1:Lostpunk2063
※本作の主人公は一切無双しないどころか、どんどん状況が悪化していく泥沼サバイバルしかしませんので、合わない方は引き返して下さい。美少女もスキルも転生もありません。逆にそれが見たい特殊な方はどうぞご自由に。
2063年、京都。
かつて古都が存在した街は、競い合って伸びる木のような高層ビルと、ホログラムとネオンの広告で埋めつくされている。
そのはるか下層の三条大橋を歩く見窄らしい男、遠藤 零士、33歳。
すれ違う若者たちが、スマートコンタクト越しに零士の過去の罪状データを読み取り、指をさして冷笑する。子供が親に聞こうとするやいなや、目を塞いで見せないようにする。
その視線は、土手で泣き叫ぶ失業者を見るよりも冷ややかだった。
「なあなあこれ見てみろよ。あいつら全滅したらしいで。」
「えーマジかよ。もっとあの島見たかったのに....」
一体何の話なのだろうか。周囲の目を気にしながら、独り言をつぶやく。
「こんだけあったら、3個ぐらい買えるやろ....しけてんなあそこ。」
零士は足早に目の前のコンビニに入っていった。自動ドアが開くと、3、4人が一瞬こちらを見て目を逸らした。汚らしいボロボロのTシャツ短パンを身に纏った男が入ってきたら、目を背けたくもなるだろう。
零士がおにぎりを選びながら、ブツブツ文句を呟く。
「はあ、あん時の女警戒しすぎやねん....もっとスっと金渡してくれや。」
零士は棚から手に取った鮭おにぎりと塩むすびを選び、叩きつけるようにレジに置いた。
店員は零士の身なりをを嘲笑するようににやけながら、バーコードを読み取っていく。しかし、彼の沸点は読み取れなかった。
その態度がどんどん零士を活火山へと近付けていく。
「袋はおつけ....しないかw どうせ10円も惜しいだろ。
その鼻につく態度が零士に火をつけてしまった。
「いい加減にしろよクソが!」
言葉と同時に、零士の拳が店員の顔面に食い込んだ。鈍い衝撃音が店内に響き渡る。店員は崩れ落ち、地面と愛を誓い合った。
零士は床に転がったおにぎりを拾い上げ、通報アラートが鳴り響く店を早歩きで出ていった。何故か殴った後に空を見上げながら、指をポキポキ鳴らしている。
「クソ....」
数時間後、少し離れた河川敷でおにぎりを食べていた零士は拘束された。
「で、俺はどうなるねん?え?」
長身の筋肉質な警官が、ニタニタと零士を押さえつけながら見ている。
「刑務所で安心安全と思うなよ。今からお前は留置所、その後しばらくすれば無人島や。」
1ヶ月後、留置所からの移送に使われたのは窓一つない、剥き出しの鉄板が冷たい簡素な輸送船だった。若干のカビと磯の香り、様々な人間から発せられる匂いが入り交じっている。
狭い船内には、零士を含めて5人の男女が押し込められている。船長が波の音を超える声量で言った。
「同じ犯罪者同士、自己紹介でもしてな!」
零士の左隣の痩せた中年男が最初に口を開いた。
「俺は陽翔。関わりたくは無いけどよろしく。」
「おいおい調子に乗るなよ。」
壁を強化アームで殴ったチャラくて若い男は涼と言うらしい。金髪の前髪を弄りながらイライラしているようだ。
「やめてよ怖いなあ。僕は悠介。無人島に行ってみたかったんだ。楽しみだなあ。」
反対側に座る眼鏡の陰気臭いデブが唯一の女をなだめている。
「本当に最悪最悪最悪最悪なんでこんなヤツらと.....」
ずっと不満げな表情を浮かべるお高くとまった女に悠介が聞いてみる。
「君は?」
「茜!それ以上喋らないで!!」
3倍の声量で返された。耳がキンキンする。
見過ごせないある違和感を感じた零士が聞いてみた。
「えーと陽翔やっけ? なんでそんなにケツをモゾモゾさせてるん?」
答えなかったが、なんとなく便意などという生温いもの(理由)ではなさそうな気がする.....
「あと、俺は零士や。」
そんな地獄の雰囲気が2時間ほど海を渡って輸送され、やがて重いハッチが開いた。潮の香りと、むせ返るような緑の匂いと湿気が流れ込んでくる。
零士は錆びたタラップを踏みしめ、砂浜に降り立った。頭にバンドで強く固定されたカメラは、その絶望的な光景を悪趣味な一般人に映像データとして送り続けている。
零士が広大な森と山を背に目の前の日本海に向かって叫ぶ。
「見てろよ! 俺は絶対帰ってやるからな! た、多分。」




