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#052 : 夫婦から、家族へ

 第52話:夫婦から、家族へ


 カレンと美咲は、再びいつもの配信部屋にいた。


 あの「イグニッション」のイベントから、もう一ヶ月が経つ。カレンは、勝利への執着を捨ててから、以前のような笑顔と明るさを取り戻していた。配信も、特定のゲームに囚われることなく、リスナーと楽しく雑談したり、新しいゲームに挑戦したりと、心から楽しんでいる様子だった。


「ただいまー!」


 カレンがそう言うと、美咲が笑顔で迎えた。


「おかえり、カレン。今日もお仕事、お疲れ様」


 美咲は、カレンのために温かいココアを用意していた。カレンは、美咲の優しさに触れて、ふっと息を吐き、ソファに体を沈めた。


「ありがとう、美咲。……ねえ、ちょっといいかな?」


 美咲は「うん」と頷き、カレンの隣に座った。


「あのさ……最近、私、VTuberとしての活動が、本当に楽しくて。なんか、以前よりもっと、心から楽しめてる気がするんだ」


 カレンは、そう言って、優しく微笑んだ。


「それは、よかった。でも、どうして?」


 美咲がそう尋ねると、カレンは少しだけ照れたように笑った。


「美咲のおかげだよ。あの時、美咲が私を救ってくれなかったら、きっと私は、今もゲームを楽しむことをやめたまま、苦しんでいたと思う」


 カレンは、美咲の手を優しく握った。美咲は、カレンの温かい手に、静かに頷いた。


「ねえ、美咲。私、決めたんだ」


 カレンはそう言って、美咲の瞳をまっすぐに見つめた。


「もう、『プロとして完璧でなければならない』っていう重圧は感じないようにする。ただ、私が心から楽しめること、そして、私を応援してくれるみんなが、心から楽しめることを、VTuberとしてやっていきたい」


 カレンの言葉に、美咲は、以前のような不安を感じることはなかった。


「うん。それが、一番だよ。カレンは、カレンのままでいてくれるのが、一番素敵だから」


 美咲の言葉に、カレンは胸が熱くなった。


「ありがとう、美咲……」


 その日の夜、二人は、今後のVTuber活動について、真剣に話し合った。


「ねえ、美咲。もしよかったら……これからも、ずっと隣にいてくれる?」


 カレンがそう尋ねると、美咲は少しだけ驚いた表情を浮かべた。


「当たり前だよ。私は、ずっとカレンの隣にいる」


 美咲はそう言って、カレンの手を、ぎゅっと握りしめた。


「私は、一人じゃ何もできなかった。でも、カレンと二人なら、何でもできるって思えた。カレンが困った時には、私が支える。私が困った時には、カレンが支えてくれる。私たち、二人で一人なんだよ」


 美咲の言葉に、カレンは涙を流した。


「美咲……ありがとう」


 二人の間に、これまでの友情を超えた、深い絆が生まれた瞬間だった。


 VTuberとして、そして一人の人間として、二人は、お互いの存在を、かけがえのないものとして受け入れた。


 ファンや業界からは「夫婦」と呼ばれ続けている二人。しかし、その関係性は、もはや恋愛や友情という言葉では言い表せないほど、深く、強いものになっていた。


 二人は、血の繋がりを超えた「家族」となっていた。


 カレンと美咲は、それからも、毎日を二人で過ごした。


 配信でも、プライベートでも、二人はいつも一緒だった。一緒にゲームをしたり、料理を作ったり、散歩に出かけたりと、何気ない日常を、二人で共有した。


 そして、美咲は、カレンを支えるために、VTuberとしての活動を、さらに精力的に行うようになった。


 カレンは、そんな美咲の姿を見て、胸が熱くなった。


「ねえ、美咲。昔、私が君に言ったこと、覚えてる?」


 カレンがそう尋ねると、美咲は首を傾げた。


「私が、君を幸せにするために、VTuberになったんだって言ったこと」


 カレンはそう言って、優しく微笑んだ。


「でも、それは間違いだった。君は、私を幸せにするために、私の隣にいてくれた。だから、私たちが、二人で、お互いを幸せにするんだ」


 カレンの言葉に、美咲は静かに涙を流した。


「うん……二人で、幸せになろうね、カレン」


 二人は、そう誓い合い、固く抱き合った。


 二人のハーモニーは、これからも、ずっと響き続ける。


 夫婦から、家族へ。


 二人のVTuberとしての物語は、今、新たな章の扉を開けた。

読んでくれてありがとうございます

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