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六芒星の襲撃  作者: 真言☆☆☆
2/7

モグラの罠

「 これは、困ったことじゃ。」

 移香斎が、いつもの修行場に続く道を歩いていると、

大きな岩が道を塞いでいるのであった。

 人がやっと一人通れるくらいの道幅で、下はすぐ崖。

落ちたら、移香斎とて只では済まない高さである。

 迂回しようか、岩を落とそうか、思案していた。

 その時である。鋭い殺気を感じた。

 山から大きな岩が、ゴロゴロとたくさん転げ落ちてきた。

 かわしようがない。

 並みの剣術家なら大岩に押しつぶされるか、

崖下に落ちるかのどちらかであろう。


「何て奴だ!」

 襲撃者は、眼を見張った。

 移香斎は、転げ落ちる大岩から逃げるどころか、

その上をピヨンピヨンとカモシカの如く、

大岩から大岩へと飛びかえて、襲撃者の前まで

跳んで来たのであった。

「その方、名を何と申す。」

 忍び刀を抜く間もなく、首に移香斎の真剣が押し当てられた。

土竜もぐらと書いて、どりゅうと、申しやす。」

「 さぞかし、これだけの大岩を用意するのに、

 大変であっただろう。」

 心からねぎらうように、移香斎は、尋ねた。

「そおりゃあ、もう大変でした・・・・」

 ついひきこまれ、馬鹿正直に答えてしまった土竜は、慌てる。

「そんなことは、関係ねえ。さっさと、やりやがれ。」と、

潔く覚悟を決めた。

「そうか。」

 移香斎はにべもなく、真剣を一振りした。

バシッ

「うっ!」

 土竜は、気を失った。

「安心せい、峰打ちじゃ。」

 この男は気がよさそうなので何故か斬る気が失せたのである。

 移香斎は、我ながら甘いかなって思いながら、納刀した。

 あくまで華麗に、いささかの呼吸の乱れもない。


「 転がり来る岩の下こそ 地獄なれ

  飛び越えて見れば あとは 極楽」

 そして、納刀の後、一首、詠んだのであった。


  この歌が、後の世の有名な秘伝道歌

「 切り結ぶ太刀の下こそ 地獄なれ

  踏みこみ見れば あとは 極楽 」に、

繋がったかどうかは、定かではない。


「 さて、あと四人。楽しみじゃのう。」

 移香斎は、ワクワクしながら道を急ぐ。


 青い空には、ぽっかりと、本物の土竜みたいな

雲が浮かんでいた。






 











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