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聖女、撃退!

王家に抗議文を送った後、返事が来た


曰く、第2王子の行動は独断であり王家とは何の関わりもないこと

今まで通り、夢見草と桜月亭を経営していってほしいとのことが書かれていた


……自分の息子ぐらい自分で管理してよ……


「そういう訳なので

あの聖女が何を言ってきても気にする必要はないから

さっさとお帰り頂くようしておくれ

ああ、あと門の警備員は新しくしたからね

安心しておくれ主人殿」


「……静かにしてくれれば何でもいいよ」


そんな私の思いとは反して、聖女様とぼんくら王子ズは

毎日、夢見草に突撃してきた

その度にお帰り願うのだが……


「あれさぁ、いい加減、営業妨害じゃないの?

あれが来るとキキルくんが怖いんだけど」


アイザックなどついには聖女をあれ呼ばわりである

そういう私もとてもじゃないが様付けする気にはなれない

毎日、朝早くから夜遅くと時間の目境なく突撃して来るのだ

お陰で最近、夢見草の客足が減っておりキキルの顔が恐ろしいことになっている


「キキルくん、いつか毒とか盛りそうだよね」


やめてよ……面倒ごとになるのは目に見えている

今でさえ、面倒なのに……

でも、どうにかしないと……キキルの機嫌がこれ以上悪くなるのも避けたいし……


「俺が魅了の力を使いましょうか?」


「それはやめとこう

なんとなくあの聖女、セレスのストーカー化しそう」


魅了なぁ……

あの聖女への第2王子やその他の傾倒の仕方は魅了の力っぽい……かな?


「アイザックは聖女に会ったことあった?」


「うーん、直接はないね」


「ちょっと会ってみてくれない?」


「珍しいね

ハニーちゃんがお兄さんにお願いだなんて」


「うん、上手くいけば聖女のご威光を無くせる……かも?」


「上手くいったらご褒美くれる?」


……アイザックの考えるご褒美……ちょっと怖い……な


「却下なのだ!」


「やめてくださいご主人様」


「ちょっとー、お兄さんだってたまにはいい思いしたっていいと思うんだよねー」


「覗きが何を言うのだ!」


「いや、ティルトくんだって覗いたじゃない!」


「ティルトは覗いたじゃないのだ!助けを求めたのだ!」


「どっちも変わらないだろう?

ご主人様、危険です」


こういう時、キキルがいたら……変わらない……な


『はっはっは、だからぼくに背中を流させておけばよかったのに』とか言いそう


「分かったアイザック

上手くいったらご褒美用意してあげる」


こうなったら背に腹は変えられない


「ご主人様!?」


「ミコ!?」


「やったね!さっすがハニーちゃん!」


「ただし、上手くいったらだからね」


「勿論、約束は守る男だよ

お兄さんは」


作戦といっても単純で……

アイザックには聖女が魅了の力を使っているかどうか確かめてもらいたいのだ

聖女が魅了の力を使っている場合はアイザックの口八丁を使って

セレスがかけている魅了封じの眼鏡をかけさせる

魅了の力を使っていない場合は……まあ、仕様がない……


翌日、聖女は飽きもせず突撃して来た

ただし、違ったのは対応したのがアイザックではなくキキルだったってことだ

しかも、いつもなら通さない門を通している


「いらっしゃいませ、聖女様

ようこそ、夢見草へいらっしゃいました」


「私はお客さんじゃありません

責任者の方とお話しに来たんです」


「私めが夢見草を取り仕切っておりますキキルと申します」


キキルがいつもより色気増しで聖女に微笑みかける

聖女も満更ではないようで頬を赤く染めている

そして、その様子を不服そうに第2王子達はキキルを睨みつけている


「お前が責任者なら恵の話を聞け!」




「ハニーちゃん、あれ魅了使ってるよ

間違いない……どうする?」


アイザックが囁く

良かった……魅了の力なら対応策もある……


「とりあえず、今はキキルに任せよう」


きっと何か考えがあるはずだ



「奴隷の男の人ばかりにいかがわしい事をさせるなんて間違っています

そもそも奴隷自体おかしいんです!

人は皆、生まれてきた時から平等なはずなんです

だから!こんなことやめてください!」


聖女はキキルにうったえかける


「聖女様はお優しいことでございますね」


キキルが聖女に微笑みかける


「いえ、私は当然のことをしているだけで」


「恵が素晴らしいのは本当のことだよ」


「カイン……」


「恵……」




「え?何、あの茶番?周りが見えてないの?2人の世界ってやつ?」


「アイザック、声が大きい」



「聖女様は本当に男の奴隷にはお優しい方ですね

……女の奴隷など目に入りませんか?」


「オイ、どういう意味だ?」


「この街には多くの娼館や蔭間がございます

聖女様は夢見草のような蔭間には廃止を求めていらっしゃいますが

娼館には1度も出向かれたことがないと噂になっていますよ」


「そんな汚らわしいところに恵を行かせられるか!」


吠えたのは騎士団長の息子だったか?


「汚らわしい……ですか?

その汚らわしい私たちが稼いだ税の上にいる方々の台詞でしょうか?」


「何を!」


「この国は奴隷産業で成り立っている国です

それは学校で習いませんでしたか?」


「…………」


目を逸らす宰相の息子


「そんな!そんな馬鹿なことありえません!

……娼館には行ったことなかったけれど

やっぱり奴隷っておかしいと思うんです」


「それは何故でございましょう?」


「何故っておかしいでしょう?

