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【一旦完結】ジャガーバルト家の義妹  作者: もにーる
第五章 『生誕』編

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20.呪詛の塊

やっとアレを調べます。


『結局ここにも何の手掛かりも無いみたい』

『3回も見れば見落としも無いだろうし、侑人さんがここに居たのはたまたまだった…としか結論が出せないね』

『うん…、推測しようにも材料が全く無いし。まぁ無い物はしょうがない、体拭いて拠点に戻ろっか』

『了解』


 第一層のダンジョン出入口を確認した翌日。MPが完全回復したリュートと桜華は、侑人がダンジョンで目覚めた時の広間までやってきていた。

 侑人と卵がその場所に居た理由が何かあるのではないかと、リュートの左目の力を使って詳しく見てみたのだが…結果は何の情報も得られないという徒労に終わった。


『何も無いという情報は得られた、と思っておこうかな?』

『ポジティブだね。さっきの場所で侑人さんが目覚めた事に意味があったかどうか、それを調べるか調べないかも地道な一歩ではあるけどね』

『うん、無理矢理推測するなら、あの崖の下からランダム転移…みたいな事でも起きたんじゃないかって思うしかないし』

『俺がこのダンジョンで目覚めた時は第二層だったし、そこも見てもらったからね。どっちにも手掛かりは無かったし、その線が有力な気はするよ? 事例が2つじゃなんとも言えないけど』


 水場…湧き水のあった広間で交代しながら顔を洗い、体を拭き、消波ブロックの積み重なった広場へと戻ってきた。

 高所出口から消波ブロックをトントンと軽い調子で下り、あっという間に広場まで下りきった。


『…キラーアント復活しないね? モンスターってすぐに湧くんじゃなかったっけ?』

『いや、…数はまだ少ないけど湧いてるみたいだよ』

『『気配察知』だっけ、便利そうなスキルだよね。…う~ん、魔素の濃度?が薄まってる感じがするからそのせいかな? 薄いせいで湧きが少ない…みたいな』


 魔素の濃度が薄まっているのは、リュートのMP回復の為というのが原因だったのだが…そこまでは知る事が出来なかったらしい。


『…濃度なんて全然分かんないや。『気配察知』は確かに便利だけど、その左目の方が何倍も便利だよね?』

『…否定出来なかった。消耗が激しくて暴走の危険もあるけどね~。…あ、この消波ブロック調べてみよっか』

『そうだね。ダンジョン産と思うには…やっぱり無理があるもんねコレ』


 リュートは左目の力を使って、消波ブロックの情報を覗いた。


 波消しくん(小)

 株式会社オーシャンラヴァーが製───


 リュートは思わず目を擦った。


『………』

『どうしたの?』

『うん…コレ地球産っぽい』

『あ~やっぱりか。…だとしたら、なんでこんな場所に…』

『もうちょっと見てみないと分からないかな? …あと、『鑑定』だと情報が出てこないみたい』

『…やっぱりチート』

『あはは…』


 気を取り直して再び波消しくん(小)の情報を覗くことにした。


 波消しくん(小)

 株式会社オーシャンラヴァーが製造する消波ブロック、命名は初代社長の海原 愛之助。

 主に海岸にいくつも設置され、波を打ち消す効果があり、高波による被害や海岸の浸食破壊を防ぐ事を目的とする。

 高さ1.4メートル、重さ1.2トン


(…これだけか。ここにある理由とか…何かしらもうちょっと見えないかな)


 型枠にコンクリートを流し込んで固まらせたもの。

 コンクリートの配合は───


(違う違う、それじゃない)


 会社一番の売れ筋商品である。


(…いらん魔力使ってしまった)

『国産の売れ筋商品だったよ』

『…じっくり見た結果がその情報?』

『あはは、それ以上載ってなかったからしょうがないね。ちなみに名前は波消しくん(小)』

『名前は案外可愛いんだね…』

『それには同意かな。重さが1.2トンで可愛さ激減だけど…。まぁこれだけの数の波消しくんがなんでこんな場所にあるのかは分からなかったけど、どの波消しくんの情…ん?』

