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【200話突破】ジャガーバルト家の義妹  作者: もにーる
第三章 スタンピード編
20/243

2.オークロード

ラルフ視点が続きます。


 side:ラルフ・ジャガーバルト


 街の外へ出ると、森からうじゃうじゃとゴブリン共が出てきているのが見えた。オークの姿も確認した。

 最接近しているのはレッドウルフとブラックウルフか、さすがに早い。数が少ないのは幸いだな。

 銀の盾のメンバーがウルフ共のちょっかいを捌きながら街へ向かってきている。全員無事でほっとした。

 まずはこいつらを片付けてからだな。


「こっちだ! 街の中に向かえ、まずは回復しろ! 赤と黒は俺らに任せろ!」

「助かります!」


 ニックと俺でウルフ共を引き付け、スキル『ソニックスラッシュ』で真っ二つにしていく。この辺りが相手でもまだ大丈夫だな…。

 俺と同じくブランクのあるニックも問題なさそうだ。倒したレッドウルフ、ブラックウルフはどちらもアイテムと魔石をドロップして消えた。…こいつ等もダンジョンのモンスターなのか。

 厄介なウルフ2種を倒し、★3以上の冒険者にその場を任せて、一旦街の中に戻り銀の盾に話を聞いた。


「よく戻ってきてくれた。早速で悪いが、何があったんだ? あれらは全部初級ダンジョンから出てきたのか? 別の…中級以上のダンジョンを見つけたなんて事は?」

「分かりません。初級ダンジョン付近にいたんですが、何か…プレッシャーを感じました。ダンジョンからモンスターが出てきたのを目撃したので、対応しながら街へ戻ったんです。少なくとも俺達は他のダンジョンを見つけたなんて事はないです。あと地上のモンスターも混ざってます、数は少ないですが」

「そう…か、分かった。戻ってきて早々すまないが、回復が済んだらまた出てくれるか? 教会に街中のポーションを持ってきてもらっている」

「分かりました。行ってきます!」

「頼んだ」


 銀の盾の背中を見送った所で、ニックが声をかけてきた。


「…どう見る?」

「さぁな…、さっぱり分からん事だけは分かった。少なくとも初級ダンジョンにいるモンスターは1,000匹前後だろう。やれる事をやるだけだ」

「ふははは! 変わらねぇな領主様よ!」

「当然よ、さすが私の旦那様だわ」

「ミリア、お前も出るのか?」

「当然でしょう? あなたを支えるのは私の役目だわ。それに、ユートさんが帰ってきた時に街が酷いことになってたら悲しむでしょう?」

「がっはっは! そうだな、大変だったんだぞと言ってやらねぇとな!」


 ランクの低い冒険者達には、3人以上で行動する事、格上を相手にしないで★3以上の冒険者や俺達に任せる事など指示を出した。

 欲を言えばミュリアルがここに居ればよかったんだがな…、言ってもしょうがねぇ事だ。


「あたしもいるわよん? 先に行って蹴散らしてくるわねん!」

「中級クラスも混じってる! 気をつけろよ!」


 フランク…フランソワが先陣を切ってモンスターへ向かっていった。



 もう3時間は経ったか…、森へ近づき過ぎないように交代しながら戦い続け、一面魔石とドロップがゴロゴロ落ちている。

 これだけの数のモンスターと戦い続けた経験など、現役の時にも無かった。皆疲労が顔に出ている。


「おんどりゃああぁぁぁ!!」


 一人だけまだ元気いっぱいだったな…、あいつの体力はどうなってんだ。


 フランソワが最前線でモンスターを蹴散らし、銀の盾のやつらがあちこちフォローに回っている。パーティー名の通り守る事が得意なチームか、ミランダの加入でバランスが良くなってるな。

 シェリルは兵士と連携がよく取れている。一応は国に所属する兵士だからな、頼もしい娘だ。雑魚以外のモンスターもいるし、これだけ倒せばレベルも上がってるんじゃねぇか?

