第12話 入学前
ずっと来たかった念願のお店に行くことが出来、美味しいスイーツも食べられて、非常に満足だわ。
「王都って色々なものがあって凄いところね」
翌日もお父様おすすめのお店を何件か案内され、何かを買う時はお父様の名前を出すように言われる。
「服とか靴とか、必要なものは何でも買っていいからね。困った事はお父様にすぐ言うんだよ」
それと共に、怪しいお店には入らない事、知らない人にはついていかない、物をもらわないようにと伝えられる。
「リーレンも一緒ですし、大丈夫ですわ。それにディフェクト様達もいらっしゃいますから」
「それでもだ。決して危ない所にはいってはいけないからね」
口酸っぱく言われ、その度に頷く。
お父様が心配してくれる気持ちもわかるけれども、何度も言われるのもちょっと……大変かも。
でもずっと外に出ず、家で過ごしていたのだから不安に思うのも無理ないわよね。まずは私がしっかりしないと。
(お父様とお母様に安心して過ごしてもらえるよう、早く一人前になりたいわ)
決意を新たに奮起する。
そしてとうとう入学の日となった、ついに学園生活が始まるわね。
お世話になった宿のオーナーに挨拶をし、両親と共に学園へと向かう。
「荷物などはあたし達が移動しておきますので、お嬢様は学園へ向かってくださいね」
リーレンや他の使用人とは学園の近くで別れる事となった。
リーレン以外の者は荷物の移動が出来次第、お父様達と共にシルバーニュ領に帰ってしまう。それまでしばらくお別れになるわ。
寂しいけれど数年の辛抱ね。長期休み絶対にシルバーニュ領に帰ろう。
「それにしても人がいっぱいね」
まだ入り口なのだけれど、門の前には沢山の人が溢れていた。
学園には色々なところから人が来ると聞いている。他国からの留学生や様々な領から多くの人が訪れると。
肌や髪の色から色々なところから集まってきたのがわかった。中には平民の者もいるらしい。
生活が違うのだから文化も違うだろう。失礼のないようにしなくちゃ。
「能力があるものは歓迎だ、共にこの国を支えよう」
国王陛下のそんな計らいにより、入学に際しては狭いながらも門戸を開いているそうだ。
もちろん入学金や授業料もそこそこ高いけれど、それでものし上がろうとするものや、将来良い職について家族を支えたいと思う者も多かった。
中には否定的なものもいたが。
「こんな監獄のようなところに来たくなかった……」
自分の気持ちとは裏腹に入れられた者もいるようだけれど、エストレアにはどうしようも出来ない。
「私も一歩間違えたらそうだったから……」
ディフェクト様とイティルラ様がいるから、入学に対して嫌な気持ちはないけれど、独りであったらだいぶふさぎ込んでいただろう。
(みんな色々な事情があるものね)
一律には行かないだろう、エストレアとて本来は勉強などきらいだ。
けれど、ディフェクトの為にと頑張ってこれた。
「でもみんなキラキラしていて、圧倒されちゃうわね」
自分のように成り上がりではない、身分の高い人ばかりで気おくれしてしまう。
ドキドキしながら向かっていると、突然馬車が止まる。
「何かあったのでしょうか?」
聞くところに寄ると、馬車を停めるところに長蛇の列が出来ているそうだ。
時間に余裕を持って来たからいいけれど、こんな所で時間がかかるとは思っていなかったわ。
(それだけこの学園に通う人がいるという事よね)
もうすでに尻込みしてしまう、この人波にもまれるのを想像するだけで、身震いしてしまうわ。
(うぅ、緊張してきたわ。でも頑張らないと)
ようやく降りることが出来たけれど、長時間待っていた間に緊張感がピークに達して、既に疲労困憊だわ。
余程疲れた顔になっているのか、周囲からもひそひそされている。
(居心地悪いなぁ)
出来る限り目を合わせないようにしながら、いざ学園の門をくぐる。
「エストレア!」
聞きなれた声が耳に入り、私は声のした方に目をむけた。
そこには会いたかった人の姿が。
「ディフェクト様、イティルラ様」
駆け寄りたかったけれど、さすがにそれははしたないわね。
「ご機嫌麗しゅうございます、体調などはいかがでしたか?」
「少し緊張していたけれど、エストレアの顔を見てと手も元気が出たよ。凄く綺麗になったね、会えてとても嬉しい」
ディフェクト様に手を握られ、顔が熱くなる。
(ディフェクト様、以前お会いした時よりもだいぶ背が伸びているわ)
一年前よりも身長が高くなっている。以前は同じくらいだったのに、見下ろされる程になった。
そして顔立ちもとてもかっこよくなっていて、直視するには眩しいくらい。
(以前からかっこよかったけれど、ますます美しくなってるわ。王妃様の血筋なのかしら)
王妃様の見目はとても良いと評判である。
(ディフェクト様とイティルラ様をみたらわかるわよね、絶対に美人だって)
絵姿でしか拝見していないけれど、二人の母親だと思えば想像は付きやすい。
ちらりとイティルラ様を見ればイティルラ様もとても麗しく成長なされていた。
(なんというか、妖艶な美が追加されている?!)
それまでも綺麗ではあったのだけれど、年を重ねたからか、大人っぽさが増えていた。
「ディフェクト、軽々しくエストレアの手に触れないように。ガサツなあなたが触れてはエストレアにガサツがうつるかもしれませんから」
そう言ってイティルラ様も私の空いている手を握る。
「少し会わない間にとても綺麗になっていて驚きましたわ。ずっとこの日を待ちわびていたの。今日からわたくしと共に頑張りましょう」
「は、はい!」
同じ学園に通うものとして、助け合っていかなくてはいけないものね。私はこくこくと頷いた。
「両殿下は相変わらずですな」
お父様の朗らかな声に場が和む。
「すみません、ずっと待ちわびていた瞬間でしたので、触れてしまいました。妹の非礼をお詫びします」
「詫びるのはそこではないわ。軽率に触れたディフェクトの責任よ」
お互いに罪を擦り付けるような素振りにくすりと笑ってしまう。
「二人の気持ちは嬉しいわ。でもここから色々な人との交流も始まりますし、目立つことは止めましょう」
既に視線はあちこちから刺さっているけれど、このままでいいわけではない。
二人の手をやんわりと外す。
「まだまだ時間はありますもの、ぜひ三人で充実した学園生活を送りましょう」
「出来れば二人でが良いけれど、エストレアがそう言うならば」
「エストレアがいうのなら、わたくし頑張りますわ。不肖の兄に負けないように」
変な敵対関係になっているようだけれど収まったなら良かったわ。
どちらも大切な人だから、いつか仲良くなってくれるといいわね。
◇◇◇
三人で仲良く歩いている後ろに不穏な影。
それはエストレアを傷つけた、あのお見合い相手だ。
「あのぽっちゃりが……嘘だろ?」
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