『どうしたの?』

『…波消しくん以外の情報がある、ちょっと待ってね』


 壁沿いに積み上げられている、ざっと見積もっても30個以上はありそうな消波ブロック…改め、波消しくん(小)。

 左目の力によって全ての波消しくんから出現させていたウィンドウの中に、異常な説明文が記載されたものを発見した。そのウィンドウに焦点を合わせ───


 明雨に短戸破れ渡篭

 河せ断救谷み将怨2川ろ千投美時き三洗蘭べ雷時闇、ひ文岐消ね楼8攫歩セ遁十礫ふ求、死楽ぎ橋8みひ錬助怒ご匠妃村ざ)呪山斧情1父首う辺徳牢が辻獲再越も逢窯奪に風七呪筒、多3変重ゆ全大國堕ば天撰愛黒2簪開ち。中烏い斬哀讐0砕べ集鍛ろ急墓状、高乱八く寸成刺続め氷1半天め割人血ぜ計、後穂鬼生ら吾然理───


『うっぐぉ!?』

『おっと!』


 突然よろけて倒れそうになったリュートを桜華が抱き留めた。

 リュートは自然とステータスを開放していた。それほど身の危険を感じたのだ。


 一切意味を把握出来ないナニカの情報。それだけを見れば文字化けした文章でしかないが、リュートに流れ込んできたのは、哀しみ、怒り、憎しみ、後悔、…負の感情の洪水だった。


【スキル『状態異常耐性』の熟練度がMAXになりました】

【スキル『状態異常無効』を獲得しました】

(何だ、何なんだアレは…。状態異常…精神汚染?)


 システムの声に反応も示さず、新たにスキルを得た事も無視したリュートは、ステータスを開き…自身の状態を確認した。ログを開けば、精神汚染を受けたという一文を見る事が出来た。


 左目の力を使っての情報の閲覧、リュートにとってそれは読むという感覚だった。しかし消波ブロックに埋もれたナニカからは、読むと同時に呪詛の混じった情報が一気に流れ込んできた。


『何かは分からないけど…ヤバいモノがある』

『ヤバいモノ…』

『呪いのアイテムなのか、死体…アンデットでもいるのか、全く未知のモノなのか…負の感情の塊みたいな感覚。それに、………いや、とにかく危険だ』

『…放置する?』

『そう…いや、確認しておこう。拠点がすぐそこだし、…最悪移動すればいいと言えばいいけど、正体不明の危険物があると知ってて放置するのも怖いしね』

『まぁね…。波消しくん(小)がここにある理由もまだ分かってないし。でも、この波消しくんの数…どうする?』

『そりゃ~1個1個下ろしていくしかないよ』

『うわ~、やりたくね~』

『一人で! 持つのっは! さすがにっ! はぁ…しんどいけど、無理ではないかな? 全力でギリギリ浮くって考えると、とんでもない力だな私…。まぁ下ろすのは冗談だけど』


 リュートが波消しくんの積まれた山…のすぐ側、崩れたのか最初からそこにあったのか、積まれた山の近くにポツンと1つだけあった波消しくんの端を持って上げて見せた。

 重さもだが、完全に浮かせるには波消しくんの持ち方に難儀する。(小)ではあってもリュートより高さがあるのだ。

 それでもリュートがステータスの開放…全力を出せば持ち上げられるらしい。恐るべし0歳児である。


『冗談って…あ、砕いてバラバラにすればいいのか』

『それも手ではあるけどね? こうすればそんな手間も…あれ?』

『…?』

『…うん、『異空間収納』に入れちゃえばって思ったんだけど、入れられなかった…』

『…ふふっ、ドンマイ?』


 格好つけて波消しくん(小)に右手で触れてスキルを発動したのだが、『異空間収納』は仕事をしてくれなかった。

 少々恥ずかしさを感じながら不発に終わった原因を考え、すぐに思いついた。


『あと、服の調達も急いだ方がいいね。見えちゃうよ?』

『ゔっ…』


 水を差されたリュートだったが、確かに桜華の言う通り。波消しくんを持ち上げる為にしゃがんだ時など、かなり際どかった。さすがに桜華に下に履いている物をくれとも言えない…貰った所でブカブカだろう。

 右手を突き出して格好つけた時を上回る恥ずかしさに頬を赤くしたリュートは、下に履く物の調達を急ごうと心のメモに記した。



『ある意味、いい訓練に、なるかな?』

『…波消しくんがひょいひょい消えていく』

(…これを人相手にやってたって思うと、怪我を治してもらった時にシルヴィアさんがどれだけ集中してたかよく分かるな)


 失敗した原因に心当たりがあったリュートは、念の為桜華には距離を取ってもらい、波消しくん(小)を魔力で覆い、そのまま『異空間収納』へ入れようと試みた。それはシルヴィアが侑人に回復魔術をかける為に行った方法だ。