 ニックと俺は全体を見ながら危険度高めのモンスターを優先的に倒している。ミリアも魔術による遠距離攻撃で本来ここらに居ないはずのオークを優先で倒し、雑魚の固まっている所を範囲魔術で掃除している。


 戦線を上げては足元をさっさと片付け、けが人が出れば教会まで下がらせ治療している。幸いまだ死者は出ていないが、長い闘いにより集中力が切れて怪我をする者が増えてきている。まずい流れだ…。

 なのに住民はまだ誰も街から離れていっていない。戦闘系のジョブを持っていない住民も、何か出来る事をやろうと教会に居たり、アイテムをかき集めてきていたりする。戦闘には関わらせなかったが。


 それにしても、倒したモンスターは既に1,000匹を余裕で越えている。どころかその倍は倒しているはずだ。なのに森の方からはまだゴブリン共が出てきていやがる…。初級ダンジョンのボス、ゴブリンロードも出てきている。

 アレを倒せば好転するか?と思ったが、倒したところで状況に変化は起こらず、さっき5匹目のゴブリンロードを倒したところだ。なんでダンジョンボスがこんなペースで湧いて…。


「ラルフ! オークロードだ!」

「っ!」


 中級ダンジョンのボスじゃねぇか…、初級ダンジョンが中級ダンジョンに変わったか…? そんな前例は聞いた事がねぇ…。あいつを倒せば今度こそ何か変化が起こるか…?

 考えるよりまず動く事だ! 下手すりゃ死者が出る!


「フランクと銀の盾は周りを頼む! 俺達でオークロードを叩いてくる!」

「フランソワよ! あたしは行かなくていいの!?」

「ここを頼む。モンスターを俺達と街に近付けさせないでくれ」

「分かったわん! さっさと倒してきちゃって!」

「あぁ!」


 さっさと倒せるような相手じゃないんだがな…、膝ももう限界が近い。

 俺はニックとミリアと共に、オークロードの討伐へ向かった。



 オークロード


 オークの上位種であるハイオークの更に上に位置するモンスター、防御力の高さに加えて傷を再生するスキルを持つ。危険度のランクは6で、武器はこん棒や斧、槍を持っている事もある。

 身体の大きさは上位種になるにつれてでかくなる。オークが2m程度なのに対して、オークロードは4mを超える。

 ひたすら傷をつけてダメージを与え再生させ、その再生により更に減っていくHPを削り切れば終わりだ。…言葉にするだけならな。


「「『スラッシュ』!」」

「『ファイアーランス』!」


 ダメージを与えては再生させを繰り返す事15分。魔術によるダメージの方がでかいんだが、いつまで続くか分からないこの戦い、今ミリアに大技を使わせるわけにはいかねぇ。

 俺とニックが交互にオークロードの注意を引き、当たればふっ飛びそうなこん棒のぶん回し攻撃を避けながら、徐々にHPを削っている。


 見た事も会った事もないが、オークロードの更に上位種、オークキングはロードより全能力が大幅に上がり、『HP自動回復』というスキルまで持っているらしい。キングじゃなくて良かったと思っておこう。

 ってか詰むんじゃねぇか? どうやって倒すんだ?オークキングなんて…。高火力な魔術をぶつけ続けて強引に削り切───


「うおっと!」


 余計な事考えてる場合じゃねぇ、頭のすぐ近くをこん棒が通り過ぎていった。


「大丈夫か!?」

「あぁ、悪い。当たっちゃいない。あとどれくらいだと思う?」

「2割ってとこじゃないか? 中級のボスと同じならな」

「同感だ。あと少し、油断するなよ!」

「お前に言われたかねぇな!?」


 無駄口を叩きながら更にダメージを与えていく。


「一発でかいのいくぞ! 『ダブルスラッシュ』!」

「おう! そろそろだな! 『スラッシュ』!」

「『ファイ──」


 ミリアの魔術が撃たれる前にオークロードが倒れ、魔石とドロップを残して消えていった。やはりこいつもダンジョンのモンスターか…。


「…はぁ~~、疲れた。おつかれさん」

「さすがにオークロード相手に私達3人では時間がかか…、あなた!?」

「いや、大丈夫だ。ちょっとばかし膝がな…。一旦下がるぞ、さすがに回復してぇ」


 ニックに返事をしながら振り返ったミリアが、片膝をついていた俺を見て慌てたので、立ち上がって街へ戻るよう促した。直接ダメージを受けていなくても、疲労と膝の痛みによりHPは減っていた。

