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【一旦完結】ジャガーバルト家の義妹  作者: もにーる
第五章 『生誕』編

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19.新たな目標


『一先ずMPの回復を優先するとして、その間に第一層まで行ってみようと思うんだ。左目で見てみれば何か分かるかもしれないし』

『そうだね…。あそこ以外に出口なんて見かけてないし、何かしら手掛かりが見えるかもしれないもんね』

『まぁ過度な期待はせずに…だね。一応ここのセーフエリアを拠点にして行動かな~?』


 苦労して侑人の姿を取り戻したリュート。…ただ、侑人はレベル1のよわよわおじさんだったので、もしもの事を考えてリュートの姿へ戻った。

 それからはキャラメイクのイメージトレーニングがひと段落した桜華と2人で、今後の事について話し合った。


 ダンジョンからの脱出について、脱出してからの事について。

 その時の話が盛り上がり、一度だけでもリュートに日本という国を見せてあげたいという提案が2人の最終目標となった。生きる場所はマギカネリアでと決心していた侑人としては、リュートとして日本に戻れたとしてもまたマギカネリアに戻って来るつもりである。


 目先の話では、リュートのMPの回復、ダンジョン第一層にある出口の調査、食料の調達。やる事はまだまだ山積みだが、まずはその3つから始める事にした。

 MPは3日もすれば全回復するだろう。

 食料は第二層のオークを狩る予定だ。

 仮にはぐれてしまった時の事を考え、第四層のセーフエリアを集合場所とした。


『第二層はオーク以外何がいたっけ?』

『オーク以外はグレイウルフだね。あとゴブリンも多少いるよ』

『なるほど…第一層も数は違っても構成は同じだったね。…第三、第四層が蟻の縄張りか。第五層が中ボス部屋のみでオークロード。短期間…五層程度の深さの割に敵の強さ上がり過ぎじゃない?』

『俺に言われても仕方ないけどね。そういうダンジョンだと思うしかないよ』

『…ごもっとも。第五層に中ボスがいて、中ボス部屋のみの階層っていうのも聞かない話だしねぇ』


 ジャガーバルト領にある初級ダンジョンは全十層。登場するモンスターにステータスやレベルの差はあるが、ゴブリンかグレイウルフしかいない。

 王都ルクセウスの近くにある中級ダンジョンには、オークと上位ウルフ種がいる。

 上級ダンジョンには、アーチャー、メイジ、ウォーリアーといった種類は存在しているが、基本的にスケルトン縛りになっている。


 中級と上級、どちらのダンジョンも、中ボスは十階を区切りとして専用の部屋があり、それは広い階層内の一カ所にあるというのが普通だ。ミュリアルの授業でも侑人はそう教わっている。

