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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第八十六話 真柴悠人

クラリーネは山の中を駆ける。


必死の探知で見つけた場所は街とは反対側にある山の中だった。おそらく、薬草を探しているのだろう。


クラリーネは市街地を迂回して走っている。何故なら、市街地には誰かわからないが強大な力を持つ者が走り回っているからだ。主に市街地と避難所を往復しているようだが、出会った場合はクラリーネの実力ではどうにもならない。


「都、ごめん」


クラリーネは胸の中で都に謝る。もう、千春に戻る気はないから。


「琴美は、いた」


クラリーネの頸線の一本が琴美を見つけた。そのままクラリーネは地面を蹴って琴美の場所に向かう。


「出会い頭で殺す。一撃で。痛みを感じさせないまま」


頸線から槍を作り出し琴美に向かって飛びかかろうとした瞬間、横手から魔力エネルギーの塊がクラリーネに向かって放たれた。


あまりの予想外の一撃にクラリーネはギリギリで受け止めるが弾かれてしまう。


そのままクラリーネは地面に転がった。


「誰!」


相手を確認する暇なく収束したエネルギーがクラリーネに迫る。クラリーネはそれを槍で受け止めた。


前にいるのはまだ子供だ。平均身長より低い周よりも小さい子供。完全に小学生。


その小学生が身につけているのは下半身が極めて大きなパワードスーツ。背中には翼のようなものがついている。ただし、クラリーネが知るサイズよりも五回りくらい小さい。


その手に握られているのは背中にパイプが繋がって円筒。そこから収束した魔力エネルギーをクラリーネは受け止めている。


「琴美さん! 急いでください!」


「わかったわ」


クラリーネが距離を取る。対する相手は動いてこない。


「君は、誰?」


「僕の名前は真柴悠人。『ES』穏健派アル・アジフさんの直属部隊」


「どういう意味?」


クラリーネが眉をひそめると悠人は首を傾げた。


「名乗るならこう言えって教えられたようにやったけど?」


悠人自身意味を理解していなかった。クラリーネは悠人に向かって槍を構える。


悠人を無視して琴美に攻撃しようとすればクラリーネはやられる。悠人は円筒からライフルに持ち替えているからだ。


受け止めた時の収束率から考えて頸線でそらすことは不可能。


「倒すしかないか。魔界五将軍の一人『水帝』。行くから」


クラリーネが地面を蹴る。悠人はすかさずライフルの引き金を引いた。だけど、クラリーネはそれを避けて槍を突く。腕を動かした悠人が槍を受け流した。


「もらった!」


クラリーネの手が悠人のかぶっているメットに触れる。


「ハッキング!?」


悠人はすかさず逆噴射を使ってクラリーネから無理やり距離を取った。クラリーネは逆噴射の勢いに弾かれる。


「単発だと当たらないなら」


その間に悠人はすごい速度でライフルの一部を操作する。クラリーネはその隙に一気に踏み込んだ。


精神操作は出来ない。だから、槍で殺す。


悠人がライフルを構える暇なく距離を詰め、槍を突く。クラリーネの知るパワードスーツなら絶対に避けられない攻撃。でも、悠人は避けた。


悠人が浮いたと思った瞬間、その場で回転する。よく見ると背中の翼からエネルギー粒子が溢れていた。悠人は片手で槍を掴みつつエネルギー粒子の方向性を変えてクラリーネを蹴りつける。蹴りつける際も太もも部分からエネルギー粒子が溢れて加速した蹴りだ。


クラリーネはとっさに腕で受け止めるが腕が折れる音と共に吹き飛ばされる。


「かはっ」


地面を転がりながらクラリーネは肺の中の息を吐いた。


完全に油断していた。相手のパワードスーツは今までに存在したパワードスーツとは桁が違う。理想に最も近い戦場で使えるパワードスーツ。


クラリーネは槍を頸線に戻してその頸線を槍に再度戻して手に持つ。


悠人はクラリーネにライフルを向けていた。


「本気、行くよ」


クラリーネが静かに槍を片手で構える。本気でいかなければやられる。相手が苦しむことを考えていたら駄目だ。


悠人は内心焦っていた。実は、悠人がこのパワードスーツを使うのは初めてだ。悠人が狭間市にアル・アジフと一緒に来たのは森林での戦闘時における新型パワードスーツの実験だったからでもある。


悠人は地面を蹴った。そして、クラリーネに向けてライフルの引き金を引く。クラリーネは頸線を一気に展開して飛び上がった。


ライフルから放たれたエネルギー弾が分裂する。まさにショットガンだ。


頸線にぶつかったエネルギー弾は軌道を変えて不規則に森の中を駆け回る。でも、それは悠人からすれば気にすることじゃない。


「シールド最大。ブレード展開」


悠人がすかさずパワードスーツの設定を変える。防御力を最大限まで高くして円筒を手に取る。すると、円筒から収束したエネルギーが形成された。


下半身のペダルを操作してパワードスーツの翼からエネルギー粒子を吐き出す。このパワードスーツが飛ぶ原理は力技なだけだ。


クラリーネは頸線を一気に悠人に放った。だけど、その頸線は悠人がパワードスーツを回転させた瞬間に全てが断ち切られる。


悠人は飛び交う散弾を身に受けながら肩からクラリーネにぶつかった。


クラリーネはそのまま吹き飛ばされて地面に転がる。


悠人はそれを見届けた後、円筒をしまって身を翻した。


「琴美さん? 琴美さん?」


「ここよ」


琴美の声に反応して悠人は琴美の場所に向かって飛んだ。地面に着地すると琴美が持っている籠の中にはたくさんの薬草が詰まれている。


「このまま家までお願い。薬が出来るのは多分明日の朝方になると思うわ」


「わかりました。しっかり掴まっていてくださいね」


悠人は琴美を抱きかかえると翼からエネルギー粒子を出して森の中に消えていった。その様子を見ていたクラリーネが小さく笑う。


「相性、最悪だったね」


頸線で弾けない攻撃。従来のパワードスーツではありえない機動力。精神操作に対する防御性能。頸線で貫けない装甲。


「完敗だね」


クラリーネはゆっくり立ち上がる。腕の骨は折れて肋の骨にもひびが入っているに違いない。それでも、戻らないと。


「約束、したから」


「あいにくだけど、それはさせないよ」


その声にクラリーネはゆっくり振り返った。そこにいるのは純白の服を着た青年。腰には日本の刀。純白の刀と漆黒の刀。


「どうして、ここに」


クラリーネは痛む体に力を入れて槍を構えた。


「『GF』機動科第一部隊第一特務副隊長、ギルバート・R・フェルデ」


ギルバートは純白の刀を抜く。


「さっきの情報を持ち帰らせるわけにはいかない。だから」


ギルバートが地面を蹴った。


「参る!」


『ES』の隠し兵器こと新型パワードスーツでした。ちなみに悠人しか使えません。

ブースターからスラスターまで全て足下についてあるペダルで操作。機体設定の変更は感応システムを使った制御。エネルギー媒体は全て魔力。

他の人が使えば微調整が出来ず木にぶつかって終わります。


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