部室探し
昼休み。初瀬は、廊下を彷徨っていた。
みやこ高校にはクラブの部室だけが集まる部室棟があり、目指す忍者部の部室も、クラブ棟の中にあると目して建物に入ったのであるが……
4階建てと無駄に広い部室棟は、部屋の数が多い。その割に、どこにも案内表示がない、という不親切な仕様だ。昔からのクラブはアクセスのいい場所にあると踏んで、4階の奥の方から探したが、なかなか見つからなかった。
道行く人に聞いても、
「忍者部? そんなのあったっけ?」
という反応ばかりで、全く認知されていなかった。
2階の廊下まで降りてきたとき、西洋の貴族のような衣装を着飾った集団に遭遇した。その後ろには、「演劇部」のプレートが見えている。どうやら、昼の練習をしていたらしい。
「やっほー、ハツセ君。こんなとこで、どうしたの?」
その中の一人が、初瀬に声をかけた。副会長の春日市歌であった。おとぎ話のお姫様のような、キラキラしたドレスがよく似合っている。
「忍者部の部室が見つからずに、ウロウロしちゃってまして。」
「忍者部……? ああ、メイちゃんのとこに行くの? じゃあ、私が案内してあげよっか。」
演劇衣装のまま、初瀬の腕を取って、ずんずん進もうとする市歌。初瀬はとりあえず、市歌を引き留めた。
「副会長、いいんですか? 練習されていたんじゃないんですか。」
「いいのよー。今日は衣装合わせだけだったしね。部室があんまり広くないから、こうして、廊下で作業をすることが多いの。ちょっと待っててね。断りだけ入れてくるから。」
そう言い置いて、市歌は、演劇部の集団に戻った。演劇部の女性陣が、興味津々という感じで、初瀬を見ていたことに、初瀬は、気づいた。
「ごめーん、ちょっと人を案内してくるよー」
「ねえ、あの子、誰なの? 一年生でしょ。」
「初めて見る顔よね。」
「生徒会の新しい役員なの。」
「生徒会に、あんな子が入ったんだ。なかなか、可愛いじゃない。」
「ねえ、もう食べちゃったの?」
「ええー、さすがの私も、まだ何もしてないわよー」
(「まだ」ってどういうことだよ……)
さすが演劇部員とでも言うべきか、声の通りがいい。全部の会話が筒抜けであった。
昼からどっと疲れた初瀬であったが、市歌に連れられ、部室棟の1階の廊下に到着した。12時30分を過ぎ、窓の外のグラウンドからは、運動部の練習の声が聞こえるようになった。
「忍者部の部室は、1階なのよー」
「割と、いい場所にあるんですね。」
初瀬は廊下をきょろきょろと見回した。何の変哲もない廊下が伸びている。1階だけでも、10以上のクラブの部室がある。忍者部の部室は、その中でも、一番奥の部屋らしかった。
「そうね。でも、入口から遠いし、日当たりも良くないしで、あんまり人気はないのよ。上の階の方が、眺めもいいしね。さあ、着いたよ。ここが、忍者部。」
「ほう……何ていうか、割と普通ですね。」
部屋の表示は、プラスチックのプレートに、「忍者部」と書いた紙が貼りつけてるだけであった。ドアも、他の部屋と同じドアである。
「普通で悪かったね。とりあえず、入ってよ。」
急にドアが開いて、明弧が姿を現した。相変わらずの、忍者装束だ。初瀬はかなり驚いたが、市歌に促されて、ともかくも部室の中に入った。
「えーと、中も割と……その、落ち着いた感じやね。」
「私も、この部屋のコンセプト、知りたいわ。」
部室の内装についても、初瀬と市歌から、ツッコミがあるようであった。
忍者部の見学まで進むつもりが、到着までで終わってしまいました。
ここまで書いたところで、忍者部って、そもそも、存在するんだろうかと思って調べてみました。すると、ちゃんと青森大にありました。いやはや、日本は広いですね……