 初級ダンジョンは全十層なので、中ボスは存在しない。


 では…モンスターの種類が多く、1フロアに出現する数も多く、第五層に中ボス部屋のみが存在するダンジョンとは一体何なのか。

 上級の上に当たるダンジョン、未発見のダンジョン、新種のダンジョン。いくつか推測は出来ても答えは分からなかった。

 2人は、ここが特殊なダンジョンと割り切って情報を集める事にした。


『…閃いた!』


 …桜華が何か閃いたようだ。

 桜華がリュートへ『魔力譲渡』を使い、…割と全力で使い、MP完全回復までの時間を早めさせ、今日の活動を終えて眠りについた。


 桜華はまだ、桜華ちゃんの事で頭がいっぱいだった。



 翌日にはリュートのMPがほぼ回復し、上層を目指して進み始めた。もしかしたら今なら出られるかもしれないという淡い期待を抱いて。


 可能性はいくつか話し合われている。


 呪縛のネックレスが何らかの作用を引き起こして出られなかった可能性。

 時間によって出られなかった可能性。

 桜華は出られなかったがリュートは出られるかもしれないという可能性。

 3つ目の可能性が現実になったとしても、リュートに桜華を置いてダンジョンを出る気は無かったが。

 2人ともダンジョンから出られないという可能性ももちろん考えている。楽観視ばかりはしていられない、悲観的にも物事を見ておかなければ落胆が酷くなるからだ。


 第四層から三層、二層と、首輪の制限が無くなった桜華の無双状態で進み、あっという間に第一層まで辿り着いた。

 出現するモンスターは桜華の言っていた通りで、苦戦のしようもない闘いだった。剣や魔術での一撃確殺、一確狩りをしつつスイスイ道を進む。

 ちなみに桜華の使う剣は聖剣、名をエクスカリバーという。マギカネリアに召喚された桜華が王城で授けられた剣…なのだが、いかにもな名前に羞恥心が湧いたとか…。旅の間は必要に迫られない限り、聖剣としか呼ばなかったらしい。


 そんな話をしながらやっと見えてきたダンジョンの出口。ダンジョンの中から見る外の景色は木々が生い茂っており、年代の把握も場所の特定も出来そうになかった。


『ここに壁みたいなのがあって、そこから先に進めないんだ』

『ふむ。…透明だけど確かにあるね、私も出られないっぽいや。…モンスターがダンジョンから出られないっていう、あの壁と一緒なのかな?』

『壁の位置的にはそんな感じがするね。…俺達モンスター扱いとか?』

『あはは、私はある意味ではモンスター枠かもしれないけど、桜華くんは当てはまらないでしょ。とりあえずは懸念していた時間の流れが違うかもって心配はいらなさそうだね。…確定ではないけど。草や葉っぱの揺れ具合に不自然さはないし、計算したらダンジョンでの1分が外では1日になったじゃん?』

『確かにそこは朗報かな? こうやって話してるうちに日が暮れてるはずだもんね』

『そういう事。さ~て、どんな結果になるかな。…よし、見てみるね』


 障壁(稼働中)

 ダンジョンからモンスターの流出を防ぐ障壁


(…ん?これだけ? もうちょっと魔力を足してみるか。…管理?)


 障壁(稼働中)

 ダンジョンからモンスターの流出を防ぐ障壁

 また、外からの入場、退出の管理も行っている


 リュートは『ふむ…』と呟いて透明な壁に手を触れてみると、障壁の詳細に管理番号のような数字の羅列が表示された。それと共に、正規入場記録無し、退出不可という表示を見る事が出来た。

 桜華にも試してもらった所、リュートの時とは数字の違いはあるが、管理番号らしきものが浮かび、正規入場記録無し、退出不可と表示された。


『…ここから入ってないから出られない、って事?』

『多分そう…だろうね。これ以上の詳しい情報は見えなかったよ』

『………ちょっとは出られるかなって期待してたんだけどな~、ダメだったか』


 残念そうな発言ではあったが、桜華の表情に絶望感も悲壮感も見られなかった。それは侑人と出会い、リュートと過ごし、まだ数日ではあるが、桜華が心を救われていた事にある。

 日本では関わる事がなかったであろう同郷の男、異世界転移という稀有な経験を共有できる友人、目標を同じくする同志、呪縛を解いてくれた恩人。

 桜華には侑人に初めて出会った時の警戒心など全く残っていなかった。あるのは信頼、そして尊敬だ。


『それじゃ脱出の目標は』

『ダンジョンの攻略だね』


 ダンジョンの攻略。

 最下層にいるボスを倒すとポータルが出現し、そのポータルを使えばダンジョンの外へ転移出来るようになる。

 第一層の出入り口から出られないと分かった2人は、ポータルからの脱出を新たな目標とした。


『…それで出られなかったら詰むけど』

『その時は、…出来るか分からないけど全力で障壁をぶち破って『ほら、言葉遣いが乱暴になってるよ』おっと、ありがと桜華くん。障壁を…突破する方向で頑張ってみよう』

『そうだね。…少なくとも、今の段階でこの障壁をどうこう出来る気はしないけど…』

『同じく…』


 共にステータスを開放してみても、障壁を破れそうな気はしなかった。呪縛のネックレスから解放された桜華を以ってしても。

 その辺の壁をぶち破…穴を開けて脱出する事も無理だろう。というのも、ダンジョンからモンスターを連れ出そうという実験を行った研究者が既に試している。その話をミュリアルから聞いていたのだ。


