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師匠

私を拾った老婆は何も聞かず、家に入れ食事を与えてくれた

それも恐ろしかったが……もうどうでもよくなっていた

どうせ……殺されるなら……と諦めを抱いていた


老婆はお茶を淹れると話し出した


「さてと、あんたこれからどうしたい?」


「……どうしたい……とは?」


あなたは私を……殺すんでしょ


「なんだか良くないことを考えている顔だね

それならここで働かないかい?私ももう歳だしね

手伝い手が欲しかったのさ」


「…………」


「沈黙は了承ととるよ」


こうして老婆との共同生活は始まった

老婆は初日に出してくれた料理は何だったのか料理を全くしない

私もこの世界で料理をしたことはなかったが、老婆は料理を作るように言った

地球と似た食材を見つけ、とりあえず焼いてみた

黒焦げになって不味かったが老婆は文句を言いながら食べていた

掃除もここには掃除機がない

箒と雑巾で掃除していった

「ぐしゅん、埃だらけだね。ちゃんと掃除したのかい?」

「…………」

「あんたは自分で喋ることをしな」

そんな時、老婆にギルドカードが見つかった

城で作らされたギルドカードには職業欄に神子と載っている


終わった……何もかも……


「あんた神子だったのかい?」


「…………」


「そりゃ、道理で……」


「……ろしてください」


「?」


「ころしてください」


もうこんな世界にいたくない

もう……苦しいのも……悲しいのも……嫌だ


「甘えるんじゃないよ!

あんたに何があったか私は知らない、知りたいとも思わない

でも、それはあんたが命を粗末にする理由にはならない!」


「いいかい!生きるんだ!生きてりゃなんとかなる!

何とかならなくても何とかするんだよ!!」


その日から老婆は私に薬の調合を手伝わせるようになった

私は老婆のことを師匠と呼ぶようになった


師匠は薬の調合だけでなくこの世界の常識についても私に教えた

その途中で初日の料理はこの家に棲みつくゴースト、ロージーが作ったものであること

この家自身がモンスターハウスであることを知った

害意があればこのモンスターマウスが食べてくれるらしい

害意があろうとなかろうと私には関係のない話だったけれど


「お前さん、妙に目がいいね

鑑定持ちかい?」


「スキルは女神の祝福だけだったけど」


「ちょっと測り直してみな」


測り直して見ると鑑定Level9が増えていた


「それ見たことか!」


「でも、なんで……?」


「鑑定はね自分より高いレベルのスキルは見ることができない

おおかた、お前さんを鑑定したやつはレベルが低かったんだろうさ」


「師匠は?」


「っは!私が低いわけないだろう?」


師匠は何でも拾ってくる癖がある

草や変わった形の石、骨なんかは薬に使える時もあるけれど

怪我したモンスターなんかもしょっちゅう連れてきた

そして、襲われて倒したり感謝されたりしていた

私もこの癖に拾われたんだなと生温かい目で見ていると

今日も師匠は何かを拾ってきた


「きゅー」


それは人差し指サイズの緑の羽虫だった


「師匠、モンスターはまた襲われますよ」


「これサクラ、これは妖精族のハイフェアリーといって珍しい種族なんじゃ

そもそもこの森には生息していないはずなんじゃが」


「んんっ!」


「……気づいたみたいですよ」


「んっ!ここは……」


緑羽虫は起き上がると周りを見回して師匠と私を見つけると


「ニンゲンめ!ティルトを捕まえてどうするつもりなのだ!」


緑羽虫は叫ぶとグロテスクな触手を召喚してきた


「ほら、師匠襲ってきましたよ

老婆と触手なんて誰得なんですか?私は嫌ですよ」


「なっ!お前さんも弟子なら師匠を守ろうとか」


「ごめんなさい」


「早!」


「なんでティルトをおいて遊んでるのだ!

ますます許せん!パトリシア!こいつらを食べるのだ!」


その時だ、モンスターハウスが動き出したのは

内装がぐらぐら揺れたかと思うとパトリシア?だかは消えていた

家が吸収したのだ


「パッパトリシアが……?」


涙目でヘタリ込む緑羽虫に師匠は声をかけた


「妖精族のハイフェアリーがどうしてこんな森に?」


「ティルトは女神様から……!は!なんでもないのだ!

ニンゲンには喋っちゃいけないのだ!」


面倒臭そうな緑羽虫だな

そろそろ昼時だ


今日は私の当番だった

緑羽虫の前に昨日から仕込んでおいた昼食を置く


「食べたいなら吐け」


「いいいらないのだ!ティルトは口が固い妖精なのだ」


「あっそう、それじゃ師匠いただきましょう」


「そうじゃな」


「あうあうあうあう、ズルイのだぁ!」


何日も食べずに彷徨っていた緑羽虫が落ちたのはいうまでもない


「うん!はむ!だから、ごく!ティルトはぁ!もぐ!

