕孺
于奕孺が目を覚ました時、窓の外の天色はまだ完全に明けきっていなかった。
急いで起き上がることもなく、ただ横たわったまま、天井にある細長い亀裂に視線を投げかけていた。幾度となく目にしてきたその亀裂は、灯具の端から部屋の角へと伸びており、未だ解読されぬ記号のように、目を覚ますたびにそこにあることを確かめる対象だった。それがあることで、自分がまだここに存在しているのだと実感できるのだった。
紅い糸は、今もそこにある。
手首を見下ろして確認する必要はなかった。目の届かぬ場所にあっても、その存在を感じ取ることができたからだ。骨組みに沿って薄い霜のように広がり、皮膚の表面に密着して静かに横たわっている。引き締まることも、緩むこともなく。庭園に入る前から分かっていた。自分が拒んだところで、それらの糸が消え去ることはないのだと——それらは選択を委ねるために来たのではなく、ただ彼女が受け入れる準備ができているかを確かめるために存在している。そして彼女には、どれを受け取るかを選ぶ権限すら与えられてはいなかった。糸との間に存在するのは選択ではなく、これから訪れる事態の余波を受け止める覚悟があるか否かだけだったのだ。
庭園で目にした光景が蘇る。漂う紅い糸、注がれる視線、そして彼女に応答を求めず、応答する必要もなかったシグナルたち。糸の出処も、その背後にある意図も分かっていた——真情から出たものもあれば、試探もあり、ただの通りすがりもある。だが、起源が何であれ、それらの糸が自然に消滅することはない。ただ姿を変え、エネルギーのように軽やかな重みから足元を引っ張る力へと変化し、やがてある瞬間に劫火の核心へと化していくのだ。
庭園で幼い少女に語った言葉が脳裏を過ぎる——「定かではない」。その二文字を口にした時、胸中にはすでに答えがあった。解除できるか否かが不確定なのではない。ただ、その糸がもたらす余波をどのような形で受容すべきか、その術を決めかねていただけなのだ。あの言葉は、向き合うまでの時間を稼ぐために、自らに残した猶予に過ぎなかった。
彼女は起き上がり、ベッドのヘッドボードに寄りかかりながら、朝光がゆっくりと部屋を満たしていくのを見つめていた。紅い糸が何をもたらすかを憂慮する必要はなかった。吉であれ凶であれ、最終的にはすべて己の「劫」へと帰結することを、疾くに知っていたからだ。彼女にできるのは、ただひたすらに前へ進み、一つ一つの副本を泥泥になりながらも耐え抜き、欠けた部分を埋めていくことだけだった。終わりまで辿り着けるかは分からない。だが少なくとも、まだ前へ進む力だけは残されていた。
紅い糸は今も彼女の身にまとわりついている。だが、それらとどう向き合うべきか、彼女はすでに腹をくくっていた。避ける必要はない。逃れられぬ運命であることを最初から知っていたのだから。必要なのは、ただ一つの言葉を刻み込むことだけ——強くならねばならない。ただひたすらに、強く。さもなくば、あの糸に引き裂かれ、庭園で淘汰されていった女たちのように、抗う余地すら与えられずに消え去るのみなのだから。
彼女はついに掛け布団をめくり、床の上に立ち上がった。窓から差し込む朝光が脚元を照らし出し、まるで開かれるのを待つ新たなページのように輝いていた。自身が刻む足取りの律動を決め、糸が己をどこへ導くのか、あるいはその場に留め置くのかを見届けるために。少なくとも彼女は今、自らが選んだ道の上に立っているのだから。




