百均店長、 冒険者ギルドに行く。
肉屋のアツィオさんに連れられて冒険者ギルドにやって来た俺とテルさん。
こっちに来て何度も思った事だけど、冒険者ギルドの見た目はやっぱりテンプレ。
もしかして異世界モノのラノベ作家とかゲームクリエイターって本当に異世界に来たことあるんじゃないかと思うくらいどれもこれもがイメージ通り。まあ、俺の個人的な感想だけどね。
俺がそんな事を思っていると、アツィオさんは建物の中に入るなり
「買取の担当者を呼んでくれ!イイから早く!!」
と、受付のお姉さんにまくし立ててる。お姉さんはアツィオさんの勢いに押され、返事もそこそこに奥へと消えていった。
暫くすると、カウンターの奥から一人の男性が出てきた。
「買取希望の方はどちらです『こっちだこっち!』か」
アツィオさん、食い気味に返答。どんだけせっかちなんだか。
「ああ、アツィオさんでしたか。買取のご相談とは珍しいですね。とりあえずお話を伺いましょう」
冒険者ギルドの買取担当の人だろうか。小柄な男性が人懐こい笑顔で応じてきた。
「ユーリ!頼みがあるんだ。こっちの兄ちゃん達がウチに持ち込んだもんを買い取りてえんだが、こないだ大物を仕入れたばかりで資金が心許ないんだよ。ウチと共同で購入しちゃくれねえか?」
ユーリと呼ばれた係の人、アツィオさんの勢いにも動ぜずニコニコと笑顔のまま。冒険者ギルドの人だからゴツイおっさんの扱いにも慣れてるのかな。
「ほう、アツィオさんがそんなに興奮する程のものですか。それは一見の価値が有りそうですねえ。で、お持ち込みの商品はどちらに」
「それなんだがここじゃ狭すぎて無理だ。裏の解体場で見てくれねえか」
「そうですか・・・、それでは此方へ」
いきなりここじゃ無理とまで言い切るアツィオさんの言葉に、一瞬胡乱な目つきになるも直ぐに元の笑顔になり俺たちを解体場へと案内してくれた係の人。プロだな。
「兄ちゃん、じゃあアレを出してくれ」
アツィオさんに言われるまま俺はレッドボアを収納魔法から取り出した。
「これは凄い!レッドボアです・・よね?ここまで大型なのは私も初めて見ました。此方の方が狩ってこられたのですか?」
「そうなんだよ。俺も最初見たときはたまげたぜ!でな、さっきの話の続きだ。是非とも買い取りてえんだが資金が心許なくてな、冒険者ギルドと半々か6:4で買い取れねえかと思ってな。どうだ、引き受けてくれねえか」
「もちろんです。此方からお願いしてでも買い取らせて頂きたいですね。これは!」
ユーリと呼ばれた係の人も興奮を隠せないようだ。テルさんがあまりに簡単に仕留めちゃったからこっちの世界では普通なのかと思ったけどこっちでも規格外の大きさだったみたいだ。
なんて考えてたらユーリさんが徐にこう言ってきた
「これほどの大物です。どうでしょう、金貨50枚では」
金貨50枚と言われても俺にこの世界の金銭感覚なんてある筈もなく、返答しかねているとアツィオさんが
こう言い始めた。
「いやいや、普通のレッドボアでも金貨25枚はするんだ。コイツを見てみろよ!ぱっと見だけでも普通の大きさの3倍以上はあるんだぜ!60枚、・・いや75枚はするんじゃねえか?」
そうアツィオさんに力説され少々困り気味のユーリさん。少し考えたあと、
「確かに大きさだけなら3倍以上でしょう。だからといって3倍の値がつく訳でもないんですが・・。ですがこれほどの大きさ。当ギルドの資料を振り返ってみてもあるかどうか。ぜひ買い取りたいのは山々なんですが・・」
また少し考え込んだ後、ユーリさんがこう切り出した。
「これだけの大きさです。もしかすると魔石持ちかも知れません。一度解体させて頂いて、魔石が入っていたら金貨100枚、入っていなければ60枚。これでどうでしょう」
「うーむ。そうだな。それなら良いかもな。なっ!兄ちゃんたち、それで良いかい?」
アツィオさんが俺の背中をバンバン叩きながら聞いてきた。
「良いも何も俺が狩った獲物じゃないんで。テルさん、どうかなギルドの方の提案通りで良い?」
「ふむ。ワシらはそれを売ってしばらくの間の宿と飯を確保したいのでな。ご両人の裁量の範囲で出来るだけ高値く買ってくれればそれでエエよ。あ、それと此処で身分証を作れると聞いたんじゃが、買取金額が決まったならそれから差し引いてくれるかの」
テルさんの返答にユーリさんはニコリとしてこう応えた。
「身分証の作成ですね。それではその様に。私どもはレッドボアを解体して参りますので、その間に手続きを致しましょう」
そう言い、ユーリさんは受付の女性を呼び出し俺達を案内させてくれた。
これで今夜の宿も食事もなんとか確保出来そうだ。良かった良かった。