聖女襲撃の裏側
聖女様は無事召喚されたらしい
街ではもっぱら聖女様の噂ばかりが流れている
なんでも、孤児院を訪問し孤児の待遇について意見を述べられたらしい
国王はその意見の尊さに孤児達の待遇の改善を約束されたそうだ
他にも国民の税金を横領していた大臣の不正を見つけ、正したそうだとか
大怪我を負った騎士団長の息子を奇跡の力で癒したそうだと
聖女様を讃える噂が流れる一方で夢見草では聖女様は男好きとの噂が流れていた
曰く、聖女様は清らかな心で引き篭もりの王子の心を癒しただの
曰く、容姿にコンプレックスを持っていた宰相の息子を引っ叩いただの
曰く、自分と兄を常に比べていた騎士団長の息子にありのままでいいのだと自信をもたせただの
曰く、魔術師の最年少の天才少年の孤独を癒しただの
……見事に男関係ばかりである
聖女様と関わる前はそれなりに評判の良かった大貴族の息子達だが
聖女様と関わるようになって今は町民からは好かれているようだが
実際に関わったことのある人間からはアレは駄目だと言われているという
私は実際に聖女様に会ったことも王子達に会ったこともないので
なんとも言えないが……まあ、関わることもない……と思っていたのだ……あの頃は
一方、夢見草も桜月亭も事業を拡大していった
モンスターキャッスルも日々、中にいるものの生気を吸い順調に成長していき
キキルは隣の土地を買い取りモンスターキャッスルを広げ夢見草の領域を増やした
門番を雇い、奴隷だけでなく街の人も雇うようになっていた
……もはや街中で桜月亭を知らない者はいないという程に登りつめていた
貴族のご令嬢やご婦人が今日も夢見草に通う
そして気に入った奴隷を購入する
キキルは縁が繋がっている主人と奴隷しか販売しないが
アフターサービスはしっかりしており苦情も少ない
そして客はほとんどがこの国の貴族だ……まあ、金持ちの商人も少なくはないが……
「ここを通してください」
「それは出来かねます。主人の命なくば通すことができないのです」
「私は聖女です。ここを通してください。」
「俺はこの国の第二王子だ。御託はいい。さっさと通せ」
「で、ですが」
その日は夢見草の方が賑やかだった
夢見草で使う薬を作っていたこともあり私は城の中にいた
「なんの騒ぎ?」
顔を見られないようにローブをしっかりと被り夢見草の方に顔をだす
キキルは店先には出ていないようだった
そこにはこの国の第二王子を始め宰相、騎士団長など要職の息子達が揃っていた
……たまにいるのだ
女性が男を買のは不潔だと騒ぎ立てる輩が……キキルが丁寧におかえりいただいているが……
王妃も彼らの母親も夢見草の常連の筈だが……?
その時、要職の息子達の後ろに隠れるように1人の少女がいることに気がついた
腰まである艶やかな黒髪に黒い瞳
懐かしい色だと思った
この世界の生き物は色彩が豊かすぎる
黒髪、黒い目は召喚された仲間ぐらいしか見たことがない
だから、彼女が聖女様か……と思ったのだ
彼女は1歩進み出ると私を睨みつけ
「ここは奴隷の男の人だけを働かしていやらしいことをするお店ですよね」
そう言った
確かにその通りなので頷く
すると、彼女は続けた
「私は奴隷だからってこんな酷いことさせられてるの許せないんです。
主人の人と話させてください。私の考えを聞いてくだされば考えを改めてくれるはずなんです」
……面倒なことになったなと思った
この国を支えているのは奴隷産業だ
だから、国王も奴隷には口出しできない
しかも、王妃も常連となればなおのことだ
「その通りだ恵の言葉に間違いはない。さっさとここを開けろ」
聖女様の名前は恵というらしい
王子達はなおも押し切ろうとする
……相手にするだけ馬鹿らしい
王家には抗議文を送らせてもらおう
「おかえりいただいて…、はぁ、聖女と王子と要職のご子息だから丁寧にね」
私は個人的には夢見草が桜月亭が潰れようとあまり関係ない
こんなことを言うとキキルが怒りそうだが
やはりどこか他人事なのだ
……うちの奴隷達が無事ならそれでいいのだ
「ちょっと待ちなさいよ!」
「ふざけるな!俺を誰だと!」
後ろから叫んでいる彼等の主を聞く気もなく城の中に戻って行った
「ふぁ、疲れた」
まさか、聖女様の矛先がうちに向かうとは思わなかった
「湯殿の準備ができておりますがいかがいたしましょう?」
