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六芒星の襲撃  作者: 真言☆☆☆
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6/7

燃える闘い

「 おまえ、ここまで来るとは、たいした者じゃな。

  まあ、この火毘様には、かなうまいがの。」

 ついに、最後の一人が、現れた。

 今までの相手が、月影、土竜、金矢、木猿、水蓮だったので、

火が付く名前は予想できた。

 口から火を噴いたりとか、油を塗った棒に火をつけた

棒術の使い手とか、安易に考えていた己を反省した。

 燃える炎のような闘気を持つ一流の武術家であるのが

見てわかる。


 実は、この六芒星、最後の男、火毘は「カビ―・カボーン」の

使い手であった。

 今の世のムエタイの母体の伝統武術である。

 後の世に、映画「007 黄金の銃を持つ男」に

この使い手が登場するのは、誰も知る由はなかった。

 

 カビ―・カボーンは、武器術を基本とする。

 カビー(片刃の剣)、カボーン(棒)、ロー(丸盾)、

ブローン(杖)、マイ・サン(トンファーに似ている)などを

主に使うが、素手の技術も組み込まれている。


 敵を殺すための残忍な技が多く、戦場で兵士が揮っていた。

 そんなことはとんと知らない移香斎であったが、

火毘が聞いたことのない異国の音楽を口ずさみながら、

闘いの前に行う舞を見て、これは本物じゃと喜んだ。

 武と舞は、密接な関係があるからである。


「 さあ、始めようか。」

 火毘は、カビ―を右手だけで握り、上段に構えた。

 全身から炎のような覇気が感じられた。

「 承知。」

 移香斎は、真剣をスラリと抜き、いつもの如く、八方目で、

隠剣に構えた。

 澄みきった湖の如く静かで深い覇気を漂わせていた。


 火対水、 動対静、 剛対柔とでも言ようか。

 二人の闘いには、天地も震えるであろう。


 先手必勝と言わんばかりに、火毘が、上段から

斬りこんで来た。

 斬撃の速度も申し分なく、半身で片手だけで

斬りこんできたため、肩一つ分剣先が伸び、

しかもしなりがある剣であったため、

移香斎得意の斬り落とし面のタイミングを

狂わされた。

 カビ―は弾くことができたが、火毘に致命傷を

与えることはできなかった。

 それだけでは、なiい。

 火毘はすぐ反撃してきた。

 右足を軸に、左足で、移香斎の右足に下段蹴りを

放ったのである。

 今の世で言うムエタイのローキックである。

 象の足の骨をを叩き折る勢いがあった。

 移香斎の上体は微塵も動かなかった。

 火毘は、これで、戦闘能力を奪えると確信した。

「何つ。」

 下段蹴りは、空を切ったのである。

 移香斎は、後の世の琉球武術の首里手の型

「ナイハンチ」の波返しのような技で、

かわしたのであった。

 上体を動かさず、右足だけを動かすことがどんなに

難しいか、火毘にはわかる。


「なるほど、ここまで来ただけのことはあるようだな。」

 火毘は、虎の様な発達した犬歯を見せて、ニヤッと笑った。

 火毘の燃える炎のような激しい攻撃が始まった。

 全身、是凶器なり。

 右手の剣の攻撃に合わせて、左手で見事に突きを放つ。

 その突きがかわされるやいなや、肘打ちに変化した。

 その肘打ちも、実に多彩である。

 移香斎も、攻撃を全てかわし、弾いたが、

肘が頬をかすって血が出た。

 上段に攻撃を集中させておいて、気を引き、

中段、下段と蹴りを飛ばして来る。

 その蹴りが、二匹の大きな毒蛇に思えた。

 

 移香斎は、以前、テッキョンの使い手を闘ったことがあるが、

こうまで剣技と当身技が見事に融合しているのは、

初めて見るので、熱く感動していたのであった。

 