女神様にだ!ごくごく、ぷはぁ!ミコを、はむ、見つける、んぐ

ように、もぐもぐ、頼まれ、こっちも美味しいのだ!」


……何をいっているのか分からん


「つまりお前さんは」


「お前さんじゃないティルトなのだ!」


「……ティルトは女神様からの御告げを受けて神子を探しにきたというわけかい?」


「んっ!そう、はぐ、なのだ!もぐごく

ニンゲン達が、ふぅ、ニンゲン達がミコを虐めたから女神様は御怒りなのだ

だから、ティルトを遣わされたのだ」


……神子、聞きたくない言葉だった


「ティルトはミコの御心を慰めるために来たのだ

……でも、ミコ、全然みつからないのだ……ミコ、……泣いてるかもしれないのに」


「案外逞しく生きてるかもしれないよ」


余計なことを言いそうな師匠を目線で制し

さっさとこの緑羽虫を追い出すことを決める


「グス……1人ぼっちは……寂しいのだ

……ティルトも故郷の森からここまでとっても遠かったのだ

だから、ミコが1人で悲しんでると思うと……」


「そうだね、1人は寂しいね

よし!決めた!ティルト、ミコが見つかるまでうちにいな!

なぁに、ご飯ならロージーとこのサクラが用意してくれるさ」


「師匠!」


ちょっと、勝手に何を!


「本当か!やったぁ!サクラのご飯美味しかったのだ!」


こうして緑羽虫ことハイフェアリーのティルトが住み着くことになったのである


「師匠殿!今日はハイビスの花を採ってきたのだ!」


「ああ、ありがとうよ。」


ティルトはよく働いた。ハイフェアリーは植物を見分ける能力に長けているらしく


「今日はガオサの花が咲いている気がするのだ」


と、飛んでいっては採ってくる

ただ、気になるのはあの悪趣味な触手だ

パトリシア?がいなくなった後、


「モンスターハウスに負けない触手を造るのだ!」


と張り切って明後日の方向にむかっている


ある日、ティルトと採集に行った時のことだ

モンスターに囲まれた

普段ならティルトが悪趣味な触手で溶かして終わるのだが

運良く逃れた1体のゴブリンが私を攻撃してきた

そしてすり抜けた


「それは女神様の祝福!?

サクラがミコだったのだ!?」


それからは「ミコ、ミコ」とどこにでも付いてくるようになってしまった


「あはは、よかったじゃないか!」


「……よくない」


「ティルト、女神様からミコに預かってきたものがあるのだ」


「いらない」


「そ!そんなのダメなのだ!」


涙目になるティルトと腹を抱えて笑う師匠


「受け取っておやりよ」


渋々受け取ると、それは玉だった

玉は光りだすと私の中に消えて行った


『女神の祝福』が強化されました!

抱きしめられないと眠れない、祝福が発動しました!


頭の中でする声の内容に首を傾げながら

その日以来、本当に抱きしめられないと眠れなくなった

師匠はそれを聞いてさらに笑っていた

師匠に抱きしめられながら眠るという罰ゲームのような毎日を送ることになったのである


眠ると誰かに追いかけられる

追いつかれれば殺される

だから、逃げる、逃げても逃げても終わりはない

そんな夢を見続けていた


理由はわかっている

あの城に置いてきた彼等のことだ

催眠が掛けられた友人、最後まで庇ってくれたリーダー格の少年

私には何もできない

だから、目を逸らし続ける


「ミコ?どうしたのだ?」


「……なんでもない」


こんなのが神子だなんて笑わせる

こんな卑怯者が……


ある冬の日、師匠が死んだ

昨日まで元気で大声で笑っていたのに

朝起きたら冷たくなっていた


「私もいつ死ぬか分からないんだから

あんたは自分で話すことを覚えるんだよ」


「こら!またサボってるね!しっかりおしよ!」


嫌だ!嫌だ!


「……し、ししょう、嘘でしょ

起きてよ師匠が!まだ教えて欲しいこと沢山あるのに!師匠!」


師匠を揺さぶると揺さぶったところから光になっていく


「ダメ、ダメ、師匠、ダメだよ

師匠がいなきゃ、私何もできないよ!どうやって生きたらいいかもわかんないよ!

師匠!!!」


『サクラ、やめてください。逝かせてあげてください』


「ミコ、落ち着くのだ!」


ロージーとティルトがそばにやってくる


師匠だったものが消えていく

残ったのは腕輪が1つだった

『魔女の腕輪』代々受け継がれる魔法の腕輪、弟子への熱い想いが込められている

調合の効果が物凄く上がる


「師匠殿の寿命はとうに尽きていたのだ

それでも今まで保ったのはミコが願ったからなのだ」


「……は?……私が願わなくなったから……師匠は死んだの?」


「違うのだ!ミコ、落ち着いて聞くのだ!」


「ミコ、ミコ、ミコってなに!?

なんで、師匠、なんで?私のせい?ごめんなさい、ごめんなさい師匠」


「ミコが願ったからなのだ師匠殿は頑張ったのだ!

師匠殿が亡くなったのは寿命でミコのせいではないのだ!」


「だって、私神子なんでしょ?

願ったら叶うんでしょ?だったら師匠を蘇らせてよ!今、願ってるよ!!」


パシッ!


ティルトに叩かれた


「ミコがそんなでは

師匠殿も安らかに眠ることもできないのだ」


「師匠……師匠……」


『サクラもティルトも少し落ち着きませんか?

お茶を淹れて参ります」


それからティルトもあまりそばに寄り付かなくなった

師匠が自分でに何かあった時にモンスターハウスの主人を私に書き換えられるように

してくれたおかげでモンスターハウスで今まで通り暮らしていける

でも、師匠がいないこの家にいるのが辛かった

私自身の呪いのこともあったし街に出るようになり、

呪いのこともあり蔭間に通うことにした

娼館でも良かったが抱きしめられると友人を思い出して吐いてしまう


そんな中だ、セレスと出会ったのは


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