 結果は失敗。

 ダンジョン内から穴を開ける事には成功し、開けた穴から研究者一行は外へ出られた。…が、モンスターは連れ出す事が出来ず、一定の時間が経つと穴は塞がってしまったのだ。

 障壁がリュートと桜華をモンスターと同じ扱いにしているのかは定かではないが、障壁を通れないという事実は変わらない。


 ちなみに、桜華に訂正させられたリュートの言葉遣いに関しては、俺と言ってしまった時や乱暴な言葉遣いに感じられた時に注意してもらう事にしている。


『それじゃ、拠点まで戻りつつ採取してみようかな。何かあればいいけど』

『なんで採取とか採掘とかスキル持ってるんだろうね?』

『あ~言ってなかったっけ? 侑人の今まで経験したものがジョブやスキルに現れてるんだよ』

『へぇ~、リュートの…『生誕』だっけ、あれの効果?』

『そんなところ。卵の時に栄養として色々あげてたのもあるけど、リュートに与えた俺の『ほらまた』おっと、リュートに与えた侑人の経験が引き継がれたみたいだよ。…言葉遣いって難しい』

『ふふっ、頑張れお父さん』

『今はリュートです~!』


 お父さんの淑女への道は遠そうである。



 リュートが数多くのスキルを持っていた理由、それはまだ卵だった時のリュートのお陰であった。システムが侑人をポイしようとしていたのを止めさせ、処分しようとしていたのも止めさせ、統合した結果である。…システムは何気に酷かった。しかしそれは当然と言えば当然だ。


 生体情報として見れば、ステータスを持たない…マギカネリアに全く適合していなかった侑人という人間を統合させる事は全くの無駄だった。

 だが、地球という星で40年近く生きた人間として見れば、様々な経験や技術を持っている。その経験や技術が卵に統合された事で、様々なジョブやスキルを得る事となった。それらが分かったのは、左目の力を使ってスキルを確認した時だった。


 剣術スキルは高校時代の選択授業だった剣道やマギカネリアでの修行から。

 騎乗スキルは自転車やバイクに乗っていた経験から。

 意思疎通は侑人が持っていた不思議な力と飼っていたペットへの愛情から。お願いの力は調教と受け取れなくはないが、どちらかと言えばペットへの愛情のせいで調教師・上級調教師のジョブレベルがMAXだったようだ。それが分かった時のリュートは、安堵したとかしてないとか。ジョブ名のイメージが強く、知らず知らずのうちに誰かを調教していたのかも…という疑問は晴れたので安堵したという事にしておこう。意思疎通のスキル熟練度もMAXである。

 ちなみに、採取は小学校で行ったキノコ狩りや芋掘りなどで、採掘は同じく小学校で行った体験学習での経験である。

 その程度で習得出来るのか?とは思ったリュートだったが、無いよりはマシと開き直って受け入れた。…受け入れられなくてもスキルもジョブも持っているので受け入れるしかないのだが。


『お~…? 初採取、こんな感じなんだ。岩塩ゲットしたんだけど、海が近いのかな?』

『…ダンジョンだから関係無いんじゃない?』

「ギャギャギャ!」

『それもそう…だね、とりあえずオーク肉に使う用で多めに欲しいな…。もしかしたらこのダンジョンが海の近くなのかな~って思って。さっき外を見た時は木しか見えなかったけど。鉄鉱石もゲット』

『確かに味気なかったからねオーク肉。それにしても『異空間収納』は便利そうだね、このマジックバッグより入りそうだし』

『MP依存らしいから容量は大きいかな? 入れる時にMPは消費するけどね。何を入れたか覚えておかないとダメだし、見れるには見れるけど…その度に左目の力を使ってたら更にMPを消費するし、左目の力が無くて何入れてたか忘れたら全部出さなきゃいけなくなるけど…』