みんな本当は嫌々働いているに決まっています!」


「奴隷なのだから仕方ないでしょう」


「奴隷だからって間違っています!」



奴隷だから……仕方がない……か

私たちの世界からしたら奴隷はおかしい

人間は皆平等だと教えられてきた

でも、この世界は私達の世界とは違う



「間違っている?」


キキルの雰囲気が変わる

聖女を庇うように1番小さなフードを被った男の子が前に出る


「間違っているねぇ……?

ぼく達の何を君が知っているっていうんだい?」


「恵に……近づくな

恵を……傷つける奴は……許さない」


こんな店の中で魔法を発動しようとしている!?

こんなところで魔法を発動されたら被害がどれだけ出ると思っているの!


「やめて、セシル!

キキルさんでしたよね?

私は何も知らない小娘です

だから、話すんです

お互いのことを知りたいと思うから

知って話して、時にはケンカしたりするかも知れないけれど

わかり合うことってきっと出来ると思うんです

貴方のことを教えてください

私達きっと分かり合えると思うんです」


聖女が止める男の子を振り切り、キキルの前に出る


「聖女様……」


キキルの目の端に光るものが……


「キキルさん……」



「気安く名前呼ばないでくれないかい?不愉快だ」


「え?きゃ!なに!?」


キキルは近づいてきた聖女に鼻メガネをかけた


…………



「何これ!?取れない!?」


「取れないよ、取れるはずがないだろ?

特製の接着剤付きだからねぇ

無理に取ると耳が千切れるよ」


「どうして……キキルさん……」


聖女が涙を流す

……でも、鼻メガネのせいで色々台無しだ


「ぼくはね

主人殿の奴隷であることに誇りを持っている

それを否定しておいて、ぼくのことが知りたいなんてどの口が言うのさ」


「恵!だいじょ……ブフッ!」


聖女に駆け寄ろうとして吹き出す第2王子


「恵!この野郎ふざけた真似を!」


剣を抜き、キキルに斬りかかる騎士団長の息子


「丸腰相手に剣を抜くなんて……それでも騎士の端くれなのかな?」


その剣はアイザックに弾かれ、地面に叩きつけられる


「すまないねぇ、アイザック」



「恵、ブハッ!」


もう聖女を直視できない宰相の息子に


「ぼく……今迄……何を?」


正気に戻った魔術師の男の子


「何で?どうして?ふざけないで外してよ!」


「何故?」


キキルがにっこり微笑む

今日1番の微笑みである


「連日、営業妨害をしつくした君の為に?」


「だって、私は聖女なのよ

この世界を救う為に召喚されて……」


「聖女は単なる職業ですよ

貴女の周りはそれすらも説明してくれませんでしたか?」


聖女は確かに単なる職業でしかない

だから、稀にではあるが出てくる

私の知っている彼女がそうであったように……


「さあ、お客様でないなら、お帰りください

ここは国の許可を得て、営業をしている場所です

これ以上、営業妨害を重ねるなら騎士団の方々に捕縛していただくしかありませんねぇ」


「そんな馬鹿な!俺は第2王子だぞ」


「はいコレ

王家からの手紙です

これには第2王子の行動は独断であり、王家とは何の関係もないとあります

まだ、言い逃れしますか?」


「なっ!?恵、ックハ!1度ここは帰ろう!

その鼻メガネも城に帰れば取れるだろうし!」


「え、ええ!私、諦めませんから!」


こうして聖女一行は帰って行った


「さあ、お客様方、今日はお見苦しいところをお見せして申し訳ありませんでした

本日の不手際の分、割り引かせていただきますので

どうぞ夢のひと時をお過ごしくださいませ」


そして、その日の夕食時


「あっはっは、見たかい?あの聖女の顔!?

ああ、久しぶりに胸がスッとしたよ

ふふ、暫く思い出して笑えそうだ」


ご機嫌なキキルがそこにはいた


「だが、キキル

あの鼻メガネを外したらまた来るんじゃないか?」


「あの鼻メガネがただの鼻メガネだと思うのかい?

セレス、君の眼鏡と同じ魅了抑制効果のある鼻メガネだよ

今頃、魅了されていたボンクラ共も正気に戻っているはずさ

それでも向かって来るなら今度こそ騎士団に通報するだけだよ

営業妨害でね

それにね……ふふふふ……あの鼻メガネは特製なのさ

魔法を使えば接着の効果が強まるように細工してあるのさ

王城でどうやって取るつもりなんだろうねぇ

ああ、ぼくは楽しみで仕方がないよ……ふふふ」


……キキルは怒らせないようにしよう……


「え、えーと、ハニーちゃん

一応上手くいったわけだし、ご褒美ほしいな」


「なっ!?アイザックの手柄じゃないのだ!キキルが全部したのだ!」


「おやあ?ご褒美?何なんだい?面白そうじゃないか?」


「ご主人様、アイザックにご褒美を与える必要はないかと」


「いやいや、お兄さん

あの騎士団長の息子からキキルくんを守ったでしょ」


……約束は確かに……した


「ご褒美……何がいいの?」


「ご主人様!?」


「ミコ!?」


「お兄さん、ハニーちゃんにマッサージされたいな」


「却下なのだ!」


「ご主人様、危険すぎます!」


「主人殿のマッサージかい?

ぼくも受けて見たいねぇ」


「……はぁ……しないし……」


「ええ!?聞いといてそりゃないでしょ!?ハニーちゃん!!」


「……分かった、分かった

肩たたきだけね」


「ええー、もっと濃厚なのを」


「じゃあ、しない」


とりあえず一難去ったようだけど……明日はどうなることやら……?


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