俺のスキルは死にスキル
「タルク。お前、僕のパーティから抜けろ」
幼なじみで勇者のリーダーから、残酷な宣言が下る。
「そんな!俺は……」
お前達ならS級冒険者も夢じゃないって信じて尽くしてきたのに。
けれどあいつは俺から顔を背けて、低く低く吐き捨てた。
「スキルが……」
「ああ………」
俺はただおとなしくうな垂れるしかなかった。
だよな。
わかる。
知ってるお前にだけは言及されたくなかったなんてのは甘えだろう。
「『化粧』」
村の教会に巡回の司祭様が来て、恩寵の名を宣言された日からずっと。
(びっくりするほどレアスキルなんだから、極めればすごいんじゃ?)
(味方の能力をすさまじくUPさせるバッファーになれるかも!?)
俺自身を。励まして、励まして、励まして。そして失望してた。誰より俺が。
あいつに寄り添うシスターの、瞳にあふれる哀れみがしんどい。
「タルクさん……あの……せめて魅力UPがつけば町で就職が……」
「………」
俺の『化粧』スキルで魅力UPがついたことはない。
呼ばれた気はした。俺は駆けていた。
逃げたんだバカヤロウ。
恨みも呪いも惨めな気持ちも追いつくな。
あがった息がひっくり返って、ブーツの先がひっかかって、足がもつれた瞬間に
「キャー!!!」
往来の真ん中で女の悲鳴があがって
俺は石畳に膝をつき、身をおこして「ソレ」を見た。
それは、血の悪鬼。
仁王立ちする異形の武装。
真紅のコート。
つむじ風に巻き上がる黒絹。
武装の下の白いキルトも、
食屍鬼色の顔も、
血にまみれていないところがない。
ことに、口のあたり。
溢れ、滴る、赤・赤・赤。
むせかえる血の臭い。
鬼は奥歯を二度、三度噛みしめる。
ごりり。ごりり。
ぞっとする音がして、
血と共にばっと吐き出されたそれは、実ににんげんの指であった。
女はもちろん男の悲鳴も限りなく響き、
膝をついたまま我に返った、俺だけが、逃げ損ねた。
(あ)
刹那、俺は
(しくじった)
多分それだけを把握して
終わるのだろうと、思って、いたんだが。
その悪鬼は、食屍鬼色の血塗れの顔で。
涼しげな瞳を黒髪の間で輝かせて。
にっこり笑って言ったのだ。
「この義元を桶狭間の死地より救いしはそのほうか。大義。大義である!」
これはそんな異世界からの訪問者と、死にスキル持ちの俺が、ちょっとだけ冒険するものがたり。