 正直もう家のベッドに転がって眠りたいところだぜ…。そういえばオークロードを倒した事で状況はどうなっ───


「………、ゴフッ!?」


 身体が押されたように前に進んだ、痛ぇ、ズリュッと音が聞こえた気がする、痛ぇ、ズドンッかもしれねぇ、痛ぇ、内臓をやられたのか?、痛ぇ、口の中に血の味が…、痛ぇ、痛ぇ、腹から槍が生えて…、痛ぇ………。


 耳鳴りと共に、すぐ近くにいるミリアの悲鳴が聞こえる。ニックが俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。下を見れば…腹から血に染まった槍が生えてた。

 オークロードを倒した事で気が抜けてたのか…情けねぇ…。

 俺が背後を振り返ると、こちらを見ている素手のオークロードがいた。2匹目…、あいつがやりやがったのか…。


「あぁ…ぁ…、ぁぁぁあ˝あ˝あ˝あ˝!!!」


 ミリアの悲鳴は叫びとなり、それに呼応するように魔力が高まっていくのを感じる。止めさせる前にその魔術は放たれた。


「『ボルテクス』!!」


 火系統の上級魔術『ボルテクス』

 ミリアが使える中で最高位の魔術がオークロードを襲った。高い火柱、50mは離れているここにも熱風がやってくる。ニックが俺の前に立ち、盾となって熱を防いでくれた。

 オークロードは激しい炎に焼かれながら再生を繰り返している。が、与えるダメージの方が大きく、15秒程でオークロードはドロップを残して消えていった。

 そして魔術を放ったミリアが倒れた、MPの枯渇による気絶だ。くそっ、こうならないように戦ってたってのに、ここで2人抜けるのはマズいぞ…。


「動くんじゃねぇ! ラルフの方が重傷だろうが!」

「父様! 母様!」

「ミリアは大丈夫だ、魔力枯渇…だと思う。俺はちょっと厳しいがな…」

「と、父様、今槍を…」


 俺達の状態を見てシェリルがやってきちまった。シェリルが震えながら槍を抜こうと手を伸ばしてきた。が、その手をニックが止めた。


「ダメだ、今槍を抜けば一気に血が流れ出ちまう。教会へ連れて行くのが先だ」

「なら「シェリル」…」


 私が連れて行く!とでも言おうとしたんだろうが、それはさせられない。


「シェリル、すまない。ニックと一緒にここを…俺の代わりに街の事を頼んでいいか? 傷を治したらすぐ戻ってくるからな」

「本当…ですね? いえ、任されました! 早く行ってください!」

「あたしもフォローするわラルフさん、だから絶対…ううん、早く帰ってきてねん?」

「あぁ、頼んだよ」


 シェリルとフランソワが戦線をあげ、そこにやって来た若い冒険者達に肩を借りて、ポーションを飲みながら俺とミリアは街へ戻っていった。

 痛ぇ…、よく我慢したよ俺は…。


「ゴフッ! ゲホッゲホッ!」


 十分距離が取れたと思ったところで、口元から血を流しながら咳き込んでしまう。娘に父親が口から血を吐き出す所を見せるのは酷だからな…。

 時間がないと思ってか「任されました!」と切り替えも早かった。実際時間は無ぇ、俺のHPは減り続けている…自分で言うのもなんだが、危険な状態だ。

 問題は…シスターの回復魔術では、おそらく腹の穴は塞がらねぇ。小さな傷ならともかく、穴を…内臓を癒すには…。

 俺達は街へ辿り着き、教会へ向けて進んでいった。


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