8人目と奴隷のキモチ
桜月亭に着くと私とアイザックとミズチ、セレス……そして、喜多川くんは
剣聖の元に向かった
……本当は喜多川くんを先にお風呂に入れてあげたかったのだが、喜多川くんは私から離れるのを嫌がった
クラスメイトの男の子がポロポロと涙を流すのだ
そんな場面正直見ていられない……
「ん?なんじゃあ?」
「ジジイ、妖麟丸取ってきてやったよ
これで奴隷になってもらうよ」
今まで奴隷を持つことがどこか怖かった
奴隷を持つってことはその人生を背負うってことだから……
でも、あの女と戦うには少しでも力が欲しい
裏切れない力が!
「おかえりー主人殿?
……何かあったのかい?ああ、妖麟丸もセレスも競り落とせたんだね
……ってそちらの御仁は?」
キキルが私が戻ったのを知ったのか剣聖の元へ顔を出す
「うーあーあー」
喜多川くんは見知らぬ人?鬼族に驚いたのか
私の後ろに隠れる
以前の君は私を庇うように立ってくれる人だったよ……
「おお!我が相棒!妖麒丸!よくやったな嬢ちゃん!
……テメェ、行きと目が違うじゃねぇか
ガハハハ……そんなに焦ってどうする?戦でもすんのか?」
「ああ、そうだ」
あの女を隣の国を滅ぼしてやる!
「ほう……そっちが本性って訳か
儂を飼いこなせるもんなら飼いこなしてみな 嬢ちゃんよ」
「剣聖、あんたの力を利用させてもらう
あんたの名は?」
「俺の名前は柳だ」
「キキル、柳との奴隷契約を」
柳とも無事奴隷契約となった
ただ、柳の奴隷契約の魔法陣が浮かび上がった時
「うーーーああああ!」
喜多川くんが暴れ出した
「おや、これはこれは」
キキルは何か気づいたようだけれど……
一体何をされたの?……喜多川くん……
それから奴隷全員を呼び出して今までのこと
過去のことを話した
「あの女は私を探し出すために喜多川くんを奴隷に堕としたんだと思う
私は死ぬ気はない死にたくもない
でも……あの女は私を殺す気で掛かってくると思う
……まえの聖女にね
……巻き込まれたくないなら名乗り出て欲しい
貴方達まで巻き込む気はない……だから」
「ガハハ、儂は買われたばかりじゃからな!
コイツ分ぐらいは働いてやるぜ、嬢ちゃんよ」
妖麒丸の鞘を撫でながら柳がそう言うと
「お、オラは怖いのはヤだけどもご主人が怖い目に合うのはもっとダメだ
オラに出来るのはロージーさんと美味しい料理作ることしかできねぇけど
ご主人の力になりたいだ!」
「そうですとも!私だってやる時はやりますのよ」
おたまを持ったロージーとホーリーが息を荒くする
「俺の存在意義はマスターと共に存在している
マスターがいなければ俺は存在意義をなくす」
珍しくスリープモードじゃないクラウドが私の目を見て言う
「私は……正直、御主人様のことを知りません
ですが、知りたいと思うこの気持ちを大切にしたいと思うのです
御主人様、人魚は一途な生き物なんですよ」
ミズチが悪戯っぽく微笑む
「そうだよー主人殿、ぼくと主人殿の縁は主人殿が考えているより深ーく結ばれているんだ
主人殿が嫌だって言ったって離れる気はないよ」
どーん!と珍しくキルルが抱きついてきて
「何やってるのだ!?ティルトはミコとずーっと一緒なのだ!
女神に言われたからだけじゃないのだ!ミコがティルトは大大大好きなのだ!
だから!守るのだ!」
頭の上ではティルトがキャンキャン言いながら飛び回る
「あららー、お兄さん美味しいところとられちゃったー?
……言ったでしょハニーちゃん、永遠の忠誠を誓うって……
俺にとってサクラ様はたった1人の護るべき主だ」
アイザックが手をとり
反対の手をセレスに取られる
「俺たちは貴方の奴隷だ
貴方を守る剣であり盾である
まだまだ弱い俺だけど貴方のそばにいたい
貴方の隣にあれる存在でいたいんだ」
……誰1人離れたいとは言わなかった
奴隷紋で言わせてないだけかもしれないけれど……そうだとしても
彼等の言葉は私の力になった
今まで信じたくて信じられなくて、辛くて悲しくて憎んで……
そんな私が……得たのがセレスやみんなだった
『護人に任命しますか?』
『護人に任命すると取り消すことができません
繰り返します
護人に任命しますか?』
頭の中に声が響く
護人?なんのことだ?
読んでくださってありがとうございました