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異世界最高のギルドをつくろう!〜手持ちのスキルが強力すぎて、気づいたら孤児院のQOLが最強になっちゃってるんですが〜  作者: さかなかさ
2章

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21話



「シルキー!」



「おお、ハート。どうしたよ、落ち込みモードは終了か?」



ギルド宿舎への帰り、たまたまシルキーを見つけ話しかけると、そんな返事が返ってきた。シルキーにすら見抜かれていたのか、と恥ずかしくなる。


「うん、もう大丈夫。…すぐ、追いついて見せるよ。」



「ふーん、いい心がけじゃねえかよ。ま、出来るもんならやってみな。ウチは先行ってるからな。」



シルキーはにやりと笑ってそう言った。

負けたくない。掃討戦まであと5か月、それまでに15位以内に入り込む。そのためにやれることは何でもしようと、ハートは心に決めた。



「あのさ…シルキーはなんで掃討戦にそんなに参加したいの?ほんとに、生で王侯貴族を見てみたいっていうだけの理由?」



この一か月、聞くかどうか迷っていたことだ。単純な理由にしては、シルキーの熱量は尋常でないように感じた。すると、シルキーは照れくさそうにそっぽを向いた。



「…なんかわりーかよ?」




「いや、全然。なんとなく意外だなってだけ。」




「別に、ちょっとくらい貴族に憧れたっていいだろうがよー!私らとは違う次元のスキル、一度くらいお目にかかりてえじゃねえかよ!」



熱が入る少女の言動を見て、ハートはなんとなく微笑ましい気分になった。




(あー、市場で何か吹き込まれたのかな?)




シルキーは卸しの関係で市場に出入りすることが多い。なんだかんだ素直な彼女のことだ、そこで何か耳に入れたのだろうとハートは予想した。



「それによ…止まってちゃいけねえと思ったんだよ。」




「…?」



シルキーがそう続ける。ハートは思わず首を傾げ、シルキーを見つめた。するとその顔は、内心を語ることを恥ずかしげにしているようだった。




「私もハートもクソみてえなところにいただろ。で、今もあの国にはまだまだクソみてえな思いしてる奴がいっぱいいるんだ。だから……」




「シルキー…」



この子は、一体どれほど優しいんだろう。僕を救ってくれたその手で、シルキーは今また別の人を救おうとしているのだ。ハートは胸がいっぱいになった。

だったら、自分には何ができるだろうか。




「もし、シルキーが困ったり、挫けそうになったらさ。絶対僕が助けるから。」



「お、おい…急に何だよ!」



(それが、僕にできる精一杯の恩返しだ。)



「ミリアさんにも、カロンさんやエルクーツクさんにも、そしてシルキーにも、いつか必ず僕が役に立ってみせる。…だから負けないよ、シルキー!」



そう言うと、手を前に差し出す。この国では誓いを交わす時の儀式として、お互いの掌を重ね合わせるそうだ。


シルキーも、やや気恥ずかしそうにしながら掌を重ねた。




「必ず、2人で掃討戦に行こう!」




そうして入れ替え戦の日の夜、ハート達は改めて目標を掲げ直したのだった。




・・・



同時刻、団長室にて。



3回戦が終了した後、慌てて廊下に飛び出していったカロンのことを思い出して、ミリアはクスリと笑う。



「ほんと、誰に似たんだか。」



カロンはセリーシャと同い年の代であり、もともとは孤児院で畑仕事に携わる一員だった。私とセリーシャが冒険者として活動し始めた一年目、その後追いとして冒険者を志し始めた子が何人かいた。それが、グレイルやカロンなどの現幹部陣だ。




王侯貴族の遺伝子でステータスが伸びやすかったセリーシャや魔力の伸びが著しかったレオナに比べ、カロンのステータスはいい意味で平均的、悪く言えば長所のないものだった。




それゆえ、スキル非所持者がどう戦い、どう生き延びるかを誰よりも考え抜いていた。そうしてカロンがようやくたどり着いたのが罠師というジョブである。




自分と同じくスキルを持たず、ステータスの伸びにも特徴が出づらいハートには思うところがあったのだろう。





「ぜったいぜったい、ミリアの影響だよー。エル君もカロンも、みーんな後輩大好きで。」





唐突に後ろから声をかけられ驚く。背後を振り返ると、部屋の入り口にはレオナの姿があった。




「わっ、レオナ。お帰り、帰ってきてたんだ。大型の討伐、どうだった?」


レオナには、大型魔獣の討伐クエストをお願いしていた。



「紅蓮の迷宮」と呼ばれるリース有数の巨大な迷宮。

そこに強力な大型魔獣が出現したらしく、その討伐のため数日前に隊を編成し迷宮に向かわせていたのだ。




「討伐依頼は楽勝。ただ、ちょっと問題ありかな。というか、その報告に来たんだ。」




レオナの顔に陰りが見える。ミリアはレオナの方に向き直り、続きを促すようにその目を見つめる。



「……低階層で、身元不明の遺体が見つかったんだ。私の隊でも調べたんだけど、リースの冒険者には照合しなかった。」




「それじゃ、他国の冒険者ってことかな…?」




「恐らくね。で、その人たちの遺体の近くに、響かせ石が見つかったんだけど…」



そう言うと、レオナは腰に吊り下げた巾着袋から、小さな石を取り出した。それをそのままミリアに差し出す。


緑色で、宝石のようなそれは、ダンジョン探索で扱われる「響かせ石」だ。




手渡されたそれをそっと耳に近づけ、魔力を込める。


『〜〜〜!〜〜〜!…〜〜〜!』




石から聞こえて来る音声には地響きや戦闘音のようなものが入り込み、大変聞き取りづらい。その中で人が懸命に喋っている声が聞こえるのだが、どうやらこの国の言葉ではなさそうだった。



「リースの言葉じゃ無さそうだね。これ、なんて言ってるかレオナはわかる?」



「海を渡った東の大陸の言葉だそうだよ。私の隊に、父親がそこ出身だって子がいたんだ。」




レオナが響かせ石を指差す。



「仲間に警告を繰り返しているらしい。隊の子も完璧に聞き取れてるわけじゃ無いみたいだけど。」



「警告…内容は?」



「えっとね…」


コホン、と一度咳払いをすると、レオナは覚えてきたのであろう言葉を一言一句、漏らさないように話し始めた。



『逃げろ。「黄色い夜」がやって来る。洞窟の闇に忍び込め。音も、匂いもみんな殺してーー「黄色い夜」がやって来る。』


 

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