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魔の森

あれから陽蘭亭にアイザックの従属魔法の効きにくさを相談に行くと

個人差があるとのことだった

効いていないわけではないらしい


セレスが冒険者ギルドの講習に行っている時間

アイザックは私と一緒にいる

することがないのだ、自由にするとすぐ女をナンパして問題を起こすので

目を離すこともできない


「ハニーちゃん、ずっと思ってたんだけど

ハニーちゃんの作ってる薬って傷薬だけじゃないよね」


今日も薬を煎じながらいると


「俺も思っていました

それ、何なんですか?」


講習から帰って来たセレスも覗き込んでくる


「避妊薬」


「え?でも、弥生にその薬卸してましたよね」


「これを飲めば体内に入った精液が栄養として吸収されて妊娠しない

副作用もないから蔭間でも使われてる」


というか私は弥生にしか卸していない

弥生の店主が手広くやっているようではあるが……


「そ、そんなものがあるんですね」


本当は媚薬も作っているけどアイザックに知られると面倒くさそうなので黙っておいた


「ああ、避妊薬って結構高い値で取引されてるでしょ

だから、セレスくんみたいな綺麗な奴隷買えたんだね」


いや、セレスはほぼお買い得品の値段だった気が……


「今日で講習も最終日だったけどレベルはいくつになった?」


「5です」


5……まだ低いな

でも、そろそろ素材を手に入れに行きたいし……


「明日、魔の森に行く

アイザックはセレスを護衛して

セレスはアイザックの指示に従って」


「いやいや、魔の森ってまだ無理でしょ!?

セレスくん死んじゃうよ!?あそこの推奨Level20だよ!?」


「問題ない。アイザックはセレスを守ればいいから

私のことは放っておいてくれていい」


「本当にいいの?……ハニーちゃん自滅願望とかないよね?」


「え?ご主人様……?」


セレスが不安そうな顔でこちらを窺う


「自滅願望もないよ。明日になれば分かるから」


翌日、朝早くから魔の森に出かけた


「ハニーちゃん悪いことは言わない

セレスくんを強くしたいならダンジョンに潜る方がいい

ここはやめといたほうがいい」


珍しくアイザックが真面目な顔でそういったので


「俺もここはいい感じがしません」


セレスも顔を青くしている

そりゃ、そういう呪いがかかってるんだから仕様がないといえば仕様がないのだが…


「大丈夫だから」


説明するのが面倒なので2人には黙っているが

魔の森には入った者を精神異常にさせる呪いがかけられている

その上、出てくるモンスターもまあまあ強いのであまり冒険者も近寄らない


不安そうな表情をした2人を尻目に私は森の中に入って行く


「……どうなっても知らないからね……セレスくんは俺から離れないで」


「……主人が死ねば俺も死ぬ……くそ!」


森にはいれば早速モンスターに囲まれた


ゴブリン 妖精族 Level11

人を食べることを好む妖精


ゴブリンメイジ 妖精族 Level15

ゴブリンが魔法特化に進化した姿


ワーム 魔物 Level9

イモムシ型の魔物


3体か……アイザックのLevelなら余裕だろう…ただ、セレスがなぁ


「頑張って」


「え?ご主人様?」


「……いくよ、セレスくん」


近くの岩に腰掛け2人の戦いぶりを見る

アイザックが弱らせ、セレスがトドメを刺すことでレベルアップさせている

この調子ならいけるかな?


その時だ、ゴブリンメイジがもう1体いたらしい

私の方に向かって魔法を放ってくる


「危ない!」


「ご主人様!」


セレスが私を庇い代わりに魔法を受ける

…あれほどかばうなと言ったのに…

なおも攻撃してこようとするゴブリンメイジにアイザックがトドメを刺す

蹲るセレスに手持ちの傷薬を飲ましていると

アイザックがいつものふざけた顔でなく無表情でこちらを睨んでくる


「あんたには遊びかもしれないが俺達は命を懸けている

こんなふざけた真似をするなら俺にも考えがある」


「……ふぅ、どうしてかばわないでいいって言ったか今から見せるから

余計な手出しはしないで、これは『命令』よ」


ちょうどいいところに出てきたゴブリンの前に立つ


「グギャギャギャ」


ゴブリンは手に持った石斧を振り下ろした

そして、その石斧は私の頭を叩き割ることなくすり抜けた


「グギャア?」


「え?」


「は?」


何度も石斧を振り下ろすゴブリンとそれをただ見ている私


「……もういい?私攻撃一切受けないの

……その代わり一切攻撃もできないけど

アイザック、あとは頼んだわ」


「はぁ…?」


「セレス、大丈夫?」


「…ご…ご主人様はゴーストなのですか?」


ゴースト 魔族

死んだ時に強い思いを残してしまった生き物が魔物化した姿


「いや、人だよ」


さっきからの戦闘で落ちているドロップ品を集める


ゴブリンメイジからは魔力の欠片(小)

ゴブリンからは壊れた石斧

ワームからはワームの糸


おお!3体ともドロップした!


この世界では倒したモンスターは光になって消えていく

で、たまにアイテムを落とすことがある

これは人も同じで死ねば光になって消える骨も残らない


「いやー、人は普通攻撃受けるでしょ?」


「前に話した呪いの副産物

私に呪いをかけたやつが私は一切攻撃できないようにした。攻撃も受けない

で、抱きしめられないと眠れないようにしたって訳」


「……えーと……うん、変わった呪いだね……」


「それじゃ、冒険ギルドでご主人様をかばわなくても

俺は従属魔法を受けなかったってことじゃ?」


「そう、だからかばわなくていいって言ったの」


「最初から説明してくれれば!」


「めんどい、この呪いのことは他言無用だから

これは『命令』ね。さあ、先を急ぐわよ」


それからはアイザックが敵を弱らせ、セレスがトドメを刺し

私がドロップアイテムを拾う


「ハニーちゃん、そろそろいいんじゃない?

これ以上先に進むのはお兄さん、はんたーい」


「はぁ……はぁ……」


軽口を叩くアイザックと肩で息をするセレス

もうちょっとなんだけどな


「もうちょっと頑張って!ほらセレス気付け薬!」


「ガッ!ゴホッ!……クソマジい」


「やーん、ハニーちゃん鬼畜」


気付け薬なんだから味なんか拘らないわよ


それから少し進んでセレスは歩くのがやっとのようでアイザックが

敵を1人で倒していった


「っは!ハニーちゃん、もう無理よ!本当にもう無理。引き返そう」


「…………」


セレスはもう話す気力もないか……


でも、たどり着けた


「引き返す必要はないよ。ここが目的地だから」


目の前の大樹に手をかざすとボロい小屋が現れた


「ここが私の家」


ようこそ我が家へ


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