第37話(最終話) 公爵令嬢、反乱軍に下賜を遣わす
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※第3部だけでも読めます。
「フィヨルド王はやはり逃げおおせたようです。見事な勝利にございました。ガストーネ『陛下』、フィヨルドの新王への即位、心よりお祝い申し上げます」
何の成果もなく、フェンリル・ベルク要塞へと帰還したガストーネを迎えたのは、引き続き帯同していたユンバスであった。
「勝利…勝利か…」
何の実感も湧かぬ。
我はただ、グルンクルス会戦の一度に勝利したのみ。その後は、全て負けた。
王に追いつけず、王女に翻弄され、アリアに出し抜かれた。
我は一体、何のためにこの極寒の地まで…。
「ガストーネ様、申し上げたき儀が」
将校の一人が申し出た。
「なんだ?」
「極寒の強行軍に、兵らが疲れ果てております。つきましては、地下倉庫にございました、珍妙なる瓶の使用を許可頂きたく」
「略奪は禁じておるぞ」
「は、ですが…その…略奪ではなく、下賜であると…兵らが騒いでおりまして…」
「どういうことだ?」
嫌な、予感がした。
「我が行く。案内せい」
案内された地下倉庫は、凍えるように寒かった。一室は古い武具の保管庫となっている様子。そして、もう一つの倉庫には。
綺麗に整頓された、ワイン瓶が並べられていた。
「はて…ワインでございましょうか?」
ユンバスが首を傾げる。
だが。
「ふ…はは…ははは…ふははははははは!」
ガストーネが笑った。
案内した将校が身を引くほどに、悲痛なほどに、笑った。
「わ、我は…我は負けたのだな! 戦術に勝って、王器に負けたのだ! ユンバスよ、今後二度と我を『陛下』と呼ぶことを禁ずる! 国王はやはりエドワルド王よと、そう言いたいのだろう、ヨハン! 貴様との決着をつけるまで、俺はこのフィヨルドを預かろう。今後は執政と呼べ、分かったな、ユンバス!」
その壁には、三つのメッセージが残されていた。
此度の極寒の遠征、誠にご苦労様でした。
これはエドワルド国王陛下からの下賜品である、『瓶詰』ですわ。
こちらで身体を温め、英気を養い、故郷まで気を付けて帰られますよう。
国王陛下の名代として、心よりお祈り申しますわ。
フィヨルド第一王女 フロリーナ・フォン・フィヨルド
これは私が発明した、瓶詰という世紀の発明よ!
ひと瓶を2倍か3倍の水と混ぜ、塩を落とした干し肉と一緒に煮込むの。
ちょっと匂いがきついけれど、慣れれば美味しく食べられるわ。
どうしても匂いが気になる方は、お酢を追加で混ぜてね。
逆に、酸味が強くて苦手な方は、重曹を入れて頂戴。味が中和されて、美味しくなるのよ。
最近気づいたのだけれど、重曹と堅パンを一緒に煮込むと、パンがもちもちして、独特の食感になるの! ぜひ試してみてね。
アリア皇国 シャルロイド公爵家
フランソワ・アリエル・ド・シャルロイド
ガストーネよ。
グルンクルス会戦の決着は、いずれつけようぞ。
今は我らが誇る「現代の女子ら」が用意した瓶詰を堪能すると良い。
それから、ベルク郷紳に尋ねよ。ワインのいくつかは祝い代わりに貴殿へくれてやる。
忠告であるが、ビザンティオンとつるむのも程々にせよ。
ビザンティオンにはこの瓶詰も、地平線まで裸眼のごとく見通せる『フェンリル型望遠鏡』も無かろうて。
フィヨルド王国辺境伯 ヨハン・フォン・フェンリルベルク
第三部 完
第四部 異端尋問編へ続く
【お知らせ】
ここまでお読み頂いてありがとうございました!
第一部より、シリーズとして分割投稿していましたが、今後のプロット状況を踏まえると相当な大長編になる見込みとなってまいりました。そのため、皆様により一層快適に一気読みしていただけるよう、一旦『理外令嬢』シリーズを整理・統合いたします。
具体的には以下の通りとなります。
・第一部 … 序章、あるいはプロローグ編として独立
・第二部 … 本編第一章として再構成(★今後のメインページとなります)
・第三部(本作)… 本編第二章として上記メインページへ移行し、再構築します。
つきましては、現在の『第二部グランド・ディベート編』のページを今後の主軸とし、こちらの第三部は将来的に削除を予定しております。
引き続き物語を追っていただける方は、大変お手数ですが、ぜひ以下の【新メインページ】のブックマークをお願いいたします!
▼『理外令嬢』新メインページ(※旧・第二部)はこちら
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なお、あわせて4月25日より連載予定だった『第四部:異端尋問編』につきましては、ページ改修完了後、5月8日からの連載開始を予定しております。
ご迷惑をおかけして誠に申し訳ありません。
改修が完了いたしましたら、当該あとがきの更新、あるいは活動報告にてご報告いたします。
フランソワの活躍はまだまだ…かなり続きます!
引き続きよろしくお願いいたします。




