第一話 神を否定する力
第1章 選ばれた少年
この世界には、誰もが一つの力を持っている。
それは、人間が生まれた時から宿る特別な力。
人々はそれを――
能力
と呼んだ。
火を操る者。
傷を癒す者。
未来を少しだけ見る者。
料理を極める者。
能力には強弱がある。
しかし、この世界で誰もが信じていることがあった。
――能力は神から与えられた祝福である。
⸻
毎年、十六歳になる少年少女は能力を公表する。
学校では能力を使った授業が行われ、
能力によって将来が決まることも珍しくなかった。
強い能力を持つ者は称賛される。
珍しい能力を持つ者は注目される。
そして――
能力を隠す者など誰1人いない。
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「次の人」
白い部屋。
少年は椅子に座っていた。
名前は――
マイル
黒髪。
少し長めの前髪。
目立つことが苦手で、いつも静かな少年。
目の前には能力登録用紙。
そこには一つの欄がある。
【あなたの能力】
マイルはペンを握った。
しかし、書くことができない。
なぜなら、
彼は自分の能力を知っていた。
誰にも言えない能力を。
⸻
8年前。
マイルが8歳だった頃。
彼は偶然、古い本を見つけた。
祖父の家の地下。
誰も入らない場所。
そこにあった一冊の本。
表紙にはこう書かれていた。
『神に抗いし者』
その瞬間、
マイルの頭の中に声が響いた。
「選択する者よ」
「お前は世界を変える可能性を持つ」
その時、マイルは理解した。
自分の能力。
それは普通の能力ではない。
『神に抗いし者』
能力を選ぶ能力。
存在しない能力を、一時的に手に入れる能力。
使い方次第では最強にもなれる。
その代わり、
絶対に守らなければならないルールがあった。
⸻
一つ。
得た能力は3日間だけ使用できる。
一つ。
同じ能力を再び得るには条件がある。
一つ。
即死能力は得られない。
一つ。
自分の能力を知られた瞬間――
能力は消える。
そして最後、
神を肯定してはいけない。
⸻
マイルはその意味を知らなかった。
でも一つだけ分かった。
この能力は、
神に知られてはいけない。
⸻
「能力名を記入してください」
係員の声。
マイルはペンを置く。
そして普通の能力名を書いた。
【身体強化】
嘘ではない。
彼は実際に身体強化を取得したことがある。
でも本当の能力名ではない。
「身体強化……珍しくはありませんね」
「はい」
「神から授かった力を大切にしてください」
その言葉を聞いた瞬間。
マイルの手が少し震えた。
神。
誰も見たことがない存在。
しかし世界中が信じている。
能力を与えた存在。
でも、
マイルだけは違った。
彼の能力は、
神に与えられたものではない。
むしろ、
神に対抗するためのものだった。
____
春。
能力者育成学校。
通称――
神聖能力学園
「今日からここが新しい場所か……」
マイルは校門を見る。
全国から優秀な能力者が集まる場所。
ここでなら、
普通の人間として過ごせる。
そう思っていた。
「君、同じ一年?」
突然声をかけられる。
振り向く。
そこにいたのは、
明るい雰囲気の少女。
「私は上薔薇 光」
「能力は治癒」
「よろしくね」
マイルは少し驚いた。
彼女の笑顔は、不思議なくらい自然だった。
「あ……俺はマイル」
「身体強化」
嘘。
また嘘をついた。
しかし、
光は笑った。
「よろしく、マイル」
その瞬間、
マイルは知らなかった。
この少女との出会いが、
世界の未来を変えることを。
そして、
この学園から少し離れたところ、
マイルを監視するために送り込まれた少年がいた。
「対象を確認」
少年は通信機に向かって話す。
⸻
名前。
神村 信徒
能力。
能力無効化
______
「神様」
「命令通り、監視を開始します」
だが、
彼もまだ知らない。
数年後、
自分が一番信じることになる相手が、
今監視している少年だということを。
次回第二話
重力を操る少年




