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ひきこもりぽっちゃり令嬢とウールドール ~人形がつなぐ優しい恋~  作者: しろねこ。


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第11話 初訪店

「わぁ、凄い……」


 私のウールドールが本当にお店に置かれているのを見て、甚く感動してしまった。


 王都に来た一日目、私はずっと来たいと思っていたお父様のお店に連れてきてもらったのだ。


(ずっと来てみたいと思っていたのよね)


 話に聞いてはいたけれど、自分の目で直接見るのとはわけが違う。今日来られて本当に良かった。


「お父様連れて来て下さって、本当にありがとうございます」


「こちらこそありがとう。エストレアのウールドールはこの店の目玉商品でもあるからね、いつも助かっていたよ」


 こそっとお父様がお話してくれる。


 私が作っているのだという事は外ではお話しちゃいけないわね、私は慌てて口を閉じた。


(誰にも聞こえてないわよね)

 

 周囲を見るが皆商品を見るのに夢中で気付いていないようだ。


 お店にはたくさんの女性が来ており、その年齢層は様々である。けれど一つ共通点があって来店した人達は皆笑顔だった。


(こんなにもたくさんの品物があるお店で、私のウールドールを購入してくれる人がいるなんて)


 そう考えるとこそばゆい。そわそわとした気持ちになりつつ、私も他の人と同じように店内を見て回った。


 ウールドール以外の商品も充実していて、どこをみたらいいか少し悩んでしまうわ。


 ブレスレットやイヤリング、ネックレスなど様々な装飾品が置いてあった。


「本物の宝石を使用していますが、規定から少し外れたものが多いのでお求めやすい価格になっていますよ」


 店長さんが説明してくれるけれど、イマイチぴんと来ない。


(これくらいだと、私でも買えるのかしら?)


 そもそも自分で買い物をしたことがないので何ともわからないのだ。


(欲しいものがあるならお父様が出してくれると言われたけれど……)


 とりあえずもっと見て回ろう。


 見た事がないものが多く、見るだけでも楽しい。これだというものがまだ見つかっていないのもあり、ついあちこち目移りしてしまう。


 そうしてまわっている内に心惹かれるものに出会えた。


「ここ、すごいわね」


 ひと際人気のブース見つけ、近づいてみるとそこにはウールドールが置かれていた。


 私もウールドールを作るけれどアニマル系が多い、ここのブースにあるのは女の子がメインで、それもとびきり可愛らしいものばかりである。


「これ、誰が作ったんだろう」


 繊細で丁寧で、私が作っているのとはまるで違い、表情が豊かな子達ばかりだ。


「こちらはトリシュさんの作品ですね」


「トリシュさん?」


「あちらのアニマル系も人気ですが、トリシュさんの作品も希望される方が多いです。自分用だったりプレゼント用だったり、購入される方が結構いらっしゃいますよ」


「そうなんですね」


 私も皆に混じってトリシュさんのウールドールを手にする。


 どことなくイティルラ様に似た女の子のドールと、ディフェクト様に似たドールを見つけそれを買う事にした。そちらもドレス姿だけれど、概念という事で良いかしら。


「お父様、こちらが欲しいです」


「とても可愛らしいウールドールだね」


 お父様が店長にウールドールの購入を伝えると、すぐに包んでくれると言って、預かってくれた。


 その間お母様が小声で驚くべきことを教えてくれる。


「昔エストレアにウールドールの本を渡したでしょ? トリシュさんってその本を書いた人なのよ」


「え?」


 私はびっくりした。それはいわば師匠という事ではないか。


「トリシュさん、いえトリシュ先生にいつか会ってみたいな」


 今ならディフェクト様とイティルラ様の気持ちがわかるわ。


 こんな素敵なウールドールを作る人ってどんな方なんだろう、一目会ってみたいなぁ。


「忙しい人だから、難しいかもしれませんね。あ、でも今度の販売会に来るそうだから、その時なんていいかもしれませんよ」


「販売会?」


 包み終えたウールドールを受け取りながら、店長さんに詳しい話を教えてもらう。


「自分で作ったものを売りに出す会の事です。お店に出している人も素人の人もいる交流会のようなものですね。興味があるならぜひこちらをどうぞ」


 販売会の日時や出店される達の名前が書いてあるパンフレットをもらう。


 それにはウールドールの他、フェルトマスコットやぬいぐるみなども出されるという情報も書かれていた。


「わぁ、楽しみです」


 数か月先の事だけれど、今からワクワクだわ。


(ディフェクト様とイティルラ様も誘ってみようかしら)


 二人も可愛い物が好きだと話していたし、喜んでくれるかも。楽しみ過ぎてワクワクする。


「ありがとうございます、ぜひ行ってみたいと思います」


「えぇぜひ」


 お店を見て回った後は、お父様おすすめのおいしいスイーツの店に行く。


 メニュー表には綺麗でおいしそうなものばかりがあって、なかなか決められないわ。


「食べたいものがあるならばいくら頼んでも良いんだよ」


 お父様はそう言ってくれるけれど、折角ダイエットしたのだから、リバウンドはしたくない。それにまだ痩せた姿をディフェクト様に見せてないのだから、ぽっちゃりに戻るわけにはいかないのだ。


 迷った末に、果物がたっぷりと乗ったフルーツタルトと紅茶をお願いした。


 お父様は生クリームたっぷりのショートケーキを、お母様はオペラを頼む。


 届いたものはどれも美味しそうで綺麗で、絵に残したいくらいだわ。


「どれも美味しそう……」


 届いたケーキ達を見て、思わずうっとりと見つめてしまった。


 タルトの上にはイチゴにブルーベリー、そしてマスカットなどがたくさん乗っている、どの果物もキラキラしていて、宝石箱のようだ。


 お父様のショートケーキは生クリームが凄いボリュームだ。でもかかっている粉糖のおかげで上品さも感じられる、なんだかスノードームの得お思い出すわね。


 お母様のオペラは層がとても綺麗だし、上にかかっているチョコのグラサージュの艶が高級さを感じるわ。これもまたおいしそう。


「さぁ頂きましょう」


 お母様の促しに私はフォークを入れた。


「瑞々しくて美味しい~」


 フルーツは新鮮だし、その下のカスタードも甘くておいしいし、ぜひまた来たい味ね。


(そう言えば昔ディフェクト様とイティルラ様への誕生日に、似たようなものを作ったなぁ)


 チェリちゃんと果物盛り合わせのウールドールを、お祝いで贈ったのを思い出す。


 そう言えばそのウールドールが話をしだしたというのは聞かなかった。


(何でかしら?)


 私が美味しいタルトと紅茶を楽しみながら、そんな事を考えていると、いつの間にかお父様とお母様がお互いのケーキを食べさせ合っているのに気が付いた。


(二人共いつまでも仲が良くていいなぁ。私も将来ディフェクト様とあんな風になれるかしら)


 ディフェクト様は優しいから、もしかしたらしてくれるかも……?


 想像すると恥ずかしいけれど、いつか出来たらなぁ想像してしまう。


(早く会いたいな、痩せた私もぜひ見てもらいたいもの)


 もうすぐね。


 家族で過ごすのも楽しいけれど、ディフェクト様とイティルラ様に会えるのも待ち遠しいわ。


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