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第六十九話 蒼穹

 レスカディアの背に乗ってから十分ほど経った頃、多様な色彩に溢れた街並みが見えてきた。芸術と技術の国――――エレンド王国。


『面白い街並みだな……』

 レスカディアが感嘆の声を漏らす。


「斬新で独創的――――それが、エレンドで最も尊ばれるものなの。型にはまらない表現を追求する芸術家達が集まっているから」

 各国を遍歴した経験からか、地理に詳しいシルヴィアが人差し指を立てて言った。


『なるほどな……降りてみたいところだ』

「多分色々まずいっすレスカディアさん」

『冗談だ……上空から眺めて帰るとしよう』


 それもそれで怖い気がするが……直接街に降り立たれるよりはずっとましだろう。

 ……いや、案外作品の題材として重宝されるのかな。神々しい見た目だし。


『――――ここらで下ろせばよいか?』

 レスカディアはエレンド王国の手前ではたはたと翼を動かし、空中に止まる。


「ありがとうレスカディア。二回も乗せてもらっちゃって」

『礼は要らんと言っただろう。言われて悪い気はしないがな』


 三人で地面に飛び降り、上空のレスカディアを見つめる。


『お前達。忠告をしておくぞ――――王城に居たアイツには近づくな。そして近づかれるな……。仲間を早く見つけて態勢を整えろ』


 絶望がお前達に追いつく前に。


 静かに、重々しく――――レスカディアはそんなことを言った。


『アイツは”外”の住人だ。世界の天秤を水平に保つために無理やり産み落とされた異形の存在。お前達が相手にすべきではない……と言っても、避けられるかは分からないが……』

 霊龍の翼がゆっくりと空を打つ。


『夜明けの神殿に帰って眠りにつく気でいたが……気が変わった。この街を眺め終わったら各地を飛び回って情報を集めるとしよう――――また会おう、友人達』

「ああ、きっとまた……」


 レスカディアの口元に微かな笑みが浮かんだ気がした。

 大翼が空を打ち、上空に浮かび上がった彼の姿はすぐに見えなくなる。


「あんな上から見て街の様子が分かるのかしら……?」

 リーシャは蒼穹を眺めて素朴な疑問を漏らした。


「目がいいんじゃないか、知らんけど」

「適当すぎでしょその相槌……」

 シルヴィアがジト目でこちらを見つめてくる。そんな目で俺を見ないでくれ。


「――――じゃあ、ゼクルを探しに行こうか。きっとくだらない話が山ほど出てくるぞ」

「これだけ時間を空けたからね……」


 冗談を交わす俺とリーシャを見て、シルヴィアが可憐な笑みを見せる。

 この景色に二人を加える日を夢見て、俺達はエレンドへ歩き出した。

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