 火毘にしてみれば、日本人であるはずの侍が、攻撃を見事に

捌くのが不思議でたまらなかった。


「おぬしを少々甘く見ていたようじゃ。」

 火毘は、一旦間合いを取ると、両手でカビ―を握り、

移香斎の左肩目掛けて、袈裟切りで斬りこんで来た。

 象の鼻の如く凄まじい斬撃であった。

 合わせて攻撃することは難しく、刀を両手で握り、

受け止めるのがやっとであった。

 移香斎にしては、珍しいことである。

 それほど、この火毘が優れた武術家であったのである。

 その証拠に、鍔競り合いのその状態から、

火毘は上体をそのままの態勢で、右上段廻し蹴りで

移香斎の左後ろ頭を蹴りに行ったのであった。

 完全に死角であり、飛燕の如く、翻った。

 並みの剣術家なら、もう一人敵が後ろにいたのかと

勘違いし、あっけなく昏倒していたであろう。

 ヤシの実を粉砕する勢いであるから、下手をすれば

脳挫傷で、重い後遺症が残るであろう。

バシッツ

 移香斎は、刀から左手を離し、左肘をたたんで

火毘の右足首に肘打ちを決めた。

 移香斎は、火毘の攻撃を天空の眼、観の眼で

観ていたのである。

 しかも、攻防一体、高度な交差法であった。

ぐえっ

 火毘は、悲鳴を飲み込んだ。

 己の攻撃が凄まじい分、衝撃が己に跳ね返って来た。

 足首がパキッときれいに骨折したのがわかったが、

武人としての誇りにかけて、表情を変えない。


『 潔し 。』

 移香斎も、また、その火毘の態度に好感を持った。

「 移香斎殿、拙者の最後の攻撃、如何でござる。」

 火毘は、カビ―を手放した。

ゴオオ~

 精神を集中し、気を高めているのがわかる。

 肉を斬らせて、骨を斬ろうとする気迫が、ビンビン感じる。

 致命傷を与えることが出来ず、拳の間合いに入られては

攻防が追いつかぬと、移香斎も、刀を外して、横に置いた。

 そして、両手をダラリと下げて、自然に構えた。


 火毘は、突然、ユラリと動いたかと思うと、

神速で間合いを詰め、左手で移香斎の頭を抱え、

右手で移香斎の左のコメカミを攻撃してきた。

 移香斎が、一寸、後ろに体を移動してかわすと、

左の手のひらと右肘が激しく打ち鳴らされた。

パ~ン

 ちょうど、猫だましのようになった。

 そうしておいて、ふっと体を下に沈み込ませる。

 実に、その間合いの取り方、拍子が上手い。

 左足で踏切り、下から移香斎の顎を目掛けて、

カエルのように飛び上がり、右拳を飛ばしてきた。

 それは、虚であった。

 もっとも、並みの剣術家ならかわせないであろう。

 移香斎は、難なくかわした。

 その後である。

 太く光る白い光の線が来るのがわかった。

 首筋が、ゾクゾクした。

 斜め上空に、移香斎の頭にぶつけるように右膝で

蹴り込んで来た。

 猛虎の顎をも、蹴り砕く勢いであった。

 後の世のキックボクサーの沢村忠の有名な

真空飛び膝蹴りを超えるものである事は、

誰も知る由はなかった。


 移香斎は、後ろ向きに背中を大きく曲げてかわした。

 そうしないと、今度は、上空から、強烈な肘が

 脳天に二つも打ち込まれるのが、わかったからである。

 移香斎の動きは、止まらなかった。

 そのまま、空中後ろ周り、後宙しながら、

両足で、下から火毘の顎を蹴り上げた。

バゴッ

 馬が後ろの両足で蹴り上げるより強烈な蹴りが

見事に決まった。

 当たる瞬間、衝撃を逃がし、気絶することは免れた

火毘は流石であったが、地面に大きく横倒しになった。


 暫し、むち打ちのような状態で、体が動かなかったのである。

 それでも、鍛え上げた体、凄まじいまでの武人の誇り、

よろよろと立ち上がろうとする。

「大丈夫か。」

 移香斎は、思わず右手を差し伸べた。

「かたじけない。」

 火毘も、素直に右手を差し出し、引っ張り上げてもらった。

「良き闘いであった。」

「今度は、負けませぬ。」

 移香斎と火毘は、固い握手を輝く笑顔でかわした。

 死力を尽くして闘った者同士、熱い友情が生まれたのであった。


 これで、六芒星、全部倒すことができたと思ったが、

人生はそんなに甘くはなかった。


「 まだ、終わっちゃいないよ。 」

 あの月影が現れて、大きく叫んだのである。

 しかも、残りの連中も引き連れている。

『 やはり、女難の相が出ているのか。』

 大きく、ため息をついた移香斎であった。


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