『ゲームっぽく一覧で見られればいいのにね』

「「ギャギャギャ!」」

『そうだね~、インベントリっぽくアイテムの名前とかアイコン表示が見られればいいのに』

『更に入れた物の時間を止めるとか?』

『あはは、ゲームなら当然って思っちゃうよねその仕様。『異空間収納』は時間を弄るような設定はないし…作り変えるのいつかやってみようかな。…出来るのかな?』


 和やかな会話の最中、ゴブリンに襲われている事など意にも介さず、採取と採掘を続ける2人。

 制限の無くなった勇者と最強種の系列にいる竜人、ゴブリンがそんな2人に敵うはずもなく。桜華は剣で、リュートはキラーアントのドロップした槍で戦闘…お掃除をしていた。

 リュートは『槍術』のスキルも持っている。会得した時期は侑人がマギカネリアに来てからだ。

 ミュリアルとの修行で侑人のジョブ…適性を模索する為に、実際に槍を振るってみた程度だったのだが…その程度でも会得出来ていた。

 この世界はいつの間にイージーモードになったのだろうか、と錯覚してしまうリュートであった。


『う~ん、【経験値が取得できません】ばっかりなのが勿体ないよね…』

『レベルとステに差があり過ぎるからねぇ、しょうがないよ』

『そこもなんとかしたいな~、『経験値アップ』みたいなスキル無かったっけ?』

「「ギャギャギャ!!」」

『俺の知る限り…無いかな?』

『もしそんなスキル創れたら…ゴブリン牧場とか大盛況になるだろうね』

『スキル創れたとしても、経験値貰える保証がないんじゃ意味無いんじゃない?』

『これって、経験値貰えないんじゃなくて、切り捨てられてるんだよ。少なすぎて』

『………マジ?』

「…ギャギ?」

『うん、端数の切り捨てが起きてるらしい。宝箱発見、…薬草?』

『…もう俺より色んな事知ってるねリュート』

『チートすぎる左目のお陰だけどね』

『それにしてもゴブリン牧場か…、見たくもないし運営したくもないな。そもそもゴブリン牧場って言葉自体、注意した方がいいか微妙なところだね?』

「ギャギャ!」

『………確かに、それじゃG牧場って名『それはダメ!』あ、はい』


 いずれ経験値として飼われるかもしれない、そんな会話がされている事など理解していない…多分していないゴブリンは、襲っては倒されを繰り返していた。


 ちなみに、これもリュートにとって訓練となっている。

 ステータスを開放している状態であれば、そもそもゴブリンは逃げていく。大きすぎるその力の差を感じ取れる感覚はキラーアントよりもあるのだ。…キラーアントが無さすぎるのだが。

 リュートの行っている訓練は、ステータスのスムーズな開放と割合の調整、急速且つ狙った割合への上昇だ。提案したのは桜華である。


 緊急事態にいちいちステータスの開放を意識していては対処が遅れてしまう。何度も繰り返して体に覚えさせる事で咄嗟に動く事が可能となるし、戦いも楽になる。最弱に位置するゴブリンを相手に、比較的安全に行える訓練だった。


『…そういえばだけど』

『うん?』

『思い込んでたっていうか決めつけてたけど、私の寿命って長いのかな?』

『…俺に聞かれても』

「「ギャギャ!」」

『あはは、まぁそうだよね。システムさんが新種族って言ってたし、ドラゴンと同じくらいの寿命なのかな~?って思って』

『ドラゴンの寿命って分かってるの?』

『知らないし聞いてもないね。…聞けないよね普通、寿命ってどれくらいですか?なんて』

『…確かに。あ、左目で見れない?』

『いや、寿命がいくつなんて情報は無かったね。多分だけど、普通の人族よりは長生きしそうかな?』


 リュートの想像通り、その寿命は人族のものより遥かに長い。

 リュートがそれを知った時どうするのか、知る時が来るのか来ないのか、それはまだ分からない。



 相談や雑談をしながら、第一層から二層、三層へと訓練を続けながら進み、拠点のある第四層セーフエリアに戻ったリュートと桜華。

 早速ゲットした岩塩を料理に使用し、食事を終えると日課になりつつある雑談で仲を深め、その日の活動を終えて眠りについた。


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