 波消しくんがスキルに反応しないのは、ステータス…魔力を持たないからではないか? リュートはそう推測した。『鑑定』で情報が見られないというのも、魔力を持っていなかった時の侑人と共通している。


 結果は上手くいった。

 桜華に離れてもらったのは、『異空間収納』に波消しくんを入れた後に、意思とは関係なく『異空間収納』から波消しくんが飛び出してくる可能性を考えての事だった。

 侑人として回復魔術をかけてもらった時のような一時的なものとは違い、『異空間収納』に入れた状態のままにする今回の場合、対象を覆う魔力が『異空間収納』の中でも継続されるのかされないのか、されなかったらどんな不測の事態が起こるのかが分からなかったからだ。


 やってみた結果、波消しくんを覆っていた魔力は『異空間収納』に入れた直後に繋がりは切れたが、飛び出してきたりする事は無く収納されたままだった。取り出す時も思い描いた位置に波消しくんを置けた。

 取り出す場面を左目を発動させて注意深く見てみれば、『異空間収納』から波消しくんを取り出した直後はうっすらと魔力を帯びていると確認できた。『異空間収納』の中に留まっていたのはそのお陰なのだろうが、魔力を帯びていたのは外に出した直後だけで、その後すぐに霧散した。

 繋がりは消えたが魔力で覆った状態を維持したままだったのか、『異空間収納』の中が魔力で満たされているのか、リュートはその2つのどちらかだろうと考えた。…考えたが、面倒が起こらない事が分かったので、「どっちでもいいか」という結論に至った。


 それ以上に調べなければならないモノがあるからだ。


『手間と言えば手間だけど、訓練と思えば苦にはならないね。熟練度稼ぎにもなるし』

『この方法が使えなかったら、本当に手間がかかっただろうしね』

『そうだね、下ろすにしろ壊すにしろ…多分壊す方が早いかな?』

『この広場がコンクリ片で埋まりそう…』

『…確かに』


 2人の強さを考えれば、コンクリ片が残るのかも疑問ではなかろうか。


『実はこの波消しくん、封印的な扱いじゃないよね?』

『さすがに…ないんじゃないかな? 少なくとも魔力を帯びてない物質だし、左目で見た時にそれらしい事も書いてなかったし。御札とか貼ってあれば封印の説も濃厚かもしれないけど…塩が盛ってあるとか』

『塩って…。思いつきで言ってみたけど、そんな札が貼ってあったりしたらさすがに気付くか…』

『何がきっかけで話が進展するかは分からないし、思いつきでも意見は大事だと思うよ?』

『うん…そうだね。リュートはこの奥に何があると思ってる?』

『…う~ん、さっきも言ったけど、アンデット…上位だとリッチだとかデュラハンだとか、そんなのの亜種が居る可能性はあるんじゃないかな? レアモンスター的なやつ。…でも、それなら声や物音がしてるはず?』

『確かに。死んでたら消えちゃってるだろうしね。じゃぁ呪いのアイテムかな?』

『なんとも言えないね…。明らかにバグった情報が見て取れたし、その情報のほぼ全てに負の感情が混ざってたし…。流れ込んできたのは呪詛の塊と言えばいいのか…ログには精神汚染を受けたって出てたからね』

『精神汚染って…大丈夫だったの? って、大丈夫じゃなかったら今こうしていられないか』

『『状態異常耐性』の熟練度が急激に上がってカンストしたよ!』

『…元気に報告する事?それ』

『あはは。他にも、空間に穴が空いてて日本と繋がってるとかも考えたけどね。その穴から…なんだろ、呪物みたいなものが流れ着いたとか。波消しくんもその穴から通って来てここに積み重なった説』

『う~ん…、上にはそんな穴無いし、穴が下にあるなら…押し上げられてあの高さになった?』

『無理があったか…。それにそんな穴が空いてたら、ここが海になっててもおかしくないしね』

『そうだね。海どころか天井まで…このフロア全部が海水でいっぱいになってそう』

『…間違いない。さ~て、その答えがもうそろそろ分かりそうだよ?』


 何があるか、何が潜んでいるかと話をしつつも、リュートも桜華も戦う準備は万端だった。

 積み重なっていた波消しくんはその高さを半分以下にまで減らしている。


 リュートが波消しくんの隙間から覗いてみると───


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