出迎えた少年はミズチという
元は夢見草で働いていた桜月亭の奴隷だ
夢見草で1番の売り上げを誇っていた少年だ
この少年を買いたいと多くの客が訪れたがキキルは頑として売らなかった
本人の希望を聞くと、私の奴隷になりたいとのことで
新しく奴隷契約したうちの1人だ
「うん、まだいいや。それよりキキルはいまどこ?」
「キキル様でしたら執務室におられます」
「ん、そっか。ありがとう」
ミズチと別れ、キキルを探す
「キキル、いるー?」
「はぁい、主人殿なにかなぁ?また金儲けの話だと嬉しいねぇ」
相変わらずキキルの頭は金儲けの話でいっぱいだ
最近はより守銭奴ぶりに磨きがかかってきたような気がする
「さっき聖女さんとぼんくら王子ズが来てたよ
ほら見なよ。商売を大きくするからあんなのに目をつけられる」
私は目立ちたくないんだと睨みつけることも忘れない
が、私の様子など、どこ吹く風でこの男は飄々と肩をすくめる
「おやおや、これは心外だねぇ。この事業展開も全てが主人殿の為だよ。
ぼくら奴隷が働くのはもちろん自分のためそして何より主人の為だよ
わかっているのだろうサクラ殿?」
何がサクラ殿だ……半分以上自分の生き甲斐の癖に……
「はぁ……」
思わずため息が出る
「おやぁ、主人殿ため息はいけないよ
幸せが逃げてしまう
今日はぼくが湯殿で背中を流してあげようか?」
「いらない」
「おや、それは残念」
「……あの聖女さんが簡単に諦めるとは思わないけど……」
「うん?心配かい」
「……………………」
「まあ、あの聖女は一癖も二癖もありそうだけど
あの程度でぼくらをどうにか出来るなんて思わないでほしいねぇ
少なくともぼくは自分の意思で主人殿の奴隷であることを選んだんだよ
それを忘れないでほしいねぇ」
キキルが私の手を取り口付ける
「…………」
「相変わらずつれないねぇ
そんなところも愛おしいだけどね」
「…………」
湯船に浸かり、聖女様のことを思い出す
……私達の召喚の時にも職業が聖女な子がいた……私の友人だった……
彼女は回復魔法に優れていた
いつも怪我をした誰かを癒していた
……私はそんな彼女を見捨てた……
………………
「ミコー!アイザックが酷いのだぁ!」
…………ここは風呂場だ……
何故、風呂場にティルトが……?
とりあえず桶を投げておく
「んぎゃ!ミコ、何をするのだ!?」
「……それはこっちのセリフだ
風呂を覗くとはいい度胸しているな……覚悟は出来ているんだろうな……」
ティルトとは仮の奴隷契約ではあるが
覗きを許すほど私は優しくはない
従属魔法発動!
「ギャア!」
「……はぁ」
「え?今の悲鳴何!?大丈夫ハニーちゃん!?グハッ!」
心配するふりをして覗きにきたアイザックにも従属魔法を発動しておく
……本当にうちの奴隷は……
唯一、うちの奴隷達の良心であるセレスは
風呂から出た私に水を用意してくれていた
「ありがとうセレス」
「いえ……すみません……アイザックを止めれませんでした」
「いや、アイツはどうしようと止まらないだろうから……セレスは気にしなくていいよ」
そういえばセレスはいつだったか自由になりたいと言っていたっけ……
『俺は貴方が何を思っているのかも悩んでいるのかもわからない
知りたいとも思わない
……俺はいつか自由になる……なってみせる
だから、あんたはもっと太々しくいろよ
いつもみたいに……わけわかんないままでいろよ』
聖女さんがもし仮に奴隷解放をし始めたらセレスとはお別れなのかな……?
……それは……ちょっと……いや、……かなり寂しい
「ご主人様?」
「……なんでもない」
でも、その時が来たらセレスの意見を聞こう
セレスには今まで良くしてもらったから……
「セレス、何か望みはない?」
「望みは……ですか?
……それなら……」
「何?」
「今日の枕は俺でお願いします
最近、新しい奴隷が入って……なかなか枕になれないので……」
「枕になりたいなんて変な願い
……今日はよろしくねセレス」
「はい、ご主人様」
「っずるーい、お兄さんも!お兄さんも!」
「ティルトもミコと一緒に寝たいのだ!」
どこから聞きつけたかお風呂覗き組が姿を現わす
「覗きにかける優しさはない」
ワザとらしく落ち込んで見せる2人にセレスと2人